改正物流法(物流効率化法)は、トラックドライバーの時間外労働規制で運べる荷物が足りなくなる「物流2024年問題」に対応するため、荷主と物流事業者に物流効率化の取組を求める法律です。農産物・食品の輸送は9割以上をトラックが担い、手荷役や長距離輸送が多いぶん影響を受けやすいため、産地・JA・卸売業者・仲卸・食品メーカー・食品卸といった荷主にも直接かかわります。2025年4月からは規模を問わずすべての荷主・物流事業者に努力義務が、2026年4月からは一定規模以上の特定事業者に中長期計画の作成・定期報告・物流統括管理者(CLO)の選任という義務が課されます。この記事では、自社が対象かの判定、何を・いつまでに行うのか、標準的運賃や契約ルールの見直しまでを、流通・物流の実務目線で整理します。制度の詳細は一次情報でご確認ください。

概要

項目内容
対象となる方農産物・食品の荷主(産地・JA・卸売業者・仲卸・食品メーカー・食品卸)と、トラック・倉庫などの物流事業者
努力義務2025年4月から全事業者。積載効率の向上・荷待ち時間の短縮・荷役等時間の短縮
義務(特定事業者)2026年4月から。取扱貨物9万トン以上の荷主等が対象。中長期計画・定期報告・物流統括管理者(CLO)の選任
自社が対象か前年度の取扱貨物重量(荷主)・保有車両台数(運送)・保管量(倉庫)で判定
取引ルール標準的運賃の活用、運送契約の書面化、多重下請の是正(実運送体制管理簿など)
詳しくは国土交通省「物流効率化法 理解促進ポータルサイト」など一次情報で確認

なぜ物流法が改正されたのか

物流2024年問題の図解。トラックドライバーに年960時間の時間外労働規制が適用され、対策を取らない場合の輸送能力不足は2019年比で最大14.2%(4.0億トン)、発荷主別では農産・水産品出荷団体の不足率が32.5%と最も高いことを示す。
農林水産省「食品分野の物流効率化について」

2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限が適用されました。働き方を改善する一方で、対策を取らなければ運べる荷物が足りなくなります。国土交通省・農林水産省が用いる試算では、何も手を打たない場合の輸送能力の不足は、2019年比で2024年度に最大14.2%(4.0億トン)に達するとされています。

この影響は、農産物・食品でとくに大きく出ます。輸送の97%をトラックが担い、産地が消費地から遠く長距離輸送が多いうえ、手積み・手降ろしの荷役や、出荷量が直前まで決まらないことによる長い荷待ちが重なるためです。発荷主を業種別に見ると、農産・水産品の出荷団体は輸送能力の不足率が32.5%と最も高く見込まれています。運賃の引上げだけでなく、運送そのものを敬遠される事例も出てきました。こうした背景から、荷主と物流事業者が協力して物流を支える枠組みとして、法律が改正されました。

改正物流法とは

正式名称は「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」です。2024年5月15日に公布されました。この一本の改正で、荷主・物流事業者に効率化を求める物流効率化法と、トラック事業者の取引を適正化する貨物自動車運送事業法の2つが同時に変わりました。改正にあわせて、物流効率化法の名称は「物資の流通の効率化に関する法律」に改められています。

施行は2段階です。2025年4月1日には、基本方針、荷主・物流事業者の努力義務、取組の目安となる判断基準が施行されました。2026年4月には、一定規模以上の特定事業者に対する指定・中長期計画・定期報告・物流統括管理者の選任が始まる予定です。まず全事業者が努力義務で足並みをそろえ、次に大手の特定事業者に具体的な計画と報告を求める流れです。

改正物流法の今後のスケジュール図。2024年5月15日に公布、2025年4月1日に施行①として基本方針・努力義務・判断基準が始まり、2026年4月に施行②として特定事業者の指定・中長期計画の提出・定期報告・物流統括管理者(CLO)の選任が始まり、2027年7月末に定期報告の提出となる想定を示す。
国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト

2025年4月からの努力義務

2025年4月から、すべての荷主(発荷主・着荷主)、連鎖化事業者(フランチャイズチェーンの本部)、物流事業者(トラック・鉄道・港湾運送・航空運送・倉庫)に、物流効率化のための取組が努力義務として課されています。規模の大小は問いません。取り組むべき措置は次の3つに整理されています。

取組ねらい取組の例(判断基準)
積載効率の向上1回の運送で運ぶ貨物量を増やす余裕を持ったリードタイムの設定、共同輸配送、納品日の集約、配車計画の最適化
荷待ち時間の短縮到着から荷役開始までの待ち時間を減らすトラック予約受付システムの導入、混雑時間を避けた日時分散
荷役等時間の短縮荷積み・荷卸しの時間を減らすパレット等の活用、標準化、検品の効率化、バース・人員の適正配置

