農業の現場では、女性が生産から経営、加工・販売まで幅広く活躍しています。基幹的農業従事者の38.7%は女性で、女性が経営に参画する農家は販売額の伸びも大きいことがわかっています。一方で、労働環境や経営への参画、地域での地位といった課題も残ります。この記事では、農業における女性の現状を数値で押さえ、どんな課題があり、農業女子プロジェクトをはじめとするどんな支援や取り組みがあるのか、そして就農や経営参画を考える女性は何から始めればよいのかまでをわかりやすく整理します。

農業で女性が活躍する現状と支援の全体像

項目 内容
農業で女性はどのくらい活躍していますか 令和6(2024)年の基幹的農業従事者に占める女性の割合は38.7%(43万1千人)で、重要な担い手です。農業経営体の常雇いでも女性は46.1%を占めます。150日以上従事する若い世代の女性は増加しており、明るい兆しもあります。
女性の経営参画にはどんな効果がありますか 女性が経営に参画している個人経営体は、参画していない経営体より農産物販売額が高く(令和2年で平均1,698.5万円対1,201.4万円)、2015〜2020年の伸び率も18.3%対2.0%と大きく上回ります。
どんな支援や取り組みがありますか 農業女子プロジェクト(1,000人超の全国ネットワーク)、働きやすい環境整備、女性が使いやすい農業機械の開発、就農前の女性が参加できるプレメンバー制度、若い世代向けのみどり戦略学生チャレンジなどがあります。
就農・経営参画を考える女性はどうすればよいですか 農業女子プロジェクトの公式サイトやプレメンバー制度から第一歩を踏み出せます。就農の資金や経営の進め方は、新規就農の支援制度や雇用就農の支援とあわせて検討すると進めやすくなります。

農業における女性の現状

女性は農業と地域の活性化において重要な役割を担っています。令和元(2019)年度の食料・農業・農村白書では、自ら経営に参画し、ビジネスチャンスを見出しながら活躍する女性農業者の姿を初めて特集として取り上げました。令和2(2020)年度には「女性の農業における活躍推進に向けた検討会」を開き、さらなる活躍に向けた具体的な方策を議論しています。ここではまず、女性がどのくらい農業を支えているのかを数値で押さえます。

女性の基幹的農業従事者数の推移(1990〜2024年)を示す折れ線グラフ。令和6年は43万1千人で前年比4.5%減、全体の38.7%を占める。
令和6年度 食料・農業・農村白書「女性活躍の推進」

基幹的農業従事者に占める女性の割合

令和6(2024)年における女性の基幹的農業従事者数は、前年に比べ4.5%減少し43万1千人となりました。女性の基幹的農業従事者は全体の38.7%を占め、引き続き重要な担い手です。ただし、女性の占める割合は減少傾向にあります。

平成12(2000)年からの20年間では、女性の割合は年平均で0.39ポイント低下していました。令和2(2020)年以降は年平均0.24ポイントの低下にとどまり、減り方はゆるやかになっています。

農林業センサスを活かした分析からは、明るい兆しも見えます。農業に年間150日以上従事している女性農業者数を年代をそろえて比べると、平成27(2015)年に15〜59歳だった層に対し、5歳加えた令和2(2020)年の20〜64歳の従事者数は約1万人増加しました。全体の増減に占める割合は小さいものの、比較的若い世代の女性の活躍が広がりつつあります。

常雇い労働者としての女性

雇われて働く現場でも、女性は大きな存在です。令和6(2024)年の農業経営体における女性の常雇い数は7万3千人で、全体の46.1%を占めています。生産から加工・販売まで、女性が農業の現場を幅広く支えています。

女性農業者が直面する課題

活躍が広がる一方で、女性が力を発揮するうえでの課題も残っています。女性の基幹的農業従事者の割合が長く減少してきた背景には、労働環境や経営への参画のしにくさ、地域での意思決定の場に女性が加わりにくいといった事情があります。

女性が活躍できる農業や暮らしやすい農村を実現することは、女性農業者のためだけではありません。農業・農村に新たな視点や活力をもたらし、産業としての持続的な発展につながります。だからこそ、女性が働きやすく、農業経営などに参画しやすい環境を整えることが求められています。次の章では、こうした課題に対してどんな支援や取り組みが進んでいるのかを見ていきます。

女性の活躍を後押しする支援と取り組み

国は農林水産省を中心に、都道府県・JA・関係団体と連携して女性の活躍を後押ししています。ここでは、ネットワークづくり、経営参画の効果、働きやすい環境整備、若い世代への広がりという観点から、主な支援と取り組みを整理します。

農業女子プロジェクト

農業女子プロジェクトは、社会全体で女性農業者の存在感を高め、女性農業者自身の意識改革や経営力の向上を促すとともに、職業としての農業を選ぶ若手女性を増やすことを目指して、多様な活動を展開しています。

平成25(2013)年に設立された同プロジェクトは、令和6(2024)年には1,000人を超えるメンバーによる地域・世代を超えた全国ネットワークに成長しました。企業との協同による商品・サービスの開発や、未来の農業女子を育む活動など、多彩な取り組みを進めています。

