仕入れた野菜をパックに詰め直す、千切りにする、数種類を混ぜてサラダ用にする。同じ売り場の作業なのに、必要な表示は作業ごとに変わります。しかも直感とは逆で、手をかけずに小分けしただけのほうが書く項目は多くなります。直売所・小売店・産直コーナーで野菜や果実を扱うとき、どの作業でどこまで表示が要るのか、生鮮食品と加工食品の境目はどこか、表示の責任を負うのは誰か。売り場の作業単位で必要な表示を確定できるようにまとめます。

対象となる方仕入れた野菜・果実を小分け、カット、盛り合わせて売る直売所・小売店・スーパー・産直コーナーの運営者
誰の責任か表示に責任を有する食品関連事業者。加工行為を行った者が加工者、それ以外を行った者が製造者
省ける場合店内で加工して自らその場で販売するとき。原材料名・内容量・栄養成分・事業者名・原産国名・原料原産地名の6項目
省けない項目名称・アレルゲン・消費期限または賞味期限・保存の方法・添加物・製造所または加工所の所在地および製造者または加工者の氏名
義務がかからない場合容器包装に入れずにばら売りする加工食品。生鮮食品は容器包装がなくても名称と原産地が必要。生食用牛肉は注意喚起表示が必要
根拠食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第3条・第5条・第18条、消費者庁「食品表示基準Q&A」

小分けしただけの品は通常どおり全項目を表示します

バックヤードで単に小分け包装した加工食品をその場で販売する場合、食品表示基準に定められた表示が必要です。この場合は後述するインストア加工の特例「食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合」には当たらないため、原材料名や内容量まで表示することになります。

仕入れ・切断・成形・解凍・小分け・再包装・温め直しは、いずれもインストア加工に当たりません。冷凍で仕入れたタレ付き肉をバックヤードで解凍し、小分けして包装して売る場合も、原料原産地名を含めた加工食品としての表示が必要です。

バルクで仕入れたうなぎの蒲焼きを小分けする、大袋の惣菜を店内でパックに詰め替える、といった作業がこれに当たります。手をかけていないぶん表示も軽くなりそうに思えますが、扱いは逆です。中身を作ったのは別の事業者であり、その情報を消費者へ引き継ぐ必要があるためです。

店内で加工して売るときに省ける6項目

容器包装した商品をバックヤードで調理し、自らその場で販売する場合は、一部の表示事項を省けます。水産の鍋物セットやバーベキューセット、畜産の焼肉セットやハンバーグ、農産のカットフルーツミックスや鍋物セットなどが対象です。塩味を付ける、しょうゆをかける、ごまをふる、煮る、焼く、揚げるといった行為がここに入ります。

省ける項目と省けない項目は、次のとおり分かれます。

扱い表示事項注意点
省ける 原材料名、内容量または固形量および内容総量、栄養成分の量および熱量、食品関連事業者の氏名または名称および住所、原産国名、原料原産地名 特定保健用食品・機能性表示食品では、原材料名・内容量・栄養成分・事業者名の4項目が省略の対象外。原産国名と原料原産地名は特定保健用食品・機能性表示食品でも省略可。栄養表示をしようとする場合は栄養成分も表示が必要。事業者名は指定成分等含有食品でも省けない。個別的義務表示も一部は省けるが、食肉・食肉製品・乳製品・冷凍食品・生食用の切り身魚介類などは除かれる
省けない 名称、アレルゲン、消費期限または賞味期限、保存の方法、添加物、製造所または加工所の所在地および製造者または加工者の氏名または名称 いずれも義務表示の特例の免除リストに含まれない。名称は表示が必要だが、別表第5の名称使用制限が適用されず表示方法は緩和。製造所または加工所の所在地・製造者名は、事業者名が省略されるため省略の要件を満たさず表示が必要

省けない6項目のうち、アレルゲンと期限は消費者の健康に直結します。安全性に係る表示事項の誤りを理由に商品を回収する場合、行政への自主回収の届出が義務になります。届出が必要になるのは食品表示法が定める安全性に係る表示事項に限られ、消費者に誤認を与えない誤字・脱字を理由に安易に回収することは求められていません。店内加工で表示が軽くなるのは事務的な項目だけで、責任が軽くなるわけではありません。

製造所または加工所の所在地と、製造者または加工者の氏名は、店内加工でも表示します。食品表示基準では、食品関連事業者の住所・氏名が製造所の所在地・製造者名と同一なら製造所側を省略できますが、店内加工では事業者名そのものが省略されるため、この省略の要件を満たしません。売り場で作った商品にも、どこで誰が加工したかを書いてください。

