青年等就農資金とは、新たに農業経営を始める認定新規就農者が、日本政策金融公庫(沖縄県は沖縄振興開発金融公庫)から無利子で借りられる融資です。借入の全期間にわたって金利がゼロで、融資限度額は3,700万円(特認1億円)、償還期限は17年以内・うち据置期間5年以内と、就農初期の重い投資を長期でじっくり返せる設計になっています。担保は原則として融資対象物件のみ、個人の場合は保証人も原則不要で、資産の少ない新規参入者でも使いやすいのが特長です。この記事では、誰が借りられるのか(対象者の要件)、いくらまで無利子で借りられるのか(限度額・金利)、返済はいつから始まるのか(償還期限・据置)、何に使えて何に使えないのか、認定農業者向けのスーパーL資金とのどちらを使うべきか、そして申込みの流れまでを、日本政策金融公庫・農林水産省の公式情報に基づいて整理します。

概要

項目内容
誰が認定新規就農者(市町村から青年等就農計画の認定を受けた個人・法人)
何を農業経営の開始に必要な施設・機械、果樹・家畜、借地料の一括払い、その他経営費の資金を借りられる
限度額と金利融資限度額3,700万円(特認1億円)、借入全期間にわたり無利子、償還期限17年以内(うち据置期間5年以内)
窓口日本政策金融公庫の支店(農林水産事業)。沖縄県は沖縄振興開発金融公庫。市町村や都道府県の普及指導センターでも相談できる
次の一歩青年等就農計画を作成して市町村の認定を受け、公庫支店に相談する

青年等就農資金とは

青年等就農資金の貸付手続きの流れ。認定新規就農者から窓口機関・特別融資制度推進会議までの申請フローを図解した農林水産省資料。
農林水産省「青年等就農資金の貸付手続きの流れ」:原文PDF

青年等就農資金は、新たに農業経営を営もうとする青年等を支援するため、農業経営の開始に必要な資金を長期・無利子で貸し付ける制度です。貸付を行うのは株式会社日本政策金融公庫で、沖縄県では沖縄振興開発金融公庫が同じ役割を担います。

農業を始めるときは、ハウスや畜舎の建設、トラクターなどの機械の購入、果樹の植栽や家畜の導入と、収入が立ち上がる前に大きな支出が集中します。一般の融資では金利負担と早期の返済開始が経営を圧迫しがちですが、青年等就農資金は無利子であることに加え、元金の返済を最長5年待ってもらえる据置期間が設けられており、経営が軌道に乗るまでの時間を確保できます。さらに、担保は原則として融資対象物件のみ、個人の場合は保証人も原則不要という、新規参入者でも使いやすい条件になっています。

対象者は認定新規就農者

青年等就農資金を借りられるのは、認定新規就農者に限られます。認定新規就農者とは、これから取り組む農業経営の構想をまとめた青年等就農計画を作成し、就農する市町村から認定を受けた個人・法人のことです。

つまり、この資金を使うには「先に市町村の計画認定を受ける」ことが必須の入口になります。認定の要件や申請手順は、解説記事「認定新規就農者制度の仕組み」で詳しく説明していますので、あわせてご覧ください。年齢については、原則として18歳以上45歳未満の方が対象で、特例として効率的・安定的な農業経営に必要な知識・技能を有する45歳以上65歳未満の方も対象になり得ます。法人の場合は、これらの要件を満たす役員が役員の過半を占めることが目安になります。

見落とされがちですが、対象は「これから就農する人」だけではありません。すでに農業を始めている個人・法人でも、青年等就農計画の認定を受けていれば、農業経営を開始してからおおむね5年以内であれば青年等就農資金を利用できます。「就農したばかりで設備投資の資金が足りない」という段階でも間に合うことがあるため、すでに数年営農している方もあきらめずに市町村へ相談してみてください。

なお、すでに農業経営改善計画の認定を受けた認定農業者は、この資金ではなく後述のスーパーL資金が受け皿になります。

融資限度額・金利・償還期間

日本政策金融公庫の公表する貸付条件は次のとおりです。

  • 融資限度額:3,700万円(特認1億円)
  • 金利:無利子。借入の全期間にわたって利息がかかりません
  • 償還期限:17年以内
  • 据置期間:5年以内(償還期限17年の内数)
  • 担保:原則として融資対象物件のみ
  • 保証人:個人の場合は原則不要。法人の場合も、必要なときは代表者のみ

