青果物のパレット化とは、野菜や果物を段ボールごとパレットに積み、フォークリフトでまとめて積み降ろしできるようにすることです。農林水産省は青果物流通標準化ガイドラインで、輸送パレットを11型(1100mm×1100mm)に統一し、段ボールの外装サイズをそれに合わせ、産地から納品先まで積み替えずに運ぶ一貫パレット輸送を広げる方針を示しています。目標は、青果物輸送のパレット化率を2030年度までに80%以上にすることです。背景には、トラックドライバーの時間外労働規制で輸送力が足りなくなる物流2024年問題があります。重量があり輸送距離も長い野菜は運んでもらいにくくなりやすく、産地・JA・卸・小売が同じ規格で動く標準化が、輸送力を確保する手立てになります。物流2024年問題と物流革新の全体像は物流2024年問題と物流革新の解説記事で扱うため、この記事は青果物のパレット化・標準化の実務にしぼって整理します。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる方 | 出荷量の多い野菜産地・JA・出荷団体、卸売業者・仲卸業者、スーパー・外食・給食の物流担当 |
| 何を | 輸送パレットを11型にそろえ、段ボール外装をそれに合わせ、手荷役を減らす一貫パレット輸送に移れます |
| めざす姿 | 2030年度までに青果物輸送のパレット化率を80%以上にする(令和4年度は6〜7割) |
| なぜ今 | 2024年4月のトラックドライバーの時間外労働規制で輸送力が不足し、荷役・荷待ち時間の短縮が急務になったため |
| 使える支援 | 強い農業づくり総合支援交付金(食品等物流合理化緊急対策事業)で輸送実証・初年度のレンタルパレット費用などを対象にできます |
| 詳しくは | 全農「段ボール箱標準化ガイドブック」で主力品目の推奨寸法を確認し、レンタルパレットでの輸送実証から始められます |
なぜ今パレット化と標準化が必要か
2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限が適用され、拘束時間の規制も強まりました。対策を取らない場合の輸送力不足は、政府の試算で2024年度に約14%、2030年度に約34%とされています。農産品・水産品にしぼると不足はさらに大きく、約32%と見込まれています。重量があり、量も多く、東京の市場まで平均500kmを超える長距離を運ぶ野菜は、この影響を受けやすい荷物です。
長時間労働を生む大きな原因は、荷待ちと荷役の時間です。産地で段ボールを1箱ずつ手で積み、納品先でまた手で降ろす手荷役は、ドライバーの拘束時間を押し上げます。ここをフォークリフトでパレットごと積み降ろしする方式に変えると、作業は数字で軽くなります。すいかの産地ではトラック1台あたりの積み込みが2.5時間から30〜60分に、こまつなの産地では卸売市場での荷降ろしが3時間から30分に縮みました。空いた時間とトラックを別の輸送に回せます。
ただし、各産地がばらばらの寸法のパレットや段ボールを使っていると、納品先で積み替えが起き、効果が消えます。青果16品目のパレット化率は2022年度で59.4%まで来ていますが、11型などの標準仕様にそろったものはまだ一部にとどまります。サプライチェーン全体で規格をそろえる標準化を、パレット化と同時に進める必要があります。
青果物流通標準化ガイドラインとは
農林水産省は令和5年3月、第4回青果物流通標準化検討会で「青果物流通標準化ガイドライン」を取りまとめました。検討会は令和3年9月に始まり、産地の出荷団体、卸売市場の関係者、小売、物流事業者などが参加して、パレットの循環体制、外装サイズと表示、商品コードや情報、卸売市場内の場内物流をテーマごとに議論してきた場です。
ガイドラインがそろえようとするものは三つあります。輸送パレットを11型パレットに統一すること、各産地・品目で11型に積み付けやすいよう段ボールなどの外装サイズを見直すこと、産地から納品先までできるだけ積み替えずに運ぶ一貫パレット輸送を広げることです。そのうえで、青果物輸送のパレット化率を2030年度までに80%以上に引き上げる目標を掲げています。重量野菜や遠隔産地から優先して進める考え方です。