食品表示基準では内容量の表示義務がない場合でも、計量法によって表示しなければならない場合があります。

混ぜたか、調味したかで生鮮食品と加工食品が分かれます

表示の中身を根本から変えるのが、生鮮食品と加工食品の境目です。判定は2段階で見ます。1つめは異なる種類を混ぜたかどうか、2つめは1種類でも調味・加熱・炙りなどで本質を変えたかどうかです。単に切っただけでは区分は変わりません。

作業区分
1種類を切る、選別する、調整する生鮮食品キャベツの千切り、単一畜種の食肉をサイコロ状にカット、リンゴのサイズ分け
1種類でも調味する、表面をあぶる、衣を付ける、ブランチングする加工食品スパイスをふりかけた食肉、調味液につけた食肉、たたき牛肉、パン粉を付けた豚カツ用豚肉、ブランチングして冷凍した野菜
2種類以上を切って混ぜる加工食品キャベツ千切りとカットレタスのミックス、カットパインアップルとカットメロンの盛り合わせ
2種類以上でも個々の原形を判別できる生鮮食品ベビーリーフ。原形が分からないほど更にカットすれば加工食品。マグロ単品の刺身にツマや大葉を添えたものも生鮮食品
切らずに詰め合わせる生鮮食品野菜の詰め合わせ。それぞれの野菜について原産地表示が必要
生鮮食品と加工食品を詰め合わせるそれぞれ別扱い豚肉にタレを別袋で添付。豚肉は生鮮食品の表示、タレは一括表示

切断・整形・選別・破砕・混合・盛り合わせ・小分け・加塩・骨取り・表面をあぶる・冷凍・解凍・結着防止の13の行為が、加工に当たります。ただし切断・整形・選別は加工食品に対して行う行為として定められており、生鮮の野菜を単に切っただけのものは生鮮食品のままです。混合からも、粉体と粉体、液体と液体、固体と液体の混合は除かれます。

原料原産地は重量1位の原材料に表示します

国内で製造した加工食品は、すべて原料原産地表示の対象です。原材料に占める重量の割合が最も高い原材料について、その原産地を表示します。重量50%という基準は、表示するかどうかを分けるものではなく、どう表示するかを分けるものです。

異種混合したカット野菜・カット果実は、食品表示基準の別表第15の1(4)に掲げられています。原材料および添加物に占める重量の割合が最も高い生鮮食品が50%以上のとき、この項目に該当し、その生鮮食品の名称とともに原産地を表示します。該当しない場合も原料原産地表示は必要で、重量1位の原材料について通常の方法で表示することになります。この場合は、産地の切り替えが多いときの「又は」表示や「輸入」表示といった代替の方法も使えます。

商品別表第15の1(4)原料原産地の表示
キャベツ千切り70%+カットレタス30%該当キャベツが50%以上。キャベツの名称とともに原産地を表示。レタスも任意表示が望ましい
キャベツ40%+レタス30%+トマト30%非該当50%以上を占める単一の生鮮食品がない。重量1位のキャベツについて通常の方法で原料原産地を表示
カット野菜にクルトンやツナ、ゆでブロッコリーを加えたもの非該当加工食品を加えているため別表の項目に当たらない。重量1位の原材料について原料原産地を表示
ドレッシングをかけたカット野菜非該当かけた場合は別表の項目に当たらない。重量1位の原材料について原料原産地を表示。小袋で別添した場合は独立した商品として判定

ここに店内加工の特例が重なります。バックヤードで複数種類のフルーツを盛り合わせたカットフルーツミックスは、異種混合の行為自体がインストア加工とみなされるため、原料原産地の表示義務はありません。義務ではないものの、任意で表示することが望ましいとされています。産地を売りにする直売所であれば、義務の有無にかかわらず書いたほうが商品価値につながります。

容器包装に入れない加工食品には義務がかかりません

食品表示基準が適用されるのは、容器包装に入れられた加工食品です。容器包装に入れられた加工食品とは、加工食品を容器包装していて、そのままの状態で消費者に引き渡せるものを指します。

  • 該当するもの:小分け包装した製品をダース単位でまとめた包装。個々の包装に表示があり、まとめた包装を通して見えるなら、表示し直す必要はありません。
  • 該当しないもの:串に刺した焼き鳥をそのまま販売するとき。トレイに載せてラップをしないとき。消費者に渡す際に紙やビニールで包むとき。

容器包装に入れずにばら売りする場合、加工食品には食品表示基準が適用されません。客の注文に応じてその場で容器に詰めて販売する行為も、容器包装に入れられた加工食品の販売には当たりません。生食用牛肉の注意喚起表示だけは例外で、容器包装に入れないで販売する場合も、店舗の見やすい場所に表示します。