国はこの判断基準に照らして指導・助言を行い、物流事業者へのアンケート調査で荷主などの取組状況を把握し、結果を公表します。取組が進んでいる事業者だけでなく、点数の低い事業者も公表の対象になり得ます。努力義務そのものに罰則はありませんが、取引先や消費者からの評価につながる仕組みとして運用される点に注意が必要です。

2026年4月からの義務(特定事業者)

2026年4月からは、努力義務に加えて、全体への寄与度が高い大手の事業者が特定事業者に指定され、中長期計画の作成や定期報告などが義務づけられる予定です。まず自社が対象になるかを、前年度の取扱貨物重量などから確認しましょう。

特定事業者の指定基準のカラー図解。特定荷主・特定連鎖化事業者は取扱貨物9万トン以上、特定倉庫業者は保管量70万トン以上、特定貨物自動車運送事業者等は保有車両150台以上。あわせて中長期計画・定期報告の記載内容と、物流統括管理者(CLO)の業務内容を示す。
国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト

自社は特定事業者に該当するか

指定の基準値は事業者の種別ごとに決まっています。荷主は取扱貨物の重量、トラック事業者は保有車両台数、倉庫業者は保管量が基準です。

事業者の種別指定基準値判定に使う指標
特定荷主・特定連鎖化事業者取扱貨物 年9万トン以上前年度に自社契約・取引先契約で受取り・引渡しをした貨物重量の合算
特定倉庫業者保管量 年70万トン以上年度の入庫貨物の合計重量
特定貨物自動車運送事業者等保有車両 150台以上年度末の保有事業用自動車の台数

荷主は、運送契約を自社で結ぶ場合は「第一種荷主」、取引先が結んだトラックで貨物を受け取る・引き渡す場合は「第二種荷主」に区分されます。両方に当てはまることもあります。9万トンに達するかは、第一種・第二種それぞれの区分ごとに、受取り分と引渡し分を合算して判断します。基準に届かない荷主は特定事業者にはなりませんが、努力義務は引き続きかかります。

中長期計画と定期報告

特定事業者に指定されると、実施する措置とその具体的内容・目標・実施時期を記した中長期計画を作成・提出します。毎年度の提出が基本ですが、計画に変更がなければ5年に1度の提出でよいとされています。あわせて、判断基準の遵守状況(チェックリスト形式)や荷待ち時間などの状況を定期報告として提出します。国は、努力義務にかかる措置の実施状況が不十分な場合、勧告・命令を行うことができます。

物流統括管理者(CLO)の選任

特定事業者のうち荷主・連鎖化事業者には、物流統括管理者(CLO)の選任が義務づけられます。CLOは、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある役員などの経営幹部から選びます。担当部署の実務責任者ではなく、経営レベルで物流をとりまとめる役割です。CLOは、中長期計画・定期報告の作成、トラックへの過度な集中を是正する事業運営方針の策定、効率化に向けた設備投資・デジタル化・標準化の計画づくり、開発・調達・生産・販売・在庫・物流といった社内部門の連携体制づくりを統括します。

標準的運賃と契約ルールの見直し

同時に改正された貨物自動車運送事業法では、トラック事業者との取引を適正化する措置が2025年4月から始まっています。荷主・元請にも関わる主なポイントは次の3つです。

標準的運賃

標準的運賃は、ドライバーの労働条件を守りながら運送業を持続させるために、国土交通省が示す参考の運賃です。2024年(令和6年)3月に改定して告示され、運賃の水準が引き上げられました。燃料費の算定基準を見直したほか、荷待ちに対する待機時間料に加えて、荷積み・荷卸しごとの積込料・取卸料を加算する考え方が明記されました。標準的運賃はあくまで参考で、これに従うこと自体は義務ではありませんが、荷役や待機に見合う対価を運賃と別に支払う流れを後押しするものです。

運送契約の書面化

運送契約を結ぶ際は、提供する役務の内容と対価を記した書面などの交付が義務づけられました。記載が必要なのは、運送の役務の内容と対価、荷役作業・附帯業務などの内容と対価、有料道路利用料や燃料サーチャージなど特別に生じる費用、当事者の氏名・名称・住所、運賃・料金の支払方法、書面の交付年月日です。メールでこれらの事項を送る方法も認められています。荷役や附帯業務を運賃に紛れ込ませず、対価を分けて明示することで、荷役の負担を運賃で埋め合わせる商慣行を改める狙いです。

