食品を仕入れて販売する流通事業者や小売店にとって、容器包装の表示は商品の「顔」であると同時に、守るべき法律でもあります。期限の書き方や原材料の出どころ、栄養成分の数値など、表示の項目は食品表示法食品表示基準で細かく決まっています。この記事では、加工食品の義務表示と期限ルールの基本、そして近年の改正点を、仕入れ・棚入れ・PB(プライベートブランド)開発の現場で判断できる形に整理します。

まず押さえたい要点

食品表示法は、消費者の安全を守り、消費者が自分で選ぶための情報を確実に届けることを目的とした法律です。表示のルールそのものは内閣府令の食品表示基準が定め、どんな食品に何を書くかを項目ごとに決めています。販売者・製造者がこの基準どおりに表示する責任を負います。全体像を一枚で示します。

項目内容
誰が食品を製造・加工・輸入・販売する食品関連事業者(メーカー、卸、小売、PB開発者など)
何を容器包装に入った加工食品への義務表示(名称・原材料名・添加物・内容量・期限表示・保存方法・栄養成分・原料原産地・アレルゲン・事業者名など)
いつまでに商品を消費者に販売する時点までに、食品表示基準に沿った表示を完成させておく
費用表示の作成・包材変更にかかる自社コスト(行政手数料は基本不要)。違反時は是正・回収・行政処分の負担
次の一歩消費者庁の早わかりガイドと食品表示基準で、自社商品の表示項目を一つずつ照合する

食品表示法とは|三つの法律を一つにまとめた制度

食品表示法は、それまで別々の法律にまたがっていた食品表示のルールを一つに束ねた法律です。具体的には、品質に関する旧JAS法(農林物資の規格化等に関する法律)、安全・衛生に関する食品衛生法、栄養に関する健康増進法という三つの法律の表示規定を統合し、包括的で一元的な表示制度を作りました。事業者にとって参照すべき条文が分散していた状態を解消し、消費者にとっても表示の意味が分かりやすくなる狙いがあります。

この法律は2015年(平成27年)4月1日に施行されました。表示の具体的なルールは食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)が担い、加工食品・生鮮食品・添加物のそれぞれについて、表示すべき項目と方法を定めています。施行時には5年間の経過措置が置かれ、旧ルールでの表示は2020年3月31日まで認められました。そして2020年4月1日から新制度が完全に施行され、後述する栄養成分表示などが原則義務になっています。

加工食品の主な義務表示項目

加工食品の一括表示の見本と、クッキー・ベーコンの記入例。名称・原材料名・添加物・内容量・賞味期限・保存方法・製造者などの欄を示す
消費者庁「早わかり食品表示ガイド」(PDF):加工食品の一括表示の見本と、名称・原材料名・添加物・期限表示・保存方法・製造者などを書き込んだ記入例。

容器包装に入って販売される一般用の加工食品には、食品表示基準に基づき複数の項目を表示します。仕入れ商品やPB商品のパッケージを点検するときは、次の項目がそろっているかを基準に確認します。

  • 名称:その商品の内容を表す一般的な名前を表示します。
  • 原材料名:使った原材料を、重量の多い順に表示します。
  • 添加物:使用した食品添加物を、原材料と区分して表示します。
  • 原料原産地名:国内で製造した加工食品について、一番重量の多い原材料の産地を表示します。
  • 内容量:重さや体積、個数などを表示します。
  • 消費期限または賞味期限:傷みやすさに応じてどちらかを表示します。
  • 保存の方法:常温・要冷蔵・要冷凍など、品質を保つための保存条件を表示します。
  • 栄養成分の量および熱量:原則として栄養成分表示を行います。
  • 食品関連事業者の氏名または名称および住所:表示に責任を持つ事業者を表示します。
  • アレルゲン:特定原材料を含む場合は、原材料や添加物ごとに表示します。

これらは並べる位置や枠(一括表示)の作り方にもルールがあります。とくにPB商品を企画する小売事業者は、製造を委託する場合でも表示の最終責任が自社に及ぶ場面があるため、表示案の段階で基準と照らし合わせておきましょう。

消費期限と賞味期限の違い

消費期限と賞味期限の定義・対象食品の例の比較表と、品質の劣化と期限の関係を示すイメージ図
消費者庁「期限表示(消費期限・賞味期限)」(PDF):消費期限と賞味期限の定義・対象食品の比較と、品質の劣化と期限の関係を示すイメージ図。

期限表示は読者からの問い合わせも多く、現場で混同されやすい項目です。消費期限賞味期限は意味が異なり、表示する食品も分かれます。

区分 意味 主な対象食品 期限を過ぎたら
消費期限 定められた方法で保存した場合に、安全に食べられる期限 弁当、調理パン、惣菜、生菓子、生めんなど傷みやすい食品 安全性が保てなくなるため、食べないほうがよい
賞味期限 定められた方法で保存した場合に、おいしく食べられる期限(best-before) スナック菓子、缶詰、レトルト食品など比較的傷みにくい食品 すぐ食べられなくなるわけではなく、品質と状態を見て判断する

消費者庁は「賞味期限はおいしいめやす」という考え方を広め、期限を過ぎた食品をすぐ捨てる必要はないと呼びかけています。期限はいずれも、未開封で表示どおりに保存した場合の目安です。開封後は表示の期限にかかわらず早めに食べるよう案内すると、店頭でのトラブルを防ぎやすくなります。期限の正しい理解は、後述する食品ロスの削減とも直結します。

栄養成分表示の義務化

栄養成分表示の表示例。熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の5項目を決まった順番で表示することを示す
消費者庁「食品表示基準における栄養成分表示」(PDF):熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の5項目を決まった順番で示す栄養成分表示の表示例。

