野菜をつくる農家・産地にとって、消費者が野菜をどれだけ食べるかは売り先と単価に直結します。国内の野菜の消費量は長期的に減り、1日350gの目標に対して直近の平均は約259グラム、成人のおよそ7割が届いていません。この記事では、消費が細ることがなぜ産地の経営問題なのかを押さえたうえで、農家・産地が需要をつくる4つの方法と、使える国の支援、そして8月31日の野菜の日をどう活かすかを、次の一手を選べる形で整理します。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる方 | 野菜をつくる農家・産地、JA、直売所や産直に取り組む生産者 |
| いま起きていること | 野菜の消費量が長期的に減少。1日350gの目標に対し直近の平均は約259グラム、成人の約7割が未達 |
| 需要をつくる方法 | 加工・業務用への契約出荷、学校給食・地産地消、直売所・産直、野菜サポーター登録 |
| 使える国の支援 | 国産野菜供給体制づくり支援事業、持続的生産強化対策事業(時代を拓く園芸産地づくり支援)など |
| 野菜の日 | 8月31日。産地・直売所が消費者接点をつくる機会。農林水産省がWebシンポジウムを開催 |
| 相談先 | 農林水産省 農産局園芸作物課、都道府県・地方農政局、JA、各事業の公募案内 |
野菜の消費はどれだけ減っているか
健康づくりの指標である健康日本21は、成人が1日に食べたい野菜の量を350グラム以上としています。これに対し、直近の国民健康・栄養調査では成人1人1日当たりの平均は258.7グラムにとどまり、目標より約91グラム不足しています。成人のおよそ7割が目標に届いていません。とくに若い世代の摂取量が少なく、この10年で男性が有意に減り、女性も減少傾向にあります。
消費量は、農家・産地にとっては需要そのものです。国内で野菜を食べる量が減れば、出荷先の需要が細り、価格の下落や売り先の縮小につながります。だからこそ消費拡大は、消費者側の健康の話であると同時に、産地の経営を左右する問題です。目標と現状の差は次のとおりです。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 1人1日当たりの目標 | 350グラム以上(緑黄色野菜約120グラム+その他約230グラム) |
| 直近の平均摂取量 | 258.7グラム(男性268.6グラム・女性250.3グラム) |
| 目標との差 | 約91グラム不足 |
| 目標を達成している割合 | 成人の約3割(約7割が未達) |
野菜の需給や価格がこの先どう動くかは、野菜をめぐる情勢の解説で生産量・輸入・価格の動きとあわせて確認できます。
農林水産省の野菜を食べようプロジェクト
消費拡大の旗振り役が、農林水産省の野菜を食べようプロジェクトです。1日350グラムの目標と現状のギャップを埋めるため、消費者に野菜を食べる習慣づくりを促し、産地や企業の取組をつなぐ役割を担っています。
取組の柱は、企業・団体が参加する野菜サポーター制度、摂取量を測って気づきを与える見える化、お手頃な野菜とメニューの情報発信です。プロジェクトには現在214の企業・団体が野菜サポーターとして参加し、外食・食品製造・小売・大学・農協など幅広い業種が名を連ねています。農林水産省は毎週の小売価格調査に合わせて「今週のお手頃野菜」を紹介し、毎月の卸売価格の見通しも公表しています。産地や農業者も会員として参加でき、ロゴマークを使って自分たちの発信に活かせます。
農家・産地が野菜の需要をつくる方法
需要は待っていても増えません。農家・産地が自分で需要をつくる方法は、大きく4つあります。自分の野菜の売り先が家庭消費に偏っていないかを起点に、近い順から手をつけると選びやすくなります。
加工・業務用に契約で出す
いちばん伸びしろが大きいのが、カット野菜・冷凍・惣菜・外食・中食といった加工・業務用の需要です。主要な野菜の国産割合は、家庭消費用では97%を保つ一方、加工・業務用では平成2年から令和2年の30年間で20ポイント下がって68%となり、約3割を輸入が占めています。国産に置き換える余地が大きく残っているということです。実需者と契約取引を結べば、数量と価格を見通して計画的に出荷できます。産地と実需者の契約の目安として、農林水産省は加工・業務用野菜の標準的な契約取引のガイドラインを示しています。加工・業務用の国産化と協議会の動きは、加工・業務用野菜の国産化の解説で詳しく整理しています。
学校給食・地産地消で地元の需要をつくる
学校給食は、地元の野菜を安定して使ってもらえる需要先です。地場産物の利用を増やす取組は交付金で後押しされており、栄養教諭や自治体の給食担当、JA、直売所と組めば、規格や数量の調整を前提にした継続的な取引につながります。納入の始め方や使える支援は、学校給食に地場野菜を納入する方法で確認できます。
直売所・産直で消費者に直接届ける
直売所や産直の通販は、消費者との接点を自分でつくる方法です。鮮度や生産者の顔で選ばれやすく、市場出荷より手取りが残りやすい売り方でもあります。野菜の日など季節の話題に合わせた店頭やSNSの発信は、新しい買い手を呼び込むきっかけになります。販路ごとの手取りや始め方は、JAを通さず野菜を売る販路の選び方で比較できます。
野菜サポーターに登録して発信する
