「今年の作況指数はいくつか」という見方は、令和7年産からできなくなりました。農林水産省は水稲収穫量調査の公表内容を入れ替え、作況指数を作況単収指数に移しています。名前が変わっただけではなく、比べる相手が入れ替わり、生産者が実際に使うふるい目幅での収穫量も新たに加わりました。米をつくる農家・農業法人と、産地で作柄を追うJA・自治体に向けて、何がどう変わり、自分の地域の数字がいつ出るのかを整理します。

誰が米をつくる農家・農業法人、産地の作柄を追うJA・自治体・農業共済
何が変わった作況指数が作況単収指数へ移行。生産者ふるい目での主食用収穫量と、白未熟粒等の割合を新たに公表
いつ県別の収量見込みは8月下旬(沖縄県を除く)、作況単収指数は10月中旬から、収穫量は12月上旬
どこで農林水産省の作況調査ページと政府統計の総合窓口
詳しくは下の公表スケジュール表で自分が待つ数字の公表時期を確認

作況指数は作況単収指数に変わりました

変更の理由は、統計値が生産現場の実感とかい離しているという声でした。農林水産省は生産者・生産者団体・地方自治体と意見交換を行って要因を洗い出し、令和7年産から指標そのものを差し替えています。切り替えは9月25日現在の公表分からで、以降は作況指数という名前の数字は出ません。

作況指数と作況単収指数の計算式を新旧で並べた図。旧は10アール当たり収量を過去30年のトレンドである平年収量で割り、新は前年産までの5か年中3年平均である平均収量で割る。
農林水産省「水稲収穫量調査の見直しについて」より、作況指数から作況単収指数への移行
比べる項目旧 作況指数(令和6年産まで)新 作況単収指数(令和7年産から)
分母10アール当たり平年収量10アール当たり平均収量
分母の作り方過去30年のトレンド前年産までの5か年のうち最高・最低を除く3年平均
ふるい目の基準1.70mm以上生産者が使うふるい目幅以上
何を比べた数字か収穫量全体を平年と比べた数字という受け取り単位面積当たりの収量の多少に限る旨を名前で明示

分母が30年のトレンドから直近5年寄りに変わったのは、近年の高温など気候変動の影響を十分に反映させるためです。旧作況指数は分母が過去30年のトレンドで、直近の収量と比べる生産者の実感とのズレがありました。作況単収指数は前年産までの5か年のうち3年分を分母にするため、比較の基準線が直近の収量水準に近づきます。

自分の県の見込みが出るのは8月下旬です

水稲収穫量調査の公表は年に5回あり、回によって出る中身が違います。8月下旬は文字だけの見込み、10月中旬でようやく都道府県別の作況単収指数と予想収穫量、12月上旬が収穫量です。待っている数字がどの回で出るかを先に押さえると、無駄な空振りがなくなります。

調査期日公表時期公表される主な中身
7月15日現在7月下旬西南暖地の早期栽培等の10アール当たり収量の前年比見込み。文字情報のみ
8月15日現在8月下旬西南暖地の早期栽培分と沖縄県を除く都道府県別の10アール当たり収量の前年比見込み。文字情報のみ
9月25日現在10月中旬作況単収指数(全国・都道府県別)、10アール当たり予想収量、主食用の予想収穫量、作付面積
10月25日現在11月中旬作況単収指数(全国・都道府県・作柄表示地帯別)、10アール当たり予想収量、主食用と子実用の予想収穫量、作付面積。白未熟粒等の割合はこの回から
収穫期12月上旬作況単収指数(全国・都道府県・作柄表示地帯別)、10アール当たり収量、主食用と子実用の収穫量、作付面積

調査期日・公表時期・公表内容は農林水産省「水稲収穫量調査のしくみ」に基づきます。白未熟粒等の割合は、同「水稲収穫量調査の見直しについて」で10月25日現在の公表分から加わった参考情報です。子実用は、青刈り用を除いた、実を収穫する水稲の区分です。

8月下旬の公表は、西南暖地4県の早期栽培分と沖縄県を除いた都道府県別です。沖縄県の作柄は8月下旬には出ず、10月中旬の作況単収指数を待つことになります。

その沖縄県は、12月上旬の時点でも収穫が終わっていない地域があり、翌年2月に公表される確定値まで動く可能性があります。作柄表示地帯まで細かく見たいなら、公表は11月中旬です。市町村単位で設定された地帯ごとの数字は、10月中旬の公表には含まれません。