かつて任意だった栄養成分表示は、食品表示法のもとで原則義務になりました。容器包装に入った一般用の加工食品と添加物には、栄養成分の量と熱量の表示が必要です。5年間の経過措置を経て、2020年4月1日からこのルールが完全に適用されています。

義務となる項目は、熱量(エネルギー)・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の5つで、この順番で表示します。塩分はナトリウム量そのものではなく、消費者が分かりやすいように食塩相当量に換算して表示する点が特徴です。新商品を出すときや成分が変わったときは、この5項目の数値を必ず見直しましょう。

原料原産地表示の拡大

原材料の産地への関心が高まるなか、原料原産地表示の対象が大きく広がりました。新しい制度は2017年9月1日に始まり、2022年3月31日までの経過措置を経て、国内で製造する全ての加工食品が対象になっています。表示するのは、重量の割合が一番多い原材料の産地です。

産地が国産なら国名(または都道府県名など)を、輸入なら原産国を表示します。複数の国にまたがる場合は重量の多い順に国名を並べ、対象原材料そのものが加工食品のときは製造地を表示するなど、書き方にいくつかの型があります。仕入れ先の切り替えで主原料の産地が変わると表示も変える必要があるため、調達の変更と表示の更新をセットで管理しましょう。

添加物の不使用表示の見直し

「無添加」「○○不使用」といった表示は商品の訴求に使われやすい一方で、消費者の誤認を招きやすい面があります。消費者庁は2022年(令和4年)3月30日に、食品添加物の不使用表示に関するガイドラインを定めました。注意すべき表示を10の類型に分け、適切でない例を具体的に示しています。

たとえば、何を加えていないのかが分からない単なる「無添加」の表示や、「人工」「合成」「化学」「天然」といった用語を使った表示は、実際よりも優良・有利だと誤認させるおそれがあるとされました。事業者には、包材の切り替えに必要な期間を考慮して、令和6年(2024年)3月末までに表示を見直すことが求められました。既存パッケージの「無添加」表現が残っていないか、改めて点検しておきたいところです。

違反・回収と監督の仕組み

表示が基準に合っていない場合、まず必要なのは正しい表示への是正です。安全に関わる表示の誤りでは、商品の自主回収(リコール)に発展することもあります。アレルゲンの表示漏れや期限の誤りは、消費者の健康に直結するため特に慎重な確認が必要です。

食品表示制度を所管するのは消費者庁で、表示が適正かどうかの監督や、事業者への指示・命令などの権限を持ちます。違反の内容によっては行政処分の対象となり、回収費用やブランド毀損の負担も生じます。表示は「作って終わり」ではなく、原材料や仕入れ先が変わるたびに見直す運用が、結果的に最もコストの低い守り方になります。

キーワード解説

食品表示法

食品の表示に関する包括的・一元的な制度を定めた法律です。旧JAS法・食品衛生法・健康増進法の表示規定を統合し、2015年4月1日に施行されました。消費者の安全確保と、消費者が自主的・合理的に食品を選べる機会の確保を目的としています。

食品表示基準

食品表示法に基づき、表示の具体的なルールを定めた内閣府令(平成27年内閣府令第10号)です。加工食品・生鮮食品・添加物の区分ごとに、表示する項目と方法を定めています。事業者が日々参照する実務上の中心になる基準です。

消費期限

定められた方法で保存した場合に、安全に食べられる期限を示す表示です。弁当や惣菜、生菓子など、品質が急速に劣化しやすい食品に表示します。期限を過ぎたものは食べないほうがよい、という安全側の目安です。

賞味期限

定められた方法で保存した場合に、品質が十分に保たれ、おいしく食べられる期限(best-before)を示す表示です。スナック菓子や缶詰など、比較的傷みにくい食品に表示します。期限を過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではありません。なお食品ロス対策として、賞味期限が長い商品で日付を年月だけにまとめる「年月表示」も進められています。

栄養成分表示

熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量を表示する制度で、容器包装に入った一般用加工食品と添加物に原則義務付けられています。塩分はナトリウムを食塩相当量に換算して示します。2020年4月1日から完全に適用されています。

原料原産地表示

加工食品について、重量割合が一番多い原材料の産地を表示する制度です。2017年9月1日に新制度が始まり、経過措置を経て、国内製造の全ての加工食品が対象になりました。主原料の調達先が変わると表示の更新が必要になります。

食品添加物

保存性や品質、風味などを目的に食品の製造・加工で使われる物質で、使用したものは原材料と区分して表示します。「無添加」「不使用」といった表示には、消費者の誤認を防ぐためのガイドラインが定められています。

いま確認しておきたいこと

まず、自社が扱う加工食品が「容器包装に入った一般用の加工食品」に当たるかを確かめましょう。当たる場合は、名称・原材料名・添加物・内容量・期限表示・保存方法・栄養成分・原料原産地・アレルゲン・事業者名がそろっているかを、消費者庁の早わかりガイドと突き合わせて点検します。

次に、期限表示が消費期限と賞味期限のどちらでよいか、栄養成分の5項目が正しい順で入っているか、主原料の産地表示が現在の仕入れと一致しているかを見直します。「無添加」などの表現が残っていれば、不使用表示のガイドラインに照らして言い換えを検討しましょう。判断に迷う点は、消費者庁の食品表示基準や早わかりガイド、お住まいの地域の食品表示の窓口でご覧ください。商品の安全と販売の安定の両方を守るうえで、表示の定期点検を仕入れフローに組み込むことをおすすめします。あわせて食品流通の商慣行の見直しにも目を向けると、表示と取引の両面から自社の運用を整えられます。