ブロッコリーは全国の作付面積が17,300ヘクタールまで伸びた、いま数少ない増えている野菜です。就農や転作の候補にするときに知りたいのは、10アールでどれだけ残るのか、食べていける規模はどこからか、初期費用はどれくらいかの3点です。この記事では長野県・新潟県・鳥取県の10アール指標と、香川県・鳥取県の経営モデルを並べ、必要な面積と初期投資、水稲と組み合わせる形、指定野菜になって変わった価格下落時の補償までを整理します。

対象となる方ブロッコリーで新規就農を考えている方、水稲や露地野菜にブロッコリーを足したい方
10アールの所得62,021円から144,208円(鳥取県の秋冬どり、長野県の初夏まき)
10アールの時間109.4時間から113.3時間。時間当たりの所得は1,318円(長野県の指標)
食べていける規模ブロッコリー150アールで農業所得340万円(香川県の新規就農モデル)
初期投資9,890千円(同モデルの初期的資本整備額)。鳥取県の5ヘクタール規模の試算では14,000千円
要る機械トラクター、管理機、動力噴霧機、被覆資材
価格が下がったとき指定野菜価格安定対策事業で、平均価格の90%を下回った分の原則90%を補てん

10アールの所得は6万円から14万円

県の経営指標でブロッコリーを見ると、10アール当たりの農業所得は作型と産地で倍以上の開きがあります。粗収益は長野県の初夏まきが528,120円、鳥取県の秋冬どりが297,600円です。

県・作型収量農業所得労働時間
長野県・初夏まき1,080キログラム144,208円(所得率27.3%)109.4時間
新潟県・夏まき900キログラム110千円(所得率34.0%)110時間
鳥取県・秋冬どり900キログラム62,021円(所得率21%)113.3時間

差を作っているのは単価です。長野県の初夏まきは1キログラム489円、新潟県の夏まきは330円。夏場に出せる高冷地や、産地が少ない時期に当てられる作型ほど手取りが厚くなります。新潟県は春まきの所得を160千円程度としており、同じ県でも作型で5割違ってきます。

10アールの所得だけを見ると、野菜のなかでは低い側です。この数字で判断を止めず、次の労働時間と合わせて見てください。

労働時間の短さが本当の強み

鳥取県の経営試算は、同じ表に他品目が並んでいます。10アール当たりの労働時間を比べると差は明確です。

品目10アールの所得労働時間
ブロッコリー(秋冬どり)62,021円113.3時間
白ねぎ(秋冬・砂地)263,453円520.8時間
ホウレンソウ(ハウス6作)541,726円1,628時間
トマト(大玉・雨よけ秋冬)455,985円690.0時間
イチゴ(高設)990,410円1,776.0時間

ブロッコリーは白ねぎの5分の1、ハウスほうれんそうの14分の1の時間で作れます。長野県の指標は時間当たりの所得も出しており、ブロッコリーの1,318円はねぎ1,266円、雨よけほうれんそう1,143円、レタス1,176円、たまねぎ1,088円を上回ります。10アールの所得が小さくても、1時間働いて残る額は上位に入る品目です。ほうれんそう農家の始め方と読み比べると、同じ葉物でも経営の作り方が正反対だと分かります。

時間が短ければ、1人で持てる面積は広くなります。ブロッコリーは10アールを深く掘るのではなく、ヘクタール単位に広げて所得を作る品目です。

150アールで340万円に届きます

香川県が新規就農者の目標として示している経営モデルに、ブロッコリーを主軸にした型があります。

経営の形(経営面積)農業所得初期的資本整備額労働時間
ナス15アール+ブロッコリー150アール(150アール)340万円9,890千円2,819時間
水稲100アール+アスパラガス10アール+ブロッコリー130アール(170アール)257万円19,803千円2,285時間

ブロッコリーを主軸にした前者は、露地野菜の新規就農モデルのなかで初期投資が1千万円を切ります。イチゴの養液栽培20アールが35,186千円、キュウリの施設が17,366千円ですから、施設型に比べて入口が軽い品目です。どちらのモデルもセル成型苗を使い、定植と出荷調製は支援サービスを利用する前提で組まれています。

鳥取県の試算では、初夏どり100アールと秋冬どり400アールの5ヘクタール規模で農業所得2,880千円、想定初期投資は14,000千円です。初夏どり1ヘクタールと秋冬どり3.7ヘクタールの型では所得2,444千円、初期投資11,000千円になります。面積を2倍にしても所得が2倍にならないのは、規模が大きいほど雇用や出荷経費が増えるためです。

水稲と組むと所得が積み上がります

鳥取県の個別経営体の試算に、水稲15ヘクタールと秋冬どりブロッコリー5ヘクタールを組んだ型があります。粗収益33,040千円、経営費27,087千円、農業所得5,953千円です。稲作だけの水稲・飼料用米型が所得4,334千円から5,059千円ですから、転作先にブロッコリーを入れた分が上積みになっています。

