食品の期限表示は、賞味期限(おいしく食べられる目安)と消費期限(安全に食べられる期限)の2種類があり、書き方も対象食品も法律で決まっています。ルールの土台は食品表示法と内閣府令の食品表示基準で、容器包装に入った加工食品には原則どちらかの期限を表示する義務があります。この記事では、賞味期限と消費期限の違い、表示義務と「記載がないと違法になるのか」、そして「誰がどうやって期限を決めるのか(試験+安全係数)」までを、仕入れ・棚入れ・PB(プライベートブランド)開発の現場で判断できる形に整理します。

まず押さえたい要点

期限表示のルールは食品表示法と、その下にある内閣府令の食品表示基準が定めています。容器包装に入った加工食品には、傷みやすさに応じて消費期限賞味期限のどちらかを表示する義務があり、その期限を決めるのは製造者などの表示責任者です。期限表示まわりの全体像を一枚で示します。

項目内容
誰が期限を「決める」のは製造者などの表示責任者(食品関連事業者)。表示する責任を負うのも、製造・加工・輸入・販売を行う食品関連事業者
何を容器包装に入った加工食品に、消費期限または賞味期限を表示。あわせて名称・原材料名・添加物・内容量・保存方法・栄養成分・原料原産地・アレルゲン・事業者名なども義務表示
どう決める製造者などが理化学試験・微生物試験・官能検査で品質を確かめ、得られた期間に1未満の「安全係数」を掛けて科学的・合理的に設定
書き方「賞味期限」「消費期限」の文言+年・月・日の順。賞味期限まで3か月を超える食品は「年・月」だけの表示も可
記載がないと容器包装入りの加工食品で期限表示が必須なのに無ければ基準違反。ただしバラ売りや砂糖・食塩など、表示が省略・免除される食品もある
次の一歩消費者庁の早わかりガイドと食品表示基準で、自社商品の期限表示の区分・書き方・有無を一つずつ照合する

食品表示法とは|三つの法律を一つにまとめた制度

食品表示法は、それまで別々の法律にまたがっていた食品表示のルールを一つに束ねた法律です。具体的には、品質に関する旧JAS法(農林物資の規格化等に関する法律)、安全・衛生に関する食品衛生法、栄養に関する健康増進法という三つの法律の表示規定を統合し、包括的で一元的な表示制度を作りました。事業者にとって参照すべき条文が分散していた状態を解消し、消費者にとっても表示の意味が分かりやすくなる狙いがあります。

この法律は2015年(平成27年)4月1日に施行されました。表示の具体的なルールは食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)が担い、加工食品・生鮮食品・添加物のそれぞれについて、表示すべき項目と方法を定めています。施行時には5年間の経過措置が置かれ、旧ルールでの表示は2020年3月31日まで認められました。そして2020年4月1日から新制度が完全に施行され、後述する栄養成分表示などが原則義務になっています。

加工食品の主な義務表示項目

加工食品の一括表示の見本と、クッキー・ベーコンの記入例。名称・原材料名・添加物・内容量・賞味期限・保存方法・製造者などの欄を示す
消費者庁「早わかり食品表示ガイド」(PDF):加工食品の一括表示の見本と、名称・原材料名・添加物・期限表示・保存方法・製造者などを書き込んだ記入例。

容器包装に入って販売される一般用の加工食品には、食品表示基準に基づき複数の項目を表示します。仕入れ商品やPB商品のパッケージを点検するときは、次の項目がそろっているかを基準に確認します。

  • 名称:その商品の内容を表す一般的な名前を表示します。
  • 原材料名:使った原材料を、重量の多い順に表示します。
  • 添加物:使用した食品添加物を、原材料と区分して表示します。
  • 原料原産地名:国内で製造した加工食品について、一番重量の多い原材料の産地を表示します。
  • 内容量:重さや体積、個数などを表示します。
  • 消費期限または賞味期限:傷みやすさに応じてどちらかを表示します。
  • 保存の方法:常温・要冷蔵・要冷凍など、品質を保つための保存条件を表示します。
  • 栄養成分の量および熱量:原則として栄養成分表示を行います。
  • 食品関連事業者の氏名または名称および住所:表示に責任を持つ事業者を表示します。
  • アレルゲン:特定原材料を含む場合は、原材料や添加物ごとに表示します。

これらは並べる位置や枠(一括表示)の作り方にもルールがあります。とくにPB商品を企画する小売事業者は、製造を委託する場合でも表示の最終責任が自社に及ぶ場面があるため、表示案の段階で基準と照らし合わせておきましょう。