事例:株式会社農プロデュース リッツ(新潟県小千谷市)

新潟県小千谷市の株式会社農プロデュース リッツでは、農産物の生産・加工・販売までをプロデュースする事業を展開しています。代表取締役の新谷梨恵子氏は、さつまいもを通じて農業界全体を発展させたいと考え、農家レストランの経営や6次産業化プランナーとして農業者への助言などを行っています。

農家レストラン「さつまいも農カフェきらら」では、さつまいもを活かした料理などを提供しています。さつまいもの上にソフトクリームを乗せた代表商品は各種メディアに取り上げられ、累計3万個以上を販売しました。店内のイベントスペースを貸し出し、主な利用客である子育て中の女性向けイベントの開催にも協力しています。

6次産業化プランナーとしては、農業者からの相談を受け、商品開発や販路拡大について実践できる内容になるよう配慮しながら助言しています。規格外野菜の受託加工や農家への研修生の派遣など、地域の活性化にも取り組んでいます。「次世代の子供の夢が未来の現実になる」という考えから、学生をはじめとした研修生を積極的に受け入れ、女性が働きやすい職場環境の整備も進めています。

株式会社農プロデュース リッツの事例写真。会社ロゴ、代表取締役の新谷梨恵子氏、農家レストランで開かれたベビーマッサージの会の様子。
令和6年度 食料・農業・農村白書「女性活躍の推進」

女性の経営参画と販売額への効果

女性が経営に加わることは、農業経営の成果にもはっきりと表れています。農林業センサスを活かした分析によると、女性が農業経営に参画している個人経営体は、参画していない個人経営体に比べて農産物販売金額が高く、平成27(2015)年から令和2(2020)年にかけての伸び率も上回っています。

指標 女性が経営参画していない個人経営体 女性が経営参画している個人経営体
農産物販売金額(令和2年・1経営体平均) 1,201.4万円 1,698.5万円
販売金額の伸び率(2015〜2020年・1経営体平均) 2.0% 18.3%

女性の経営参画は、経営に新たな視点を取り込むことにつながります。消費に関する意思決定の中心を担う女性のニーズを的確にとらえ、より効果的に対応できる効果があります。今後の農業の発展と地域経済の活性化のためには、多彩な能力を持つ女性農業者が力を発揮できる環境を整えることが欠かせません。

なお、ここでいう「女性が農業経営に参画している個人経営体」とは、65歳未満で150日以上農業に従事し、経営主が女性であるか、経営方針の決定に参画する女性がいる個人経営体を指します。

女性が経営参画している個人経営体の有無別に見た農産物販売金額の平均と伸び率の棒グラフ。参画ありは平均1,698.5万円・伸び率18.3%で、参画なし(1,201.4万円・2.0%)を上回る。あわせて従事日数と年齢階層別の女性農業従事者の増減数の表を掲載。
令和6年度 食料・農業・農村白書「女性活躍の推進」

働きやすい環境整備と機械の開発

女性が働き続けやすい環境づくりも進んでいます。企業との協同により開発された、女性が使いやすい農業機械などは、ジェンダード・イノベーションの観点からも注目されています。こうした機械は女性に限らず、新規就農者や高齢の農業者など多くの方にとっても使いやすいものになっています。

農林水産省では、農村地域における意識改革、女性が働きやすい環境整備、女性グループ活動の活性化、地域をリードする女性農業経営者の育成などを進めています。引き続き地方公共団体や関係団体と連携し、女性の活躍推進に取り組む方針です。

学びと挑戦の機会

女性農業者が学び、新しい分野に挑戦する機会も広がっています。令和6(2024)年度には、農業に関する実践的な知識や技術などを学べるオンラインセミナーNEXTラボ2024を、農業女子メンバーと協同して企画・運営しました。輸出セミナーをきっかけに「GFP×農業女子PJ輸出伴走支援プログラム」が始まり、輸出実績のある農業女子メンバーがメンターとなって、チームで輸出の実践に取り組みました。

さらに、就農に向けて教育機関などに在学中、または研修中の女性もプレメンバーとして一緒に活動できるようにし、プロジェクト活動の活性化を図っています。知見や経験を持つメンバーが後輩に伝える場を積極的に設け、成長と新たな取り組みの実践につなげていく方針です。

GFP×農業女子PJ輸出伴走支援プログラムのキックオフ、NEXTラボ2024参加メンバー、農業女子プロジェクトの更なる活性化に関する取組。
令和6年度 食料・農業・農村白書「女性活躍の推進」

若い世代への広がり:みどり戦略学生チャレンジ

これからの農業を担う若い世代への働きかけも進んでいます。環境と調和のとれた食料システムへの理解と関心を深めるため、農林水産省は令和6(2024)年度から、大学生や高校生などによるみどり戦略学生チャレンジ(全国版)を実施しています。環境に配慮した取り組みを若い世代に促す取り組みです。

