消費者庁は食品表示基準を改正し、カシューナッツを特定原材料に加えました。惣菜のインストアラベル、直売所の加工品、小売のプライベートブランドまで、容器包装に入った加工食品を扱う事業者はラベルの見直しが必要になります。ラベルを直す期限と、対象になる商品の範囲、経過措置の期間中に起きる紛らわしさへの対処を整理します。
| 誰が | 容器包装入りの加工食品を製造・加工・輸入・販売する事業者。直売所の加工グループ、惣菜売り場、PBを企画する小売も対象 |
|---|---|
| 何を | カシューナッツを含む加工食品に、アレルゲンとして「カシューナッツ」を表示 |
| いつまでに | 令和10年3月31日。一般用は同日までに製造・加工・輸入したもの、業務用は同日までに販売するものが従来の表示のままで可 |
| 根拠 | 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)別表第十四。令和8年4月1日公布の内閣府令第34号で改正 |
| 詳しくは | 下の「ラベルを直す手順」で、原材料の洗い出しから表示替えまでの順番を確かめてください |
カシューナッツは義務表示の9品目に入りました
アレルゲンの表示対象は二段構えです。食品表示基準が表示を義務付ける特定原材料と、消費者庁の通知「食品表示基準について」が表示を推奨する特定原材料に準ずるものに分かれます。カシューナッツは後者から前者へ移りました。
| 区分 | 表示 | 品目 |
|---|---|---|
| 特定原材料(9品目) | 義務 | えび・カシューナッツ・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ) |
| 特定原材料に準ずるもの(20品目) | 推奨 | アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・キウイフルーツ・牛肉・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・ピスタチオ・豚肉・マカダミアナッツ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン |
義務の対象は、容器包装に入った加工食品のほか、特定原材料に由来する添加物、特定原材料由来の添加物を含む生鮮食品の一部です。表示が必要になるのは、原材料に含まれる個々の特定原材料等の総たんぱく含量が、1グラムあたり数マイクログラム(数ppm)以上、または1ミリリットルあたり数マイクログラム以上のときです。
含有を確かめないまま「入っているかもしれません」「入っている場合があります」と可能性だけを書くことは、一括表示枠の外であっても認められていません。書けるのは注意喚起表示のほうです。混入防止を徹底しても意図しない混入の可能性が残る場合は、「本品製造工場ではカシューナッツを含む製品を生産しています。」のように、事実として注意喚起を書きます。必ず混入するのであれば、意図しない混入ではなく通常の原材料としてカシューナッツを表示します。
経過措置は令和10年3月31日までです
改正内閣府令は令和8年4月1日に公布され、同日から施行されました。附則で2年間の経過措置が置かれ、条件は一般用と業務用で分かれます。
| 一般用の加工食品 | 令和10年3月31日までに製造・加工・輸入したものは従前の例によることが可能 |
|---|---|
| 業務用加工食品 | 令和10年3月31日までに販売するものは従前の例によることが可能 |
期限の意味を取り違えないでください。「令和10年3月31日までにラベルを貼り替える」ではなく、「その日までに製造した商品は従来の表示のままでよい」という定めです。期限の翌日以降に製造する商品から新しい表示が必要になり、期限内に製造した在庫は、その後も従来の表示のまま販売できます。
この経過措置は、アレルゲンの品目を定める別表第十四の改正に係るものです。同じ内閣府令には食品表示基準の別の改正も含まれ、そちらには令和12年3月31日までの別の経過措置が置かれています。カシューナッツの表示について見るべき期限は令和10年3月31日です。
消費者庁は経過措置を設けたうえで、可能な限り速やかに表示するよう求めています。都道府県・保健所設置市・特別区の衛生主管部局を通じて、事業者への周知と、原材料・製造方法の再確認、原材料段階での管理が依頼されています。パッケージの改版時期を待たずに動くほうが、健康被害の危険も回収の負担も小さくなります。