11型パレットへの統一
標準とされる11型パレットは、縦横1100mm×1100mmの正方形で、業界では「T11」とも呼ばれます。官民物流標準化懇談会のパレット標準化推進分科会は、令和6年6月、業種をまたいだ標準仕様としてこの11型を位置づけました。最大積載は1トン程度で、素材はプラスチック製を軸にしつつ木製も認めています。
運用で効いてくるのが、買い取りではなくレンタル方式での循環利用です。自社で買ったパレットは、納品先に置いてきたまま戻らない片道になりやすく、産地の手元から消えてしまいます。レンタルパレットなら、共同で回収・再利用する仕組みに乗せられるため、産地・卸・小売のあいだで循環させやすくなります。国は2030年度をめどに、共同で回収するプラットフォームの社会実装をめざしています。市場流通の基本的な仕組みは卸売市場法の解説記事で確認できます。
段ボール・外装サイズの標準化
パレットをそろえても、その上に載せる段ボールの寸法がばらばらでは、すき間が空いて積載効率が落ち、荷崩れも起きます。そこで、11型パレットの1100mm四方に効率よく積み付けられるよう、段ボールの外装サイズをそろえます。たとえば550mm×366mmのように、1100mmを割り切れる寸法に近づけると、1段あたりの箱数がそろい、荷台とパレットを無駄なく使えます。
全農は、この検討結果を「段ボール箱標準化ガイドブック」にまとめ、主要野菜14品目を対象に、品目ごとの推奨寸法を示しています。対象にはレタス、たまねぎ、ねぎ、ばれいしょ、にんじん、だいこんなどが入ります。各産地はこのガイドブックを参考に、いま使っている箱の寸法を見直していきます。外装サイズの変更は、印刷の版下や製函機の段取りにも関わるため、産地のなかで早めに合意し、計画的に進めましょう。
一貫パレット輸送と検品の効率化
パレット化の効果が最も大きく出るのは、産地での積み込みから納品先での荷降ろしまでパレットを崩さずに運ぶ一貫パレット輸送です。産地でパレットに積み付けた荷を、フォークリフトでそのままトラックに載せ、卸売市場や物流センターでもパレットごと降ろします。手で1箱ずつ扱う工程が消えるため、ドライバーの荷待ち・荷役の時間が縮みます。
実際の産地で、効果は数字に表れています。すいかの産地では、トラック1台あたりの積み込みが2.5時間から30〜60分に短縮しました。ばれいしょの大規模産地では、レンタルパレット化と折り畳み鉄コンテナの活用などでパレット化率を99%まで高め、物流の効率を5割以上改善しています。こまつなの産地でも、卸売市場での荷降ろしが3時間から30分に縮みました。
あわせて見直したいのが検品です。納品先でケースを開けて1箱ずつ数える検品は時間がかかり、荷降ろしを止めます。外装の表示や商品コードをそろえ、パレット単位・電子データでの照合に近づけると、検品の手間が減り、車両を早く解放できます。場内物流の効率化は、卸売市場の混雑緩和にもつながります。
産地・卸・小売の進め方
標準化は一社では完結しません。荷を出す産地、受ける卸・市場、最終的に売る小売・外食・給食が同じ規格で動いてはじめて、積み替えが消えます。役割ごとに、まず着手しやすいことを整理します。
| 主体 | まず取り組むこと | ねらい |
|---|---|---|
| 産地・JA・出荷団体 | 主力品目の段ボールを11型適合へ見直し、レンタルパレットで輸送実証を行う | 積載効率と荷役時間の改善、運んでもらえる荷づくり |
| 卸売業者・仲卸業者 | 場内でパレットのまま受け入れ・保管できる動線と機材を整える | 荷待ち・場内物流の短縮、車両の早期解放 |
| 小売・外食・給食 | パレット納品を受け入れ、回収したパレットを循環に戻す | 一貫輸送の完成、検品の省力化 |
費用面では、産地の取組を後押しする支援があります。強い農業づくり総合支援交付金の食品等物流合理化緊急対策事業(物流生産性向上推進事業)では、11型適合に必要な輸送実証や、初年度のレンタルパレット費用などを対象にできます。対象経費・補助率・募集の時期は年度ごとに変わるため、活用を考える産地は最新の公募要領と都道府県・地方農政局の案内をご覧ください。市場を通さない販路づくりは飲食店・スーパーとの直接取引の解説記事、食品業界の商慣習の見直しは1/3ルールの解説記事もあわせて参考になります。