7月と8月の見込みは稲を刈らずに出しています

7月15日現在と8月15日現在の見込みには、坪刈りの実測が1筆も入っていません。降水量・気温・日照時間・風速などの気象データと、人工衛星から取れる降水量・地表面温度・日射量・植生指数を説明変数にした重回帰式で、10アール当たり予想収量を計算しています。予想収量そのものは未確定の要素が多いため公表されず、前年や平均と比べた区分だけが出ます。

前提は「その後の気象が平年並みに推移する」ことです。公表後に高温や台風が来れば結果はここから外れます。8月下旬の数字を経営判断にそのまま使わず、収穫期の天候で上下しうる前提つきの目安として扱ってください。

上回る106%以上
やや上回る105〜102%
前年並み・平均並み101〜99%
やや下回る98〜95%
下回る94%以下

区分名は前年と比べる場合が「前年並み」、平均と比べる場合が「平均並み」で、%の幅は前年比見込み・平均比見込みとも同じです。

「やや下回る」は最大で5%の減収に相当し、10アール当たり500kgの田なら25kg分の幅があります。区分名の印象より、%の幅で受け取るほうが実際の手取りに近い読み方になります。

早期栽培と第一期稲は前年比が「やや下回る」見込みです

令和8年産で最初に出た7月15日現在の見込みでは、徳島・高知・宮崎・鹿児島の早期栽培と沖縄県の第一期稲の5区分すべてが、前年比で「やや下回る」となりました。4月と6月の日照時間が前年を下回って推移したことが理由です。数字は県全体ではなく、この栽培区分だけのものです。

区分前年比見込み平均比見込み
徳島(早期栽培)やや下回るやや上回る
高知(早期栽培)やや下回るやや下回る
宮崎(早期栽培)やや下回る平均並み
鹿児島(早期栽培)やや下回るやや下回る
沖縄(第一期稲)やや下回るやや下回る

徳島だけ平均比が「やや上回る」に振れたのは、出穂期を迎える7月の日照時間が平年を上回って推移したためです。前年比と平均比で向きが分かれる産地があるとおり、この2つは別の物差しになります。前年比は去年との比較、平均比は5か年中3年平均との比較で、後者が作況単収指数と同じ分母を使います。

ただし早期栽培等の区域が全国の水稲収穫量に占める割合は、令和7年産で1.3%です。この5区分の結果から全国の作柄を推し量ることはできません。全国の姿は8月下旬の都道府県別見込みを待つことになります。産地・銘柄別の概算金の動きは、別の記事にまとめています。

収穫量の数字はふるい目で二通りあります

令和7年産から、主食用の収穫量は生産者が実際に使うふるい目幅で公表されるようになりました。目幅は都道府県ごとに最も使用割合の高いものが決められていて、範囲は1.80mmから1.90mmです。従来の1.70mm以上の収穫量も引き続き公表されるため、同じ年の収穫量に二通りの数字が並びます。

いま使われている目幅は令和6年産から8年産まで固定で、3年ごとに見直されます。県数でみると1.85mmと1.80mmが多数派で、1.90mmは北海道と東北を中心とした少数です。

1.85mm(19府県)福島・茨城・栃木・新潟・山梨・長野・静岡・愛知・三重・京都・兵庫・鳥取・岡山・広島・山口・福岡・佐賀・熊本・大分
1.80mm(17都府県)群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・岐阜・大阪・奈良・和歌山・徳島・香川・愛媛・高知・長崎・宮崎・鹿児島・沖縄
1.90mm(11道県)北海道・青森・岩手・宮城・秋田・山形・富山・石川・福井・滋賀・島根

1.70mmという基準が残るのは、生産者のふるいから落ちた玄米も米穀事業者の手で再度ふるわれ、主食用米として流通しているからです。農産物規格規程の三等以上かつ1.70mm以上なら炊飯時に粒として炊き上がり、実際に食べられています。主食用に供給されうる玄米の総量を把握する目的では、この基準が必要になります。

読むときは、どちらのふるい目ベースの数字かを必ず確かめてください。作況単収指数と主食用収穫量は生産者ふるい目幅ベース、供給総量の議論は1.70mmベースという使い分けになっています。

白未熟粒の割合も公表されます

高温が米の供給量に影響することを踏まえ、令和7年産からは坪刈りサンプルの玄米品位分析の結果も公表対象に入りました。10月25日現在の公表分からで、生産者の選別によっては除去される米の割合を知る参考情報という位置づけです。令和7年産の全国は、重量割合で次のとおりでした。