賞味期限と消費期限の違い

消費期限と賞味期限の定義・対象食品の例の比較表と、品質の劣化と期限の関係を示すイメージ図
消費者庁「期限表示(消費期限・賞味期限)」(PDF):消費期限と賞味期限の定義・対象食品の比較と、品質の劣化と期限の関係を示すイメージ図。

期限表示は読者からの問い合わせも多く、現場で混同されやすい項目です。賞味期限消費期限は意味が異なり、表示する食品も分かれます。定義は食品表示基準第2条で定められています。

区分 意味(定義) 主な対象食品 期限を過ぎたら 表示方法
賞味期限 定められた方法で保存した場合に、品質が十分に保たれ、おいしく食べられる期限(best-before) スナック菓子、缶詰、レトルト食品、乾めんなど比較的傷みにくい食品 すぐ食べられなくなるわけではなく、品質と状態を見て判断する 「賞味期限」+年・月・日。製造日から3か月を超える食品は「年・月」だけの表示も可
消費期限 定められた方法で保存した場合に、腐敗・変敗などで安全性を欠くおそれがないと認められる期限 弁当、調理パン、惣菜、生菓子、生めんなど傷みやすい食品 安全性が保てなくなるため、食べないほうがよい 「消費期限」+年・月・日(短い期限のため年月日が原則)

分け方の目安は「傷みやすさ」です。製造・加工してから品質が急速に劣化し、おおむね5日程度を目安に劣化が早い食品は消費期限、それより日持ちする食品は賞味期限を表示します。なお、かつての「5日で区別する」という旧来の考え方は用語の定義に基づくものではないとして、現在は推奨されていません。実際にどちらを表示するかは、後述のとおり製造者などが食品の特性をふまえて判断します。

消費者庁は「賞味期限はおいしいめやす」という考え方を広め、賞味期限を過ぎた食品をすぐ捨てる必要はないと呼びかけています。期限はいずれも、未開封で表示どおりに保存した場合の目安です。開封後は表示の期限にかかわらず早めに食べるよう案内すると、店頭でのトラブルを防ぎやすくなります。期限の正しい理解は、後述する食品ロスの削減とも直結します。

期限表示の義務と根拠|記載がないと違法か

期限表示の根拠は食品表示法食品表示基準です。容器包装に入れられた加工食品には、消費期限または賞味期限を表示することが原則として義務付けられています。したがって、表示義務のある加工食品に期限の記載がなければ、基準違反となり是正の対象になります。包材の印字がかすれて読めない、ロット番号に紛れて期限が分かりにくいといった場合も、適正な表示とはいえません。

一方で、「記載がない=必ず違法」ではありません。次のような食品は、期限表示の省略・免除が認められています。

  • 品質の劣化が極めて少ない食品:でん粉、チューインガム、冷菓、砂糖、アイスクリーム類、食塩、うま味調味料、酒類、清涼飲料水(一部)、氷などは期限表示が不要です。
  • 容器包装に入れずに売る食品:店頭で量り売り・バラ売りする、その場で包む対面販売の惣菜など、あらかじめ容器包装されていない食品は期限表示の義務の対象外です(このため、店頭のケーキなどに期限が印字されていなくても違法とは限りません)。

つまり「賞味期限が書かれていないのは違法か」という問いには、商品が容器包装入りの加工食品で表示義務の対象なら原則必要、上記の省略・免除に当たるなら不要、というのが答えになります。自社商品がどちらに当たるかを、まず確認しておきましょう。

期限の決め方|誰がどうやって決めるのか

賞味期限・消費期限を決めるのは、行政ではなく、その食品をいちばんよく知る製造者などの「表示責任者」です。食品表示基準の定義に従い、食品の特性を十分に考慮したうえで、科学的・合理的な根拠をもって自ら設定します。具体的には、保存試験を行って次のような客観的な指標で品質を確かめます。

  • 理化学試験:水分・酸価・過酸化物価・pHなど、数値で測れる品質の指標を調べます。
  • 微生物試験:一般生菌数や大腸菌群など、安全性に関わる菌の増え方を調べます。
  • 官能検査:色・香り・味・食感など、人の感覚で品質の変化を評価します。