農林水産省はこの担保・保証人の扱いを「実質無担保・無保証人」と表現しています。自宅や農地を担保に差し入れたり、親族に保証人を頼んだりせずに借りられる点は、資産の少ない新規就農者にとって大きな利点です。特認限度額1億円の適用には所定の手続きが必要になるため、大規模な計画を立てる場合は早めに公庫支店へご相談ください。

資金の使いみち

対象となる使いみち

青年等就農資金は、農業経営を開始するために必要となる幅広い投資・経費に使えます。公庫が示す使途は次のとおりです。

  • 施設・機械:農業生産用の施設・機械のほか、処理加工施設や販売施設も対象
  • 果樹・家畜等:果樹の新植・改植や育成費、乳牛・繁殖牛などの家畜の購入・育成費
  • 借地料などの一括支払い:農地を借りる際の借地料やリース料をまとめて支払う資金
  • その他の経営費:種苗・肥料・燃料の購入など、経営開始に伴う経営費(運転資金)

初期投資だけでなく経営費まで対象に含まれるため、就農直後の資金繰り全体を支えられるのが特長です。

農地の取得には使えない

注意したいのは、農地そのものの取得費用は対象外であることです。農地を買って規模を広げたい場合は、この資金では対応できません。公庫は農地取得に対応する資金として経営体育成強化資金などを案内しているほか、認定農業者になればスーパーL資金で農地取得の資金を借りられます。新規就農の段階では「農地は借りて、施設・機械に資金を集中する」設計が制度の前提になっていると考えるとわかりやすいでしょう。

スーパーL資金など他の制度資金との違い・使い分け

農業向けの公的融資には複数の制度があり、対象者と使途で使い分けます。代表的な比較相手が、認定農業者向けのスーパーL資金(農業経営基盤強化資金)と、JAなどを通じて借りる農業近代化資金です。新技術の導入など経営改善に取り組む農業者向けには、同じく無利子で借りられる農業改良資金(無利子)もあります。主な違いを並べると次のとおりです。

項目青年等就農資金スーパーL資金農業近代化資金
主な対象者認定新規就農者認定農業者認定農業者・認定新規就農者・農業者一般など
融資限度額3,700万円(特認1億円)個人3億円(特認6億円)、法人10億円(特認20億円、一定の場合30億円)個人1,800万円、法人・団体2億円など(事業により異なる)
金利無利子(全期間)公庫所定の利率(無利子ではない)JA等所定の利率(利子助成で実質低利になる場合あり)
償還期限17年以内25年以内原則15年以内(一部17年以内)
据置期間5年以内10年以内原則3〜7年以内
農地の取得対象外対象(取得のほか改良・造成も対象)対象外(施設・機械等が中心)
主な窓口日本政策金融公庫(沖縄県は沖縄振興開発金融公庫)日本政策金融公庫JA・銀行など民間金融機関

使い分けの考え方はシンプルです。就農から間もない時期は、無利子で長期に借りられる青年等就農資金が第一候補。経営が確立して認定農業者になり、限度額や農地取得が必要になったらスーパーL資金。設備投資が中心で身近なJAで相談したいなら農業近代化資金、という関係です。新規就農の段階では、無利子の青年等就農資金を軸に据えるのが基本になります。

また、融資ではなく返済不要の給付金として就農準備資金・経営開始資金があり、研修期間や経営開始直後の生活・経営を支えます。給付金で当面の生活資金を確保しつつ、設備投資は無利子の青年等就農資金で賄う組み合わせが、新規就農の資金計画の基本形です。

申込みの流れ

申込みは、おおむね次の順序で進みます。

  1. 就農計画の作成と相談:就農予定地の市町村、都道府県の普及指導センター、公庫支店などに相談しながら、青年等就農計画を作成します。
  2. 市町村の認定:青年等就農計画を市町村に提出し、認定新規就農者の認定を受けます。
  3. 公庫支店への申込み:最寄りの日本政策金融公庫支店(農林水産事業)に融資を申し込みます。沖縄県の方は沖縄振興開発金融公庫の支店が窓口です。JAや金融機関でも相談できます。
  4. 審査・融資実行:計画の実現性などの審査を経て、融資が実行されます。

計画の認定から融資実行までは一定の期間がかかります。公庫への申込み後、審査から借入までにはおおむね1か月半から2か月程度を見込むのが現実的です。これに先立つ青年等就農計画の作成・認定にも時間が必要なため、ハウスの建設時期や家畜の導入時期から逆算し、半年から1年前には動き始めておくと安心です。