よくある質問
11型パレットとはどのパレットですか
縦横1100mm×1100mmの正方形のパレットで、T11とも呼ばれます。令和6年6月に業種横断の標準仕様と位置づけられ、青果物流通標準化ガイドラインでも輸送の標準パレットとされています。最大積載は1トン程度で、レンタルでの循環利用がすすめられています。
パレット化率の目標はどれくらいですか
農林水産省は、青果物輸送のパレット化率を2030年度までに80%以上に引き上げる目標を掲げています。令和4年度の青果物のパレット化率は6〜7割で、11型などの標準仕様にそろったものは1割に満たないと推定されています。重量野菜や遠隔産地から優先して進める考え方です。
段ボールのサイズはどう決めればよいですか
全農の「段ボール箱標準化ガイドブック」が主要野菜14品目の推奨寸法を示しているので、まずは自分の主力品目の寸法を確認しましょう。11型パレットの1100mm四方を割り切れる寸法に近づけると、積載効率が上がり荷崩れも減ります。
パレット化すると本当に時間は減りますか
減ります。手で1箱ずつ扱う手荷役を、フォークリフトでのパレット荷役に変えると、作業の工程そのものがなくなります。すいか産地で積み込みが2.5時間から30〜60分に、こまつな産地で荷降ろしが3時間から30分に縮んだ例があり、産地での実証でも効果が確かめられています。
小規模な産地でも始められますか
始められます。全品目を一度に変える必要はなく、量が多く重い主力品目の段ボール見直しと、レンタルパレットでの輸送実証から段階的に進めるのが現実的です。共同回収の仕組みやレンタルを使えば、自前でパレットを抱え込まずに取り組めます。
物流2024年問題で青果物の出荷は止まりましたか
止まっていません。2024年度上半期の中央卸売市場の統計では、当初の懸念ほど深刻な影響は出ていないとみられています。遠隔産地を中心に荷待ち・荷役時間の短縮やモーダルシフトが進んだためで、対策を続けるほど影響を抑えられます。一方で何も手を打たなければ、2030年度には輸送力の約34%が不足する試算は変わりません。
次の一歩
まず、自分の産地・市場で出荷量と重量が大きい品目を一つ選び、いま使っている段ボールの寸法を全農の「段ボール箱標準化ガイドブック」と照らし合わせましょう。次に、その品目でレンタルパレットを使った一貫パレット輸送の実証を計画し、積み込み時間と荷待ち時間を実証前後で測って効果を確かめます。卸・市場・小売とは、パレットの受け入れと回収・循環の取り決めを早めに話し合いましょう。費用の支援を使いたい産地は、強い農業づくり総合支援交付金の最新の公募要領を確認し、都道府県・地方農政局に相談しましょう。
キーワード解説
11型パレット
縦横1100mm×1100mmの正方形パレットで、T11とも呼ばれます。令和6年6月に官民物流標準化懇談会のパレット標準化推進分科会が業種横断の標準仕様と位置づけ、青果物流通標準化ガイドラインでも輸送の標準パレットとしています。最大積載は1トン程度で、レンタルによる循環利用がすすめられています。
一貫パレット輸送(一貫パレチゼーション)
荷をパレットに積み付け、産地から納品先まで積み替えずにパレットのまま運ぶことです。フォークリフトでまとめて積み降ろしできるため、手で1箱ずつ扱う手荷役がなくなり、荷役・荷待ちの時間を大きく減らせます。途中で人手の積み替えが入ると効果が薄れるため、産地・卸・小売が同じパレット規格でそろうことが前提になります。
物流2024年問題
2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限が適用されたことなどで、輸送力が不足する課題の総称です。対策を取らない場合の不足は2030年度に約34%、農産品・水産品では約32%と試算され、荷待ち・荷役時間の短縮、共同輸配送、モーダルシフト、パレット化などの対策が進められています。