地理的表示(GI)保護制度は、地域ならではの特性を持つ農林水産物や食品の名称を、地域の知的財産として国が守る仕組みです。登録すると、その名称とGIマークを登録団体の構成員だけが使えるようになり、他の産品との差別化や模倣品対策につながります。登録すると受けられるメリット、対象になる産品と要件、誰がどう申請するか、費用や相談窓口までを、産地で判断できる順にまとめます。

制度の要点

項目 内容
誰が 生産者・加工業者でつくる生産者団体。法人格は不問で、ブランド協議会なども可
何を 産地と結び付いた名称とGIマークの独占的な使用権。無断使用は国が取締り
対象 食用の農林水産物・飲食料品は全て。非食用は政令指定の13品目。酒類・医薬品等は対象外
費用 登録免許税9万円(登録後に納付)。更新料なし
相談先 GIサポートデスク(食品需給研究センター)で無料相談

GI(地理的表示)保護制度とは

地理的表示(GI:Geographical Indication)は、その地域ならではの自然的・人文的・社会的な要因の中で長年育まれてきた品質や社会的評価などの特性を持つ産品の名称です。名称を聞けば産地と産品の特性がわかる、という結び付きを、地域の知的財産として国が保護します。根拠となるのは地理的表示法で、農林水産大臣が産品を登録します。

登録産品は全国でおよそ170に上ります(令和8年7月時点)。神戸ビーフ、夕張メロン、米沢牛、市田柿、みやぎサーモン、八女伝統本玉露、日本茶など、畜産物から野菜・果実・茶・水産物・加工食品まで幅広く登録されています。地理的表示の考え方は1900年代初頭のヨーロッパで生まれ、WTOのTRIPS協定でも知的財産の一つに位置づけられ、世界100か国を超える国で保護されています。

登録すると受けられるメリット

最大の利点は、登録した名称とGIマークを、登録団体の構成員とその産品を扱う人だけが使えるようになる点です。それ以外の人が名称や紛らわしい表示を使うことは原則として規制され、模倣品を排除してブランド価値を守り、高められます。

不正使用があったとき、生産者団体が自分で訴訟を起こさなくても、国(農林水産大臣)が取り締まります。権利を守る手間とコストを抑えられるのは、生産者にとって大きな安心です。地域と結び付いた品質・製法・評判・ものがたりといった強みが「見える化」され、GIマークと合わせて商談や取引の説明・証明がしやすくなります。

実際に、みやぎサーモンは登録後に認知度が上がり、売上価格が登録前の2倍以上に上昇しました。市田柿は中国産との差別化のために登録し、輸出額を大きく伸ばしています。GI産品を使った外食・小売・観光とのコラボ商品も広がり、地域経済への波及効果が期待できます。ブランド力を高めた産品は、産直ECなどでの直接販売とも相性がよく、価格の主導権を握りやすくなります。

海外でも守られます。EUや英国など日本と相互保護の取決めがある国では、日本のGI名称が現地でも保護され、模倣品を相手国当局が取り締まります。GIマークは約20の主要な輸出先国・地域で商標登録されており、輸出時に本物の日本産品であることを示す目印になります。海外展開を見据える産地は、農産物・食品の輸出の取り組みと合わせて活用できます。

対象になる産品と主な要件

対象は、食用の農林水産物と飲食料品であれば原則すべてです。精米・肉・きのこ・野菜・果実・魚介類のほか、めん類・惣菜・菓子・調味料などの加工食品も含まれます。日本茶が新たに登録されたように、は八女伝統本玉露をはじめ登録が多い品目です。非食用は木材・精油・畳表・生糸など政令で指定された13品目が対象で、酒類・医薬品・医薬部外品・化粧品・再生医療等製品は対象外です。

登録されるには、次の要件を満たす必要があります。

  • 特定の場所・地域を生産地とし、生産地ならではの自然的・人的要因と結び付いた品質・社会的評価などの特性があること
  • その特性が確立していること(概ね25年以上の生産実績。国内外での周知性などを勘案して短縮できる場合があります)
  • 名称から産地と産品の特性を正しく特定できること
  • 普通名称でないこと、既に商標登録されていないこと(商標権者がGI登録に同意している場合を除きます)

誰が申請できるか

申請できるのは、生産業者が組織する団体(生産者団体)です。産品が加工品の場合は、加工業者でつくる団体になります。生産者が個人だけで申請することはできず、団体を組織することが前提です。

団体に法人格は必要ありません。生産業者が加盟するブランド協議会のような団体でもよく、生産業者以外の人が加入していても構いません。ただし、正当な理由なく加入を拒んだり難しい条件を付けたりせず、加入の自由を規約などに定めておく必要があります。同じ産品について複数の団体を登録することもできます。あわせて、産品の特性を確保するための生産行程管理業務の規程を作成・遵守でき、そのための経理や人員の体制があることが求められます。