農林水産省の野菜サポーターには、企業だけでなく、農協・産地・大学・自治体・NPOなど多様な組織が登録しています。サポーターは、食育教室や収穫体験、摂取量の測定会、野菜を使った商品開発、マルシェや食育フェアでのPRなどに取り組みます。産地としてこうした活動に加わると、消費者に自分たちの野菜を知ってもらう機会が増えます。登録は、実施規約を確認したうえで申請書を農林水産省の農産局園芸作物課に提出する流れで、規約に基づきロゴマークを使えます。
需要づくりに使える国の支援
需要をつくる取組には、産地の体制づくりや実需者との連携を後押しする国の支援を組み合わせて使えます。自分の産地の課題が周年での安定供給なのか、加工・業務用への転換なのか、流通の合理化なのかを見極めて、近いメニューから公募要領をたどると選びやすくなります。
周年で安定して供給できる体制づくりには、国産野菜供給体制づくり支援事業が使えます。取組の内容や交付の仕組みは、国産野菜の供給体制づくり支援の解説で確認できます。加工・業務用への対応や作柄の安定に向けては、持続的生産強化対策事業の「時代を拓く園芸産地づくり支援」があり、生産者・中間事業者・実需者が連携して高温対策や作柄安定技術を導入する取組を支援します。出荷や流通の効率化には青果物流通合理化支援があります。補助率・対象経費・募集期限は年度ごとに変わるため、最新の内容は各事業の公募案内でご確認ください。
野菜の日(8月31日)を需要づくりに活かす
8月31日は「野菜の日」です。「8(や)3(さ)1(い)」の語呂合わせにちなみ、野菜をもっと知って食べてほしいという願いから、1983年に全国青果物商業協同組合連合会など9団体が定めました。夏野菜の出盛りと重なり、消費者の関心が野菜に集まりやすい日です。
農林水産省は毎年この日に合わせてWebシンポジウムを開き、直近は約660名が参加しました。産地や直売所にとっては、店頭フェアやSNSの発信、レシピの提案、給食や地元イベントとの連携で消費者接点をつくる好機です。単発の催しで終わらせず、契約取引や直売の常設の売り先づくりにつなげると、需要づくりの効果が続きます。
いま確認しておきたいこと
需要づくりは、自分の売り先の点検から始めると動きやすくなります。次の点を確認しましょう。
- 自分の野菜の売り先が、需要の減っている家庭消費に偏っていないか。
- 加工・業務用や学校給食など、契約で計画的に出せる先があるか。
- 直売所・産直など、消費者に直接届けて手取りを残せる接点があるか。
- 野菜サポーター登録や野菜の日のイベントで、自分たちの野菜を知ってもらう機会をつくれるか。
- 周年供給や実需者連携に使える国の支援の公募時期を、都道府県・地方農政局やJAに確認したか。
よくある質問
野菜の日はいつで、なぜ8月31日なのですか
8月31日です。「8(や)3(さ)1(い)」の語呂合わせにちなみ、野菜をもっと知って食べてほしいという願いから、1983年に全国青果物商業協同組合連合会など9団体が定めました。夏野菜が多く出回る時期で、農林水産省もこの日に合わせて消費拡大のシンポジウムを開いています。
農家や産地も野菜サポーターに登録できますか
できます。野菜サポーターには企業のほか、農協・産地・大学・自治体・NPOなど多様な組織が登録しています。実施規約を確認したうえで申請書を農林水産省の農産局園芸作物課に提出すると登録でき、規約に基づいてロゴマークを使えます。食育教室や測定会、商品開発、マルシェでのPRなどを通じて、消費者に自分たちの野菜を知ってもらえます。
加工・業務用向けに野菜を出荷するとどんな利点がありますか
加工・業務用は国産割合が68%まで下がり、約3割を輸入が占めています。国産に置き換える余地が大きいため、実需者と契約取引を結べば、数量と価格を見通して計画的に出荷できます。相場に左右されにくく、まとまった需要を確保しやすいのが利点です。契約の目安として、農林水産省が標準的な取引のガイドラインを示しています。
野菜の1日350グラムという目標の根拠は何ですか
健康づくりの指標である健康日本21が、生活習慣病の予防のために成人が1日に食べたい野菜の量を350グラム以上と定めています。内訳の目安は、緑黄色野菜が約120グラム、その他の野菜が約230グラムです。直近の調査では成人平均が258.7グラムで、目標より約91グラム不足しています。
キーワード解説
野菜を食べようプロジェクト
1日350グラムの野菜摂取をめざし、農林水産省が消費拡大を進める取組です。企業・団体が参加する野菜サポーター制度、摂取量の見える化、お手頃野菜やメニューの情報発信が柱で、産地や農業者も会員として参加できます。
野菜サポーター
野菜を食べようプロジェクトに賛同し、消費拡大に取り組む企業・団体です。現在214の会員が参加し、外食・食品製造・小売・大学・農協・自治体・NPOなど業種は多岐にわたります。食育教室、測定会、商品開発、イベント出展、給食での食育などを行います。
加工・業務用野菜
カット野菜・冷凍・惣菜・外食・中食などに使われる、家庭消費用と区別される野菜です。国産割合は家庭消費用の97%に対し68%まで下がり、約3割を輸入が占めます。実需者との契約取引で計画的に出荷できる、国産化の余地が大きい需要先です。
健康日本21
厚生労働省が進める国民の健康づくりの指標です。生活習慣病の予防のため、成人が1日に食べたい野菜の量を350グラム以上と定めています。野菜の消費拡大の目標値の根拠になっています。