カシューナッツには代替表記がありません
個別表示では、原材料名の直後に括弧を付けて含む旨を書きます。品目によっては代替表記や拡大表記があり、それを使えば「〜を含む」の記載を省けます。えびなら「海老」「エビ」、くるみなら「クルミ」、落花生なら「ピーナッツ」がこれに当たります。
カシューナッツの欄は空です。代替表記も拡大表記も定められていないため、原材料名に「カシューナッツ」の語がそのまま出ていない限り、含む旨の表示を省略できません。「ナッツ入り」「ミックスナッツ」といった書き方だけでは足りず、「ミックスナッツ(カシューナッツを含む)」のように明示する必要があります。
同じ改正で推奨に加わったピスタチオには、代替表記として「ピスタチオナッツ」が定められています。義務になったカシューナッツの側に、こうした言い換えの余地はありません。
カシューナッツを含む加工食品を製造する場合、行政の検証は消費者庁通知の別添「アレルゲンを含む食品の検査方法」に基づいて行われます。検査の判断樹では、カシューナッツは卵・乳・小麦・そば・落花生・くるみと同じ扱いで、えび・かにとは別の経路になります。
「9品目」と「29品目」の書き分け
準ずるものは義務ではないため、表示が無いだけでは「使っていない」のか「使っているが書いていない」のかを消費者が判断できません。そこで一括表示枠に近接した位置へ、対象範囲を書き添えることが望ましいとされています。
- 準ずるものまで含める場合の例:「この食品は29品目のアレルゲンを対象範囲としています。」「アレルゲン(29品目対象)」
- 義務の品目だけを対象とする場合の例:「アレルゲンは義務9品目を対象範囲としています。」「アレルゲン(特定原材料のみ)」
経過措置の期間中は、この書き方だけでは改正前後のどちらの品目を指しているかが判然としません。品目の一覧やイラストで判断できない場合は、いつ時点の内閣府令または通知に基づく表示かが分かる書き方も認められています。カシューナッツが義務に移り、ピスタチオが推奨に加わった直後のいまは、この一手間が消費者の誤認を防ぎます。
ピスタチオは義務ではなく推奨です
同じ改正でピスタチオが特定原材料に準ずるものに追加されました。消費者庁の「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究」(全国実態調査)で、症例数が継続して相当数みられたためです。義務ではないため書かなくても違反にはなりませんが、消費者庁は事業者の実行可能性と、カシューナッツとの交差反応性を踏まえ、可能な限り速やかに表示するよう求めています。
カシューナッツのアレルギー患者がピスタチオにも反応する例があるという意味です。カシューナッツの表示を見直す作業のなかで、同じ原材料表にピスタチオの有無も一緒に洗い出しておくと、二度手間になりません。
なぜカシューナッツだったのか
特定原材料は発症数と重篤度で決まります。カシューナッツとくるみは、近年の木の実類のなかで症例数が増えていることが理由に挙げられています。
全国実態調査の直近の結果(令和5年の即時型食物アレルギー全国モニタリング調査。6,033件)では、木の実類が原因食物全体の24.6%を占めました。クルミは単独で15.2%に達し、牛乳の13.4%を上回っています。
| 原因食物 | 全体に占める割合 | 件数 |
|---|---|---|
| 鶏卵 | 26.7% | 1,609件 |
| クルミ | 15.2% | 916件 |
| 牛乳 | 13.4% | 807件 |
| 小麦 | 8.1% | 489件 |
| 落花生 | 7.0% | 421件 |
| イクラ | 5.7% | 344件 |
| カシューナッツ | 4.6% | 279件 |
木の実類のなかで見ると、クルミ916件が61.7%、カシューナッツ279件が18.8%を占め、マカダミアナッツ69件、ピスタチオ50件、アーモンド46件が続きます。木の実類の上位2品目が、いずれも義務の対象になりました。
消費者庁は疫学調査を定期的に続け、特定原材料と準ずるものの見直しを重ねる方針です。今回の改正で終わりではなく、次の調査で別の品目が動く可能性があります。
表示が要らない場合
特定原材料を原材料として含んでいても、表示義務が免除される場面があります。