GI登録の申請の流れ

申請の準備は、まず地域の話し合いから始まります。進め方に迷ったら、後述のGIサポートデスクに無料で相談できます。

  1. 地域で話し合い、産品が満たすべき基準(名称・生産地・特性・生産の方法・生産地との結び付き・生産実績)をまとめた明細書を作ります。
  2. 産品の特性を守るための生産行程管理業務規程を作成し、生産者団体を組織します。
  3. 申請書と添付書類(明細書・生産行程管理業務規程など)を農林水産大臣に提出します。
  4. 審査を受けます。内容に不備があれば、補正期間内に補正書を提出します。
  5. 申請が公示され、公示後3か月間は誰でも意見を提出できます。
  6. 学識経験者からの意見聴取を経て、登録の可否が判断されます。
  7. 登録され、登録免許税9万円を納付します。

登録にかかる費用

費用は、登録後に納める登録免許税9万円です。更新料や更新手続きはなく、一度登録すれば効力が続きます。ただし、団体の名称変更や生産行程管理業務規程の変更などは届出が必要で、生産行程管理業務も続けなければなりません。申請の準備段階での相談は、GIサポートデスクで無料で受けられます。

登録後にできること・守るべきこと

登録すると、産品そのものだけでなく、包装・広告・インターネット販売サイト・外食メニューなどにも名称とGIマークを使えます。GI登録産品を原料にした加工品にも使えますが、その場合は地理的表示やGI登録産品と一体的に表示するなどの条件があります。

一方で、登録団体には守るべき役割があります。生産行程管理業務として、構成員の生産が明細書に適合するよう手順・体制を定めて周知し、記録を残し、違反が判明したときは是正措置をとります。農林水産大臣は定期の立入検査で、この管理が適切に機能しているかを確認します。管理が不適当な場合や名称・GIマークの不正使用があった場合は措置命令が出され、従わないときは罰則や登録の取消しの対象になります。

地域団体商標との違い

産品の名称を守る制度には、特許庁が所管する地域団体商標もあります。どちらも名称を保護しますが、根本の考え方が異なります。産品を取り巻く状況に応じて、どちらかを選ぶことも、両方を組み合わせて使うこともできます。

項目 地理的表示(GI) 地域団体商標
対象 農林水産物・飲食料品等(酒類等を除く) 全ての商品・サービス
申請主体 生産・加工業者を含む団体(法人格不問、協議会等も可) 事業協同組合・商工会・商工会議所・NPO等に限る
主な要件 生産地の要因と特性が強く結び付くこと 需要者に広く認識されていること(周知性)
不正への対応 行政が監視・取締り 権利者が自己で権利行使(損害賠償請求も可)
海外での保護 相互保護国で保護 各国に個別登録が必要

キーワード解説

地理的表示法

正式には「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」といいます。地域と結び付いた産品の名称を国が登録して保護し、不正使用を取り締まる根拠となる法律です。

生産行程管理業務

登録団体が、構成員の生産を明細書の基準に適合させるために行う指導・検査・記録などの管理業務です。この業務が適切に行われているかを、農林水産大臣が定期的にチェックします。

よくある質問

個人でもGI登録できますか

生産者個人だけでは申請できません。生産者や加工業者でつくる団体(生産者団体)が申請します。法人格は問われず、加入の自由を定めたブランド協議会のような団体でも申請できます。まずは同じ産地の生産者と団体づくりから始めます。

登録の更新は必要ですか

更新手続きや更新料はありません。一度登録すれば効力が続きます。ただし、団体の名称変更や生産行程管理業務規程の変更などは届出が必要で、怠ると罰則の対象になります。生産行程管理業務も続ける必要があります。

登録にはどのくらい費用がかかりますか

登録後に登録免許税9万円を納めます。更新料はかかりません。申請の準備段階では、GIサポートデスク(食品需給研究センター)に無料で相談できます。

どんな産品が登録されていますか

神戸ビーフ、夕張メロン、米沢牛、市田柿、みやぎサーモン、八女伝統本玉露、日本茶など、全国でおよそ170産品が登録されています(令和8年7月時点)。畜産物・野菜・果実・茶・水産物・加工食品まで幅広く対象です。最新の登録産品は農林水産省の登録産品一覧で確認できます。

GI登録すると海外でも守られますか

EUや英国など、日本と相互保護の取決めがある国では、日本のGI名称が現地でも保護され、模倣品を相手国当局が取り締まります。GIマークは約20の主要な輸出先国・地域で商標登録されており、輸出時に本物の日本産品であることを示せます。