白未熟粒3.7%
胴割粒1.2%
死米0.3%
着色粒0.2%

それぞれの粒の定義は次のとおりです。

  • 白未熟粒=白色不透明な部分が粒平面の2分の1以上のもの
  • 胴割粒=粒平面に横一条の亀裂がすっきり通ったもの
  • 死米=粉状質で光沢がないものが3分の2以上を占めるもの
  • 着色粒=着色部分が直径1mm以上で、粒表面の3分の2以下のもの

この割合は、作況標本筆の刈取試料を穀粒判別器にかけた集計値です。調製したうえで販売される玄米の品位とは別の数字になります。もち米・酒米・低アミロース米・赤米・黒米など、外観が通常のうるち米と異なる品種は分析対象から外れる点にも注意してください。

この割合が高い年は、収量が確保できても等級と手取りが落ちます。お米の等級と農産物検査の仕組みとあわせて見ると、収量見込みと販売見込みのずれを早めにつかめます。

公表値が自分の田と合わないとき

公表される10アール当たり収量は、全国や都道府県の平均値です。作況標本筆1筆ごとの収量はこの平均を中心に上下へ分布していて、生産者ふるい目幅ベースの令和7年産全国平均526kgを超える筆も、満たない筆もあります。この分布状況自体も参考情報として公表されるようになりました。

実感とずれる理由は3つに絞れます。

  • 公表値が全国や都道府県の平均値であること
  • 三等以上に選別した重量を収量としていること
  • 色彩選別機で被害粒を除いて品位を高めている経営ほど、公表値が高く感じられること

調査ほ場は道府県ごとに無作為抽出されていて、生産者も品種も選んでいません。東京都と沖縄県だけは作況標本筆を置かず、作況基準筆の実測結果をもとに算出しています。

坪刈り調査が行われない地域で被害が出た場合は、被害面積と被害量を集めて調査結果に反映します。令和7年産からは坪刈りほ場の位置を地図にプロットして県・JA・農業共済へ提供し、被害情報の交換を行う体制になりました。自分の地域の減収が数字に乗っていないと感じたら、県やJAの担当者へ被害の状況を伝える経路があります。

この数字は交付金と共済に効きます

水稲収穫量調査の結果は、統計の公表で完結しません。主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律に基づく米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針、食料・農業・農村基本計画の生産量KPI、そして経営に直結する2つの制度で使われます。

  • 米・畑作物の収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)の交付金算定のための資料
  • 農業保険法に基づく農作物共済事業の適切な運営のための資料

いずれも制度を動かすための資料であって、個々の経営の補てん額を決める数字ではありません。ナラシ対策は名前のとおり収入の減少を緩和する制度、農作物共済は農業保険法に基づいて損害をてん補する制度です。自分の補てんの見込みを立てるときは、加入している対策の算定方式を先に確かめておきましょう。

コンバインの収量データが統計になります

現在の10アール当たり収量は、坪刈りの実測を積み上げて推計しています。規模は次のとおりです。

母集団全国の土地を200m四方(北海道は400m四方)に区切った約200万区画
調査ほ場無作為に抽出した全国約8,000筆。東京都と沖縄県は作況基準筆で対応
刈取りの量1筆につき3か所で1平方メートルずつ、合計3平方メートルを手刈り
調査対象面積約2千ha
推計する面積令和6年産の主食用作付面積126万ha
坪刈り調査から生産者の収穫量データ活用へ移行する図。令和6年産は約8,000筆・約2千haから126万haを推計、令和9年産は約21,000経営体・約13万haのデータから推計する。
農林水産省「水稲収穫量調査の見直しについて」より、生産者等の収穫量データを活用した調査への移行イメージ

農林水産省は令和9年産から、生産者が実際にコンバインで収穫した収量データを使う調査へ本格的に移行する方針です。本格導入には統計委員会の承認が要ります。試行から本格導入までの規模は次のとおりです。

現在坪刈り約8,000筆、調査対象面積は約2千ha
令和7年産の試行約600経営体、約2.6万ha
令和8年産の試行約5,500経営体、約10.2万ha
令和9年産の本格導入約21,000経営体、約13万ha。精度は現在の2倍を目指す

本格導入後の内訳は、大規模経営体を全数調査で押さえ、坪刈りを補完に回す形です。

大規模経営体50ha以上を想定した約1,100経営体(約9.4万ha)を全数調査
中小規模経営体約20,000経営体(約3.6万ha)
坪刈り約5,000筆に縮小し、補完に回る