消費期限は安全性に直結するため微生物試験などの結果を優先し、賞味期限は理化学試験や官能検査など品質の試験結果を優先して設定する、という整理になっています。そして、こうした試験で確かめた「品質が保てる期間」をそのまま期限にするのではなく、ばらつきや流通中の温度変化を見込んで1未満の係数(安全係数)を掛けるか、一定の日数を差し引いて、少し短めの期限を設定するのが一般的です。安全係数は表示責任者が食品の特性に応じて自ら決めるもので、業界では品質が安定した乾燥品などで0.8前後、菌が増えやすく傷みやすい食品では0.7前後といった値が用いられてきました。レトルト食品や缶詰など、加圧加熱殺菌で安全性が十分に担保されている食品では、安全係数を考慮しない場合もあります。消費者庁は食品ロス削減の観点から、安全係数は無理のない範囲で「1に近づける」ことが望ましいとしています。

年月表示への切替え(賞味期限が長い食品)

賞味期限は「賞味期限」の文言に続けて、年・月・日をこの順に表示するのが基本です。ただし、製造または加工の日から賞味期限までの期間が3か月を超える食品は、日を省いて「年・月」だけで表示できます。年月で表示する場合の期限は、その月の末日と解されます(実際の期限が月の途中なら、安全側に倒してその前月までを表示します)。缶詰・乾めん・スナック菓子のような日持ちのよい食品で多く使われ、賞味期限が近いロットを束ねて管理しやすくなるため、食品ロスの削減にもつながる書き方です。「製造日から○○日」といった相対表記は認められていません。

栄養成分表示の義務化

栄養成分表示の表示例。熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の5項目を決まった順番で表示することを示す
消費者庁「食品表示基準における栄養成分表示」(PDF):熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の5項目を決まった順番で示す栄養成分表示の表示例。

かつて任意だった栄養成分表示は、食品表示法のもとで原則義務になりました。容器包装に入った一般用の加工食品と添加物には、栄養成分の量と熱量の表示が必要です。5年間の経過措置を経て、2020年4月1日からこのルールが完全に適用されています。

義務となる項目は、熱量(エネルギー)・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の5つで、この順番で表示します。塩分はナトリウム量そのものではなく、消費者が分かりやすいように食塩相当量に換算して表示する点が特徴です。新商品を出すときや成分が変わったときは、この5項目の数値を必ず見直しましょう。

原料原産地表示の拡大

原材料の産地への関心が高まるなか、原料原産地表示の対象が大きく広がりました。新しい制度は2017年9月1日に始まり、2022年3月31日までの経過措置を経て、国内で製造する全ての加工食品が対象になっています。表示するのは、重量の割合が一番多い原材料の産地です。

産地が国産なら国名(または都道府県名など)を、輸入なら原産国を表示します。複数の国にまたがる場合は重量の多い順に国名を並べ、対象原材料そのものが加工食品のときは製造地を表示するなど、書き方にいくつかの型があります。仕入れ先の切り替えで主原料の産地が変わると表示も変える必要があるため、調達の変更と表示の更新をセットで管理しましょう。

添加物の不使用表示の見直し

「無添加」「○○不使用」といった表示は商品の訴求に使われやすい一方で、消費者の誤認を招きやすい面があります。消費者庁は2022年(令和4年)3月30日に、食品添加物の不使用表示に関するガイドラインを定めました。注意すべき表示を10の類型に分け、適切でない例を具体的に示しています。

たとえば、何を加えていないのかが分からない単なる「無添加」の表示や、「人工」「合成」「化学」「天然」といった用語を使った表示は、実際よりも優良・有利だと誤認させるおそれがあるとされました。事業者には、包材の切り替えに必要な期間を考慮して、令和6年(2024年)3月末までに表示を見直すことが求められました。既存パッケージの「無添加」表現が残っていないか、改めて点検しておきたいところです。

違反・回収と監督の仕組み

表示が基準に合っていない場合、まず必要なのは正しい表示への是正です。安全に関わる表示の誤りでは、商品の自主回収(リコール)に発展することもあります。アレルゲンの表示漏れや期限の誤りは、消費者の健康に直結するため特に慎重な確認が必要です。

食品表示制度を所管するのは消費者庁で、表示が適正かどうかの監督や、事業者への指示・命令などの権限を持ちます。違反の内容によっては行政処分の対象となり、回収費用やブランド毀損の負担も生じます。表示は「作って終わり」ではなく、原材料や仕入れ先が変わるたびに見直す運用が、結果的に最もコストの低い守り方になります。

キーワード解説

食品表示法

食品の表示に関する包括的・一元的な制度を定めた法律です。旧JAS法・食品衛生法・健康増進法の表示規定を統合し、2015年4月1日に施行されました。消費者の安全確保と、消費者が自主的・合理的に食品を選べる機会の確保を目的としています。

食品表示基準

食品表示法に基づき、表示の具体的なルールを定めた内閣府令(平成27年内閣府令第10号)です。加工食品・生鮮食品・添加物の区分ごとに、表示する項目と方法を定めています。事業者が日々参照する実務上の中心になる基準です。

