加工・業務用に野菜を作る産地は、その取組に10アール当たり15万円の定額助成を受けられます。輸入に押されてきた加工・業務用野菜の国産化を進めるための助成で、対象となるのは作付拡大、加工適性や高温耐性の高い品種への切り替え、大型コンテナや予冷庫の導入など。産地と実需者が組んで取り組むことが条件です。売り先とつながるためのマッチング支援も、別に利用できます。対象となる方が、何にどれだけ受けられて、どこに相談し、令和8年度はいつ動くか。産地・農家が知りたい順に整理します。

概要

項目内容
対象となる方加工・業務用や周年安定供給に取り組む野菜産地・農業法人・JA。連携する実需者(加工・外食・中食などの買い手)・中間事業者
何に作付拡大、加工適性・高温耐性品種、大型コンテナ・予冷庫、排水・保水などの作柄安定技術の導入
受けられる額産地の取組に10アール当たり15万円の定額(国産野菜周年安定供給強化事業)
対象品目たまねぎ・にんじん・ねぎ・ブロッコリー・ばれいしょ・キャベツ・レタスなど、輸入が多い加工・業務用の野菜
窓口地域のJA・都道府県・地方農政局。交付は農畜産業振興機構を通じて行われます
詳しくは令和8年度の公募が見込まれます。公募要領は農林水産省・農畜産業振興機構が公表します
加工・業務用野菜の国産シェア奪還に向けた持続的生産強化対策事業の概要図。3つの事業(1.国産野菜周年安定供給強化事業=加工適性品種や大型コンテナ・作柄安定技術の導入に10アール当たり15万円の定額助成、2.国産野菜供給体制づくり支援事業=生産者と実需者を繋ぐマッチングの全国的支援、3.青果物流通体制構築推進事業=出荷規格の見直し等の実証)を示す。令和8年度予算概算要求額1,093百万円(前年度375百万円)、事業目標は国産切替量32万トン(令和12年度まで)。事業の流れは、国から民間団体等・ALIC(農畜産業振興機構)を経て定額または2分の1以内で交付される図解と、マッチングイベント開催やフォローアップ、出荷規格簡素化のイメージを含む。
農林水産省「令和8年度予算概算要求の主要事項(持続的生産強化対策事業のうち 加工・業務用野菜の国産シェア奪還)」(事業概要)

対象となる方は

産地向けの助成を受けられるのは、加工・業務用野菜の国産化と周年安定供給に取り組む産地・事業者です。次のいずれかに当てはまる方は、検討する値打ちがあります。

  • カット・冷凍・惣菜・外食向けなど、加工・業務用の需要に応えて作付けを増やしたい産地・農業法人・JA
  • 輸入が多い品目で、加工適性の高い品種や大型コンテナを入れて生産・流通のやり方を変えたい産地
  • 高温や渇水で作柄が振れる品目に、排水・保水対策や地温安定対策などの作柄安定技術を取り入れたい産地
  • 定時定量の納入先を確保したい生産者、国産の安定調達先を探す実需者・中間事業者

助成を受けられる前提は、産地と実需者が連携した取組であることです。個々の農家が単独で申し込むより、JAや部会単位で実需者との連携計画を組む形が基本になります。売り先とつなぐマッチング支援(国産野菜供給体制づくり支援事業)を運営するのは全国規模の協議会で、産地・農家はそのイベントや伴走支援を利用できます。

どれだけ受けられるか

対象となる方は、産地の取組に10アール当たり15万円の定額を受けられます。作付面積に応じて積み上がるので、まとまった面積で取り組むほど受け取れる額は大きくなります。令和8年度は、高温や渇水の被害を避ける取組が優先されます。猛暑で作柄が読みにくい品目なら、高温耐性品種への切り替えや地温安定・排水対策で支援を受けられます。

支援の種類主な対象の取組受けられる補助
産地の取組への助成
(国産野菜周年安定供給強化事業)
輸入が多い品目の作付拡大、加工適性・高温耐性の高い品種の導入、農業用機械・大型コンテナの導入、予冷庫の利用、排水・保水などの作柄安定技術10アール当たり15万円の定額。高温・渇水の被害回避・軽減の取組を優先
マッチング支援
(国産野菜供給体制づくり支援事業)
マッチングイベントの開催、生産者・実需者のニーズ把握、契約取引や品質・規格の伴走支援事業を担う協議会への定額補助。産地・農家は利用者として参加できる
出荷・流通体制づくり
(青果物流通体制構築推進事業)
実需者の受け入れに合わせた出荷規格の見直し、外装・包装サイズの標準化などの実証取組を行う民間団体等への定額・2分の1以内の補助

15万円の助成は、現場の作付けに直接受け取れるお金です。マッチング支援は、産地に単価で配るものではなく、売り先と出会う場と伴走を整えるための補助です。性格が違うので、両方をあわせて活用できます。

国産野菜供給体制づくり支援事業とは

国産野菜の周年安定供給に向けて、生産者と実需者をつなぐマッチングを全国規模で進める事業です。担い手は公募で選ばれた全国規模の協議会で、補助は定額、上限は1,000万円以内です。協議会の仕事は、販路を広げたい生産者と仕入先を探す実需者が出会うイベントの開催、双方のニーズを踏まえた引き合わせ、成立後の契約取引の進め方や品目ごとの品質・規格の助言、そこで見えた課題の共有です。令和7年度はマッチングの調整を15件以上行うことが成果目標で、事業期間は1年でした。産地・JA・実需者は、ここを入口に加工・業務用の取引を始めやすくなります。