- 精製が完全な乳糖のように、抗原性が認められずアレルギー誘発性がない食品
- 抗原性試験等により抗原性が認められないと判断できる添加物
- 特定原材料に由来する香料。ただし香気成分以外に特定原材料から製造した副剤を使う場合は、その副剤の表示が必要
- 特定原材料等を原材料とするアルコール類。症状がアレルギーによるものかアルコールの作用かを判別しにくいため、酒類には義務付けられていません
免除の判断を自社で下すのは容易ではありません。迷う場合は表示するほうが安全です。アレルゲンの表示漏れは、自主回収の届出義務がかかる代表的な原因でもあります。
ラベルを直す手順
- 自社が扱う加工食品の原材料表を洗い出し、カシューナッツとピスタチオを使っている商品を特定します。ミックスナッツのように商品名から分かるものだけでなく、原材料名を見なければカシューナッツの使用が分からない加工品も対象に含めます。
- 仕入れ先へ規格書の再提出を求め、原材料段階での使用の有無を確認します。最新の情報かどうかを必ず確かめます。
- 同じ製造ラインで意図しない混入が起きないかを、洗浄記録と直前製造品の記録から点検します。防止策を徹底しても可能性が残る場合は注意喚起表示を行い、混入の頻度と量が少ない場合は表示の必要はありません。
- 表示案を作り、個別表示と一括表示のどちらで書くかを決めます。カシューナッツは代替表記が無いため、原材料名に語が出ていなければ含む旨を必ず添えます。
- 一括表示枠の近くに、9品目と29品目のどちらを対象範囲としているかを書き添えます。経過措置の期間中は、いつ時点の基準に基づく表示かも分かるようにします。
- 令和10年3月31日より前に切り替える計画を立て、パッケージの改版時期と在庫の消化見込みを突き合わせます。
よくある質問
令和10年3月31日を過ぎたら在庫は売れなくなりますか
売れます。経過措置は「その日までに製造・加工・輸入した加工食品」に適用されるため、期限内に製造した商品は、期限を過ぎたあとも従来の表示のまま販売できます。業務用加工食品については、同日までに販売するものが対象です。
直売所のばら売りやその場での量り売りにも表示が必要ですか
アレルギー表示の義務がかかるのは容器包装に入った加工食品です。ばら売りや量り売りのように容器包装に入れずに販売する食品と、飲食店などで設備を設けて飲食させる食品は対象外です。ただし、飲食店や直売所であっても、容器包装に入れて販売するものには表示が必要です。容器包装の表示可能面積が30平方センチメートル以下の場合でも、アレルギー表示は省略できません。小さなシールで貼る商品ほど、書き方を先に決めておいてください。対象外の食品についても、店頭での掲示や口頭での説明ができる体制を整えておきましょう。
「ナッツ類」とまとめて書けますか
書けません。カシューナッツには代替表記も拡大表記も定められていないため、「ナッツ類」ではカシューナッツを含む旨を表示したことになりません。原材料名に「カシューナッツ」の語を出すか、括弧で「カシューナッツを含む」と添えてください。
ピスタチオを書かないと違反になりますか
なりません。ピスタチオは特定原材料に準ずるもので、表示は通知による推奨です。ただしカシューナッツとの交差反応性が指摘されており、消費者庁は可能な限り速やかに表示するよう求めています。
キーワード解説
特定原材料
食品表示法第4条第1項に基づく食品表示基準が、表示を義務付けるアレルゲンです。発症数と重篤度から選ばれ、えび・カシューナッツ・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)の9品目が指定されています。
特定原材料に準ずるもの
消費者庁の通知「食品表示基準について」が表示を推奨するアレルゲンで、20品目あります。過去に一定の頻度で健康危害が見られた品目が対象で、表示しなくても違反にはなりません。特定原材料とあわせて29品目になります。
代替表記・拡大表記
代替表記は、特定原材料と言葉は違っても同じものだと分かる表記です。拡大表記は、特定原材料や代替表記を含むことで使用が分かる表記を指します。どちらかに当たれば含む旨の表示を省けますが、カシューナッツにはいずれも定められていません。
個別表示と一括表示
個別表示は原材料名や添加物の物質名の直後に括弧で含む旨を書く方法で、これが原則です。一括表示は表示可能面積の都合などで個別表示がなじまないときに、含まれる特定原材料等をまとめて書く例外の方法です。