第1回大会には、高校の部で221件、大学・専門学校の部で181件の参加登録がありました。各部門の最も優れた取り組みとして、高校の部では宮城県農業高等学校(取組名「Re:温故知新」)が、大学・専門学校の部では独立行政法人国立高等専門学校機構沖縄工業高等専門学校(取組名「データと発酵をフル活用する循環型農業の実践」)が農林水産大臣賞を受賞しました。

女性が就農・経営参画するには

農業を始めたい、家業の農業経営に本格的に加わりたいと考える女性が、一歩を踏み出すための道筋を整理します。

まず、同じ立場の女性農業者とつながりたいなら、農業女子プロジェクトが入口になります。就農前で教育機関に在学中・研修中の女性はプレメンバーとして活動に参加でき、先輩農業者の知見に触れたり、企業との協同による取り組みを経験したりできます。

新たに農業を始める場合は、就農の準備や経営の立ち上げに使える支援制度を早めに調べておくと安心です。就農前後の生活や経営開始を支える資金は新規就農者向けの資金支援に、農業法人などに雇われて経験を積みながら独立を目指す道は雇用就農資金にまとめています。福祉と連携した働き方に関心があれば農福連携の取り組みも参考になります。

家業の経営に参画する場合は、経営方針の決定にしっかり関わることが、販売額の伸びにもつながります。前章の数値が示すとおり、女性の視点を経営に取り込むことは経営の強みになります。地域での就農や農地の確保については、市町村やJA、都道府県の相談窓口が力になります。

よくある質問

農業で女性はどのくらい活躍していますか

令和6(2024)年の基幹的農業従事者に占める女性の割合は38.7%(43万1千人)で、農業を支える重要な担い手です。農業経営体の常雇いでも女性は46.1%(7万3千人)を占めます。割合は長く減少傾向でしたが、近年は減り方がゆるやかになり、150日以上従事する若い世代の女性は増加しています。

女性向けの就農支援はありますか

農業女子プロジェクトでは、就農前の女性が参加できるプレメンバー制度を設けており、先輩農業者とつながりながら学べます。新たに農業を始める場合は、新規就農者向けの資金支援や、雇われて経験を積む雇用就農資金もあわせて検討できます。

農業女子プロジェクトとは何ですか

農林水産省が推進する、女性農業者のネットワークづくりと意識改革・経営力向上、若手女性の就農促進を目的としたプロジェクトです。平成25(2013)年に設立され、令和6(2024)年には1,000人を超える全国ネットワークに成長しました。企業と協同した商品開発や、女性が使いやすい農業機械の開発などに取り組んでいます。

女性が農業経営に参画するメリットは何ですか

女性が経営に参画している個人経営体は、参画していない経営体より農産物販売額が高く、令和2(2020)年で平均1,698.5万円(参画なしは1,201.4万円)でした。2015〜2020年の販売額の伸び率も18.3%(参画なしは2.0%)と大きく上回ります。消費者に近い女性の視点を経営に取り込めることが、強みにつながります。

若い世代が農業に関わる取り組みはありますか

大学生や高校生などを対象に、みどり戦略学生チャレンジ(全国版)が令和6(2024)年度から実施されています。環境に配慮した取り組みを表彰するもので、第1回大会には高校の部221件、大学・専門学校の部181件の参加登録がありました。農業女子プロジェクトでも、就農を目指す在学中・研修中の女性がプレメンバーとして活動できます。

次の一歩

農業で活躍したい、家業の経営に本格的に参画したいと考えたら、まずは農業女子プロジェクトの公式サイトをのぞいて、同じ立場の女性農業者の活動に触れてみましょう。就農前なら、プレメンバーとして参加する道があります。新たに就農する準備を進めるなら新規就農者向けの資金支援を、雇われて経験を積みたいなら雇用就農資金をあわせて確認し、地域での就農や農地のことは市町村・JA・都道府県の窓口に相談してみてください。

キーワード解説

基幹的農業従事者

15歳以上の世帯員のうち、ふだん仕事として主に自営農業に従事している方を指します。農業の担い手の規模を測る基本的な指標の一つです。

農業女子プロジェクト

農林水産省が推進する、女性農業者のネットワークづくりと意識改革・経営力向上、若手女性の就農促進を目的としたプロジェクトです。推進会議の資料や専用サイトで活動内容が公開されています。

女性の経営参画

この白書の分析では、65歳未満で150日以上農業に従事し、経営主が女性であるか、経営方針の決定に参画する女性がいる個人経営体を指します。参画がある経営体は、販売額・伸び率ともに高い傾向があります。

みどり戦略学生チャレンジ

みどりの食料システム戦略に基づいた活動を大学生・高校生などが行い、優れた取り組みを表彰する全国版の取り組みです。令和6(2024)年度から実施されています。

6次産業化

農産物の生産に加え、加工・販売・体験提供などを一体化し、付加価値を高める取り組みです。6次産業化プランナーは、その計画づくりや実践を支援する専門家です。

ジェンダード・イノベーション

科学や技術に性差の視点を取り込むことによって生まれるイノベーションを指します。女性が使いやすい農業機械の開発などに関連する考え方です。