生鮮食品は扱いが違います。野菜や果実をばら売りする場合でも、名称と原産地の表示が必要です。容器包装に入れないときは、製品に近接した掲示など見やすい場所に表示します。ただし、自分で生産した農産物を容器包装に入れず生産した場所で売る場合は、この義務の対象から外れます。

表示の責任を負うのは製造者か加工者か

表示欄に載せる事業者の肩書きは、その事業者が何をしたかで決まります。加工に当たる行為を行った者が加工者となり、加工以外を行った者が製造者となります。

  • 牛肉を焼き(製造)、カットする(加工)まで同じ事業者が行った場合、その事業者は製造者に当たります。
  • 牛肉を焼いた事業者は製造者になります。その焼いた牛肉を別の事業者がカットした場合、カットした事業者は加工者となります。

仕入れた商品に自店の名前で表示を付けたなら、その内容の責任も自店が負います。仕入れ先の規格書とラベルの内容が一致しているかは、自店で確かめてください。

いま確認しておきたいこと

売り場の作業を、次の3つに仕分けておくと判断が速くなります。

  1. 仕入れた品を小分けするだけの作業。原材料名まで含めた表示が必要です。仕入れ先の一括表示を正確に引き継げているか確かめます。
  2. 店内で調理・混合してその場で売る作業。6項目を省けますが、アレルゲン・期限と製造所の所在地は省けません。
  3. ばら売り・注文を受けてその場で詰める作業。加工食品なら表示義務はかかりません。生鮮食品は名称と原産地が必要です。

期限そのものの決め方は賞味期限・消費期限の表示ルールと決め方で、表示を誤ったときの回収と届出は食品の自主回収は届出が必要かで整理しています。

よくある質問

バックヤードで小分けした商品に原材料名は要りますか

要ります。単に小分けしただけの加工食品をその場で販売する場合は、店内で製造・加工した場所で販売する場合には当たらないため、原材料名や内容量を表示する必要があります。解凍・再包装・温め直しも同じ扱いです。

キャベツを千切りにしただけなら加工食品になりますか

なりません。1種類の野菜を切っただけのものは生鮮食品のままで、生鮮食品として原産地の表示が必要になります。キャベツ千切りとカットレタスのように異なる種類を混ぜると加工食品に変わります。1種類でも調味したり表面をあぶったりすれば、混ぜていなくても加工食品です。

店内で加工すればアレルゲン表示も省けますか

省けません。店内で加工して自らその場で販売する場合に省けるのは、原材料名・内容量・栄養成分・事業者名・原産国名・原料原産地名の6項目です。アレルゲン、期限、保存の方法、名称、添加物と、製造所または加工所の所在地・製造者名は表示が必要です。

ばら売りの野菜に表示は要りますか

生鮮食品である野菜をばら売りする場合、名称と原産地の表示が必要です。容器包装に入れないときは、近接した掲示など見やすい場所に表示します。自分で生産した農産物を生産した場所で売る場合は対象から外れます。加工食品は容器包装に入れずに売るなら食品表示基準が適用されませんが、生食用牛肉の注意喚起表示だけは必要です。

カットフルーツミックスに産地を書く義務はありますか

バックヤードで盛り合わせたものであれば、インストア加工とみなされるため原料原産地の表示義務はありません。任意で表示することが望ましいとされています。仕入れたカットフルーツミックスを小分けして売る場合は、義務の対象になり得ます。

キーワード解説

加工

新たな属性を付加する行為であって、行う前後で比較して本質の変更を及ぼさない程度のものを指します。切断・整形・選別・破砕・混合・盛り合わせ・小分け・加塩・骨取り・表面をあぶる・冷凍・解凍・結着防止の13の行為が当たります。混合からは、粉体と粉体、液体と液体、固体と液体の混合が除かれます。本質を変える行為は製造として区別されます。

インストア加工

スーパーマーケット等のバックヤードで調理し、自らその場で販売することを指します。食品表示基準第5条第1項の「食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合」に当たり、一部の表示事項を省けます。この特例は製造者と販売者が同一で、同一の施設内・敷地内で製造して売る場合に限られます。仕入れ・切断・成形・解凍・小分け・再包装・温め直しは含まれず、他の事業者が作ったものを預かって売る形も当たりません。

異種混合

異なる種類の生鮮食品や加工食品を混ぜること、または盛り合わせることです。異種混合したカット野菜・カット果実は加工食品として扱われ、重量の割合が50%以上を占める生鮮食品があれば別表第15の1(4)に該当し、その生鮮食品の名称とともに原産地を表示します。該当しない場合も、重量1位の原材料について原料原産地表示が必要です。