多重下請構造の是正

元請事業者には、実際に運送する下請事業者の名称などを記した実運送体制管理簿の作成が義務づけられました。さらに、前年度の利用運送量が100万トン以上の事業者には、下請への発注適正化に関する運送利用管理規程の作成と、役員などからの運送利用管理者の選任、国土交通大臣への届出が義務づけられます。産地や食品事業者が直接この義務を負う場面は限られますが、委託先の運送体制が可視化され、無理な下請けが減ることは、荷主にとっても安定した輸送の確保につながります。

農産物・食品の荷主が今から準備すること

産地・JA・卸売業者・食品事業者が荷主として動くうえで、まず取り組みたいのは次の流れです。

  1. 前年度の取扱貨物重量を把握し、自社が9万トン以上の特定荷主に該当するかを確認します。
  2. 荷待ち時間・荷役時間を計測し、どこに時間がかかっているかを見える化します。
  3. パレット化や予約受付システム、共同輸配送、モーダルシフトなど、効率化の具体策を選びます。
  4. 取引先との運送契約を書面化し、荷役・待機の対価を運賃と分けて明示します。
  5. 該当する場合は、経営幹部から物流統括管理者を選び、中長期計画づくりに着手します。

効率化の具体策のうち、青果物の荷役・積載効率を軽くする方法は、青果物のパレット化・流通標準化の解説記事で実務にしぼって整理しています。手荷役から一貫パレット輸送に変えると、産地での積み込みや卸売市場での荷降ろしにかかる時間を大きく減らせます。市場流通の基本的な仕組みは卸売市場法の解説記事で確認できます。

設備・機器の導入やモーダルシフトには、国の補助金を活用できます。使える支援の全体像は食品物流の補助金・支援事業まとめで、鉄道・船舶へのモーダルシフトや共同輸配送に使える補助は農産物・食品のモーダルシフト・共同輸配送に使える補助金の解説記事で確認できます。改正物流法が求める効率化と、これらの補助金・標準化の取組を組み合わせて進めましょう。

よくある質問

自社は改正物流法の「荷主」に当たりますか

自らの事業に関して、継続してトラック事業者などに貨物の運送を委託する事業者は「第一種荷主」に当たります。取引先が手配したトラックで貨物を受け取る・引き渡す事業者は「第二種荷主」に当たります。産地・JA・卸売業者・食品メーカー・食品卸の多くは、いずれかの荷主に該当します。荷主に当たる場合は、規模にかかわらず2025年4月からの努力義務の対象です。

取扱貨物が9万トンに届かない場合は、何もしなくてよいですか

いいえ。9万トン以上の特定荷主に該当しない場合でも、積載効率の向上・荷待ち時間の短縮・荷役等時間の短縮に取り組む努力義務はかかります。中長期計画の提出や物流統括管理者の選任といった義務が加わるのが、特定事業者に指定された場合です。

物流統括管理者(CLO)は誰を選べばよいですか

事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある役員などの経営幹部から選びます。物流部門の実務責任者ではなく、経営レベルで物流をとりまとめられる立場の人が想定されています。

標準的運賃には必ず従う必要がありますか

標準的運賃は国が示す参考の運賃で、これに従うこと自体は義務ではありません。ただし、運送契約の書面化や、荷役・附帯業務の対価を運賃と分けて明示することは、貨物自動車運送事業法上の義務です。

キーワード解説

物流2024年問題

2024年4月からトラックドライバーに年960時間の時間外労働の上限が適用され、対策を取らないと輸送力が不足する問題です。何も手を打たない場合、輸送能力は2019年比で2024年度に最大14.2%不足すると試算されています。

荷主

自らの事業に関して貨物の運送を委託する第一種荷主と、取引先が手配したトラックで貨物を受け取る・引き渡す第二種荷主に分かれます。産地・卸売業者・食品事業者などが該当します。

特定荷主

前年度の取扱貨物が年9万トン以上となる大手の荷主で、2026年4月から中長期計画の作成・定期報告・物流統括管理者の選任が義務づけられます。倉庫業者は保管量70万トン以上、トラック事業者は保有車両150台以上が指定の基準です。

物流統括管理者(CLO)

特定事業者のうち荷主・連鎖化事業者が選任する、物流を統括する経営幹部です。中長期計画の作成や、社内部門の連携体制づくりなどを統括します。

標準的運賃

ドライバーの労働条件を守り運送業を持続させるために国土交通省が示す参考の運賃です。2024年3月に改定・告示され、荷待ちや荷役の対価を運賃と別に示す考え方が明記されました。