消費期限

定められた方法で保存した場合に、安全に食べられる期限を示す表示です。弁当や惣菜、生菓子など、品質が急速に劣化しやすい食品に表示します。期限を過ぎたものは食べないほうがよい、という安全側の目安です。

賞味期限

定められた方法で保存した場合に、品質が十分に保たれ、おいしく食べられる期限(best-before)を示す表示です。スナック菓子や缶詰など、比較的傷みにくい食品に表示します。期限を過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではありません。なお食品ロス対策として、賞味期限が長い商品で日付を年月だけにまとめる「年月表示」も進められています。

栄養成分表示

熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量を表示する制度で、容器包装に入った一般用加工食品と添加物に原則義務付けられています。塩分はナトリウムを食塩相当量に換算して示します。2020年4月1日から完全に適用されています。

原料原産地表示

加工食品について、重量割合が一番多い原材料の産地を表示する制度です。2017年9月1日に新制度が始まり、経過措置を経て、国内製造の全ての加工食品が対象になりました。主原料の調達先が変わると表示の更新が必要になります。

食品添加物

保存性や品質、風味などを目的に食品の製造・加工で使われる物質で、使用したものは原材料と区分して表示します。「無添加」「不使用」といった表示には、消費者の誤認を防ぐためのガイドラインが定められています。

よくある質問(FAQ)

賞味期限の記載がないのは違法ですか?

容器包装に入った加工食品で、期限表示が義務付けられているものに記載がなければ基準違反です。ただし、砂糖・食塩・チューインガム・氷など品質の劣化が極めて少ない食品や、店頭で量り売り・バラ売りする容器包装されていない食品は、期限表示が省略・免除されるため、記載がなくても違法とは限りません。

賞味期限と消費期限の違いは何ですか?

賞味期限は「おいしく食べられる」目安で、缶詰やスナック菓子など比較的傷みにくい食品に表示します。期限を過ぎてもすぐ食べられなくなるわけではありません。消費期限は「安全に食べられる」期限で、弁当や惣菜など傷みやすい食品に表示し、過ぎたものは食べないほうがよいとされています。

賞味期限・消費期限は誰が決めるのですか?

行政ではなく、その食品を製造・加工する事業者(表示責任者)が、自ら科学的・合理的に決めます。理化学試験・微生物試験・官能検査で品質を確かめ、得られた期間に1未満の安全係数を掛けるなどして、少し短めの期限を設定します。

賞味期限の印字には法的根拠がありますか?

あります。食品表示法と食品表示基準が、表示する文言・年月日の順序・文字の大きさなどを定めています。「賞味期限」「消費期限」の文言を付け、年・月・日の順に、原則8ポイント以上(表示可能面積が小さい場合は5.5ポイント以上)で、はっきり読めるように表示する必要があります。

納品期限・販売期限(3分の1ルール)も食品表示法のルールですか?

いいえ。賞味期限・消費期限は食品表示法・食品表示基準で定められた「表示」のルールですが、製造から賞味期限までを3分割して納品期限・販売期限を区切る「3分の1ルール」は、食品業界の商慣行であって法律上の表示義務ではありません。納品期限・販売期限の見直しについては食品流通の商慣行(納品期限・販売期限など)の記事で扱っています。

いま確認しておきたいこと

まず、自社が扱う加工食品が「容器包装に入った一般用の加工食品」に当たるかを確かめましょう。当たる場合は、名称・原材料名・添加物・内容量・期限表示・保存方法・栄養成分・原料原産地・アレルゲン・事業者名がそろっているかを、消費者庁の早わかりガイドと突き合わせて点検します。

次に、期限表示が消費期限と賞味期限のどちらでよいか、賞味期限が3か月を超える商品で年月表示を使えるか、印字がかすれず読める状態か、栄養成分の5項目が正しい順で入っているか、主原料の産地表示が現在の仕入れと一致しているかを見直します。「無添加」などの表現が残っていれば、不使用表示のガイドラインに照らして言い換えを検討しましょう。判断に迷う点は、消費者庁の食品表示基準や早わかりガイド、お住まいの地域の食品表示の窓口でご覧ください。商品の安全と販売の安定の両方を守るうえで、表示の定期点検を仕入れフローに組み込むことをおすすめします。なお、賞味期限から納品期限・販売期限を決める「3分の1ルール」など取引上の商慣行は表示とは別の論点で、食品流通の商慣行の記事で扱っています。表示と取引の両面から見直すと、自社の運用を整えやすくなります。