あわせて押さえておきたい注意点が二つあります。一つは、無利子であるぶん予算の枠があり、申込みの状況によっては希望どおりに借りられない場合があること。もう一つは、施設・機械や経営費は対象でも、農地の取得費そのものは対象外であることです。資金計画を立てる段階で、対象外の支出は別の制度や自己資金で手当てする前提にしておくと、後で慌てずに済みます。

よくある質問

誰が借りられますか

市町村から青年等就農計画の認定を受けた認定新規就農者(個人・法人)です。原則18歳以上45歳未満が対象ですが、知識・技能を有する45歳以上65歳未満の方も特例で対象になり得ます。これから就農する人だけでなく、すでに農業を始めていても経営開始からおおむね5年以内であれば対象になります。

いくらまで無利子で借りられますか

融資限度額は3,700万円で、所定の手続きを経た特認の場合は1億円までです。この借入額の全期間にわたって無利子で、限度額の範囲内であれば利息はかかりません。

本当に全期間無利子なのですか

はい。日本政策金融公庫は、青年等就農資金の利率について「お借入の全期間にわたり無利子」と明示しています。当初数年だけ無利子になる利子助成型の仕組みとは異なり、完済まで利息は発生しません。

返済はいつから始まりますか

償還期限17年以内のうち5年以内の据置期間を設けられます。据置期間中は元金の返済を待ってもらえるため、収入が安定し始めてから返済を開始できます。据置をどう設定するかは計画に応じて公庫と相談します。

何に使えますか

農業生産用の施設・機械(処理加工施設・販売施設を含む)、果樹の新植・改植や家畜の購入・育成、借地料やリース料の一括払い、種苗・肥料・燃料などの経営費に使えます。一方、農地そのものの取得費用は対象外です。

スーパーL資金とどちらを使えばよいですか

新規就農の段階なら、無利子で借りられる青年等就農資金が基本です。経営が確立して認定農業者になり、限度額の大きさや農地取得が必要になったらスーパーL資金へステップアップする、という使い分けになります。両方を同時に検討する場合は公庫支店に相談してください。

農地の購入に使えますか

使えません。農地の取得費用は青年等就農資金の対象外です。農地取得には経営体育成強化資金などの別の資金が用意されているほか、認定農業者であればスーパーL資金が農地の取得・改良・造成に対応します。

担保や保証人は必要ですか

担保は原則として融資対象物件のみで、保証人は個人の場合原則不要です。法人の場合も、必要なときは代表者のみとなります。農林水産省はこの扱いを実質無担保・無保証人と説明しています。

45歳以上でも借りられますか

可能性はあります。前提となる認定新規就農者は原則として18歳以上45歳未満の方が対象ですが、特例として45歳以上65歳未満の方も対象になり得ます。就農予定地の市町村に相談してみてください。

次の一歩

青年等就農資金の活用を考えるなら、まず取り組むべきは青年等就農計画の作成です。営農類型・販売目標・必要な投資を整理し、就農予定地の市町村か都道府県の普及指導センターに相談して、認定新規就農者の認定を目指してください。認定の見通しが立ったら、最寄りの日本政策金融公庫支店(沖縄県は沖縄振興開発金融公庫)で融資の事前相談を行い、見積書など必要書類の準備を進めます。あわせて、返済不要の就農準備資金・経営開始資金を併せた資金計画を組み立てると、就農初期の資金繰りに余裕が生まれます。最新の貸付条件は、記事末尾の出典に挙げた公庫・農林水産省の公式ページをご覧ください。

キーワード解説

認定新規就農者

青年等就農計画を作成し、就農する市町村から計画の認定を受けた個人・法人のことです。青年等就農資金の融資対象となるほか、各種の就農支援策を受けるための入口になる資格です。

青年等就農計画

新たに農業経営を始める青年等が、営農の構想や経営の目標、必要な機械・施設などをまとめて市町村に提出する計画です。認定されると認定新規就農者となり、青年等就農資金を利用できるようになります。

据置期間

借入後、元金の返済を始めなくてよい期間のことです。青年等就農資金では償還期限17年以内のうち5年以内が据置期間として認められており、収入が安定するまで返済開始を遅らせられます。

認定農業者

農業経営改善計画を作成し、その認定を受けた個人・法人のことです。新規就農段階の認定新規就農者と区別され、スーパーL資金など経営発展向けの融資制度の対象になります。