JA等の乾燥調製施設のデータを、JA等に過度な負担をかけずに統計的に活用できるかの検証も並行しています。試行調査の対象になった生産者には、9月上旬・10月上旬・11月上旬の計3回、調査票が郵送されます。

あわせて令和8年8月から、生産者がスマートフォンで生育状況や被害状況を投稿できるオンラインコミュニティ「みのりボイス」の運用が始まりました。調査の取りまとめで参考にする情報を、現場から直接集める仕組みです。人工衛星データとAIによる作付面積の把握と収量予測も、令和7年度に9社の参加で始まり、令和8年度は実証研究の段階にあります。

自分の地域の作柄を確かめる進め方

  1. 8月下旬の公表で、自分の都道府県の10アール当たり収量の前年比見込みを確かめます。区分名だけでなく、対応する%の幅で受け取りましょう。沖縄県は対象外なので10月中旬まで待ちます。
  2. 10月中旬の公表で、都道府県別の作況単収指数と主食用の予想収穫量を確かめます。ここで初めて数字が出ます。
  3. 11月中旬の公表で、自分の市町村が属する作柄表示地帯の指数と、白未熟粒等の割合を確かめます。等級の見通しはここで立てます。
  4. 坪刈り調査のない地域で被害が出ていれば、県やJA、農業共済の担当者へ被害の状況を伝えます。
  5. 12月上旬の収穫量をもとに、ナラシ対策や共済の見通しを整理します。沖縄県は翌年2月の確定値を待ちます。

よくある質問

作況指数は廃止されたのですか

廃止という言い方は正確ではありません。令和7年産から作況単収指数へ移行し、作況指数という名称での公表が終わりました。単位面積当たりの収量の多少を示す指標という役割は引き継がれています。

作況単収指数はいつ公表されますか

10月中旬、11月中旬、12月上旬の3回です。7月下旬と8月下旬の公表には含まれず、この2回は「やや下回る」などの区分だけが出ます。

飼料用米の田も調査の対象になりますか

対象外です。水稲収穫量調査は主食用として供給される可能性のある玄米の総量を把握する調査のため、飼料用米など食用以外の用途に供される水田は調査ほ場に選定されません。

倒伏や高温の影響は数字に反映されますか

反映されます。倒伏はもみ当たりの重さに表れるうえ、手刈り調査であることを踏まえ、コンバインの収穫ロス率を収量から控除しています。高温による白未熟粒や胴割れで農産物規格規程の等級外となった場合は、三等に達するまで再選別を行い、被害粒を除去する仕組みです。

調査ほ場はどうやって選ばれていますか

道府県ごとに全体の縮図となるよう無作為に抽出しています。生産者や品種を選んで指定することはありません。抽出後に生産者を特定し、調査の目的や継続予定年数を説明して承諾を得た田だけが作況標本筆になります。東京都と沖縄県には作況標本筆を置かず、作況基準筆の実測結果を基準にしています。

キーワード解説

作況単収指数

生産者が使うふるい目幅ベースの10アール当たり収量を、前年産までの5か年中3年平均(最高・最低を除く)の平均収量で割って100を掛けた比率です。単位面積当たりの収量の多少を示し、収穫量全体を比べた数字ではありません。

10アール当たり平均収量

過去5か年の10アール当たり収量のうち、最高と最低を除いた3か年の平均値です。作況単収指数の分母になります。旧作況指数の分母だった平年収量が過去30年のトレンドだったのに対し、直近の収量水準を強く映します。

西南暖地の早期栽培等

8月中旬頃までに刈取りがおおむね終了する早期栽培の面積割合が、おおむね3割以上を占める徳島県・高知県・宮崎県・鹿児島県の早期栽培と、沖縄県の第一期稲を指します。7月下旬に最初の見込みが公表される区域です。

作柄表示地帯

地域行政上必要な水稲の作柄を表示する区域として、地形・気象・栽培品種など水稲の生産力をもとに道府県内を分割した地帯です。分割は原則として市町村単位で行われます。地帯別の作況単収指数は11月中旬の公表から出ます。

坪刈り

作況標本筆の3か所で1平方メートルずつ、合計3平方メートルの稲を手で刈り取って収量を実測する調査です。脱穀・乾燥・もみすりのあと三等以上に選別した重量を計り、コンバインロス率で補正して10アール当たり収量を出します。