実施主体と事業の流れ

産地向けの助成(国産野菜周年安定供給強化事業)は、国から農畜産業振興機構を経て、取組を行う民間団体等へ定額で交付されます。産地・農家は、この民間団体等が運営する枠組みの中で支援を受けられます。野菜の価格安定や供給に関わる業務はこの機構が広く担っており、加工・業務用の周年安定供給に関わる助成も同じ仕組みです。

マッチングを担う国産野菜供給体制づくり支援事業と、出荷規格の見直しを実証する青果物流通体制構築推進事業は、国から採択先へ直接補助されます。産地・農家は、どちらも事業の利用者として活用できます。

令和8年度の動き

これらの補助は、加工・業務用野菜の国産シェア奪還を束ねる対策の一部です。令和8年度の概算要求では、このシェア奪還対策に1,093百万円が計上され、前年度の375百万円から約3倍に増えました。国は、加工・業務用の国産切替量を令和12年度までに32万トンへ増やす目標を掲げています。予算が厚くなったぶん、産地向け助成・マッチング支援とも令和8年度の公募が見込まれます。

令和7年度は、マッチング支援を担う協議会の公募が2月に締め切られ、産地向け助成も機構を通じて募集されました。公募は年度替わりの前後に集中します。申請を考える方は、農林水産省と農畜産業振興機構の公募ページを早めに確認し、産地と実需者の連携や対象品目の作付計画を先に固めておきましょう。なお、同じ取組内容で他の補助金と重複して受けることはできません。

よくある質問

10アール当たり15万円はどんな取組で受けられますか

作付拡大、加工適性・高温耐性の高い品種の導入、農業用機械・大型コンテナの導入、予冷庫の利用、排水・保水などの作柄安定技術が対象です。これは産地向けの国産野菜周年安定供給強化事業の単価で、対象となる方は作付面積に応じて定額で受けられます。マッチングを担う国産野菜供給体制づくり支援事業は、これとは別の協議会向けの定額補助です。

対象になる品目を教えてください

輸入が多い、または需要が拡大している加工・業務用の野菜が中心です。たまねぎ、にんじん、ねぎ、ほうれんそう、スイートコーン、えだまめ、ブロッコリー、ごぼう、トマト、セルリー、にんにく、しょうが、さといも、えんどう、キャベツ、レタス、かぼちゃ、だいこんなどが加工・業務用の支援対象に挙げられています。品目によっては出荷時期の要件が付きます。

個人の農家でも申請できますか

産地向けの助成は、産地と実需者が連携した取組への支援で、農畜産業振興機構を通じて運営される枠組みの中で受けられます。マッチングを担う国産野菜供給体制づくり支援事業の実施主体は、全国規模の協議会に限られます。個々の農家は、協議会のイベントや伴走支援を利用できます。まずは地域のJAや都道府県の窓口に、参加できる枠組みがあるか相談しましょう。

令和8年度の公募はいつですか

執筆時点で令和8年度の公募要領は確定していません。令和7年度はマッチング支援の協議会公募が2月に締め切られています。年度替わりの前後に公募が出る傾向があるため、農林水産省と農畜産業振興機構の公募ページをこまめに確認しましょう。

次の一歩

はじめに、自分の産地でどの取組に支援を使えそうかを書き出します。輸入が多い品目の作付けを増やすのか、加工適性品種や大型コンテナを入れるのか、高温・渇水に備える作柄安定技術を入れるのか。次に、農林水産省の「持続的生産強化対策事業」と農畜産業振興機構の公募ページをブックマークし、令和8年度の公募が出たら対象品目・単価・期限を公募要領で確かめます。売り先を広げたい方は、加工・業務用のマッチングを担う協議会のイベント情報を探して参加しましょう。産地全体の流れは加工・業務用野菜の国産化の解説記事、産地の生産力強化に使える別の補助は産地生産基盤パワーアップ事業の解説記事もあわせてご覧ください。

キーワード解説

実需者

野菜を仕入れて使う買い手のことです。加工・業務用では、カット野菜・冷凍野菜の加工業者、惣菜・弁当の中食、飲食店などの外食、量販店・スーパーの小売などが当てはまります。この補助は、産地が実需者と連携して定時定量の供給に取り組むことを後押しします。

国産野菜供給体制づくり支援事業

加工・業務用野菜の国産シェア奪還に向け、国産野菜の周年安定供給に資する生産者・実需者のマッチングなどを全国規模で進める事業です。担い手は公募で選ばれた全国規模の協議会で、補助は定額。マッチング機会の創出、伴走型支援、成果の公表に取り組みます。産地の作付けに単価で配る助成とは別物で、売り先と出会う場づくりを支えます。

農畜産業振興機構

農畜産業の振興を担う独立行政法人で、ALICとも呼ばれます。野菜の価格安定や供給に関わる業務を広く担い、加工・業務用野菜の周年安定供給を後押しする産地向けの助成も、国からこの機構を経て民間団体等へ交付されます。野菜の価格下落に備える公的な仕組みは野菜価格安定制度の解説記事で扱っています。

契約取引

生産者と実需者が、品目・数量・規格・価格・期間などの条件を事前に取り決めて行う取引です。加工・業務用野菜では定時定量の供給と安定した価格が求められるため、契約取引が取引の基本になります。マッチング後の伴走支援では、契約取引の進め方や品目ごとの品質・規格の助言を受けられます。