ブロッコリーは水稲と作業が重なりにくい品目です。新潟県は水稲との労力競合が少ない点と、水稲育苗ハウスを冬期間に活用できる点を導入のメリットに挙げています。転作の受け皿としてはねぎ農家の始め方も候補になりますが、労働時間は白ねぎが5倍近く要ります。

弱点もあります。収穫適期の幅が短いため、一定時期に収穫作業が集中します。時期によっては花らいの大きさや形状、品質が落ちることも。夏場の高温による出荷量の減少は産地共通の課題で、高温耐性品種や生育予測システムの開発が進められている段階です。

作型と単価の関係

ブロッコリーは春・夏秋・冬の3つの種別に分かれます。東京都中央卸売市場の旬別の入荷量と価格では、入荷が細る7月から9月に単価が上がり、入荷が集中する11月から12月は下がります。夏に出せる産地ほど有利になるのは、この価格差が理由です。

ブロッコリーの種別と対象出荷期間の表。春ブロッコリーは4月から6月15日、夏秋ブロッコリーは6月から11月15日、冬ブロッコリーは10月16日から3月。あわせて旬別の入荷量と価格のグラフ、夏播き冬春どり・春播き夏どり・冬春播き春夏どりの作型図
種別・対象出荷期間と主な作型(出典:農林水産省「ブロッコリーの指定野菜への追加および令和11年度ブロッコリーの需要及び供給の見通しの作成方針について」)

産地は北海道から九州まで広がり、東京市場には夏は北海道や長野などの高冷地から、冬は関東以西の温暖な地域から周年で入ります。7月の入荷は北海道が74%を占め、12月は熊本・香川・愛知が中心です。自分の地域がどの時期を担う産地なのかで、狙う作型が決まります。

指定野菜になって補償が厚くなりました

2026年4月、ブロッコリーは指定野菜に加わり、指定野菜は15品目になりました。出荷数量が7.7万トンから15.7万トンへ約2倍、1人当たりの購入数量が540グラムから1,619グラムへ約3倍に増えたことが背景です。

生産者にとって変わるのは、価格が下がったときの補てんの条件です。

項目特定野菜だったとき指定野菜になってから
保証基準額平均価格の80%平均価格の90%
最低基準額平均価格の55%平均価格の60%
補てん率80%原則90%(産地区分に応じて70〜90%)
拠出割合(国:都道府県:生産者)2:1:13:1:1
産地の要件特定産地・作付面積おおむね5ヘクタール指定産地・作付面積20ヘクタール以上、出荷割合3分の2以上

国の拠出割合が上がるぶん、生産者が積む金額の割合は下がります。ただし補給金を受けられるのは、指定産地で生産して卸売市場へ出荷する場合だけです。産地の面積要件は20ヘクタールと重く、届かない地域では特定産地としての事業が受け皿になります。自分の産地が指定されているかは野菜指定産地の一覧と要件で確かめてください。補給金の計算と加入の手続きは野菜価格安定制度で扱っています。

ブロッコリーの作付面積は令和5年で17,300ヘクタール、出荷量は156,400トン。北海道3,230ヘクタール、香川1,290ヘクタール、埼玉1,210ヘクタール、長野1,150ヘクタール、長崎1,040ヘクタール。産地リレーは7月が北海道中心、12月は熊本・香川・愛知中心
作付面積・出荷量の推移と産地リレー(出典:農林水産省「ブロッコリーの指定野菜への追加および令和11年度ブロッコリーの需要及び供給の見通しの作成方針について」)

作付面積はこの10年で13,800ヘクタールから17,300ヘクタールへ、出荷量は125,100トンから156,400トンへ増えました。平成24〜26年の平均と比べると、作付面積では長崎(173%)・香川(146%)・長野(142%)、出荷量では徳島(175%)・香川(155%)の伸びが大きくなっています。全般に野菜の作付面積が減るなかで、ブロッコリーだけが逆を向いています。

始めるまでの流れ

  1. 自分の地域がどの時期を担う産地かを確かめる。夏出しができる高冷地か、冬から春に出す温暖地かで作型が決まる。
  2. 市町村・普及指導センターで県の経営指標と作型別の収量・単価を確認し、目標所得から必要面積を逆算する。10アールの所得6万円から14万円が目安になる。
  3. トラクター、管理機、動力噴霧機、被覆資材をそろえる。セル成型苗を使い、定植と出荷調製の支援サービスを使えるかを産地に確認する。
  4. 出荷先を決める。卸売市場出荷なら価格安定制度の対象になり、加工・業務用なら契約取引の枠組みを検討する。
  5. 補給金を受けるため、共同出荷組織を通じて出荷するか、一定規模以上の生産者として農畜産業振興機構に登録する。供給計画の策定が加入の要件になる。

よくある質問

ブロッコリーだけで生計を立てられますか

香川県の新規就農モデルでは、ブロッコリー150アールにナス15アールを足した形で農業所得340万円です。10アール当たりの所得は6万円から14万円と低いため、1ヘクタール以上の面積が前提になります。労働時間は10アール当たり110時間前後と短く、面積を広げやすい品目です。

初期費用はどれくらい要りますか

香川県の新規就農モデルの初期的資本整備額は9,890千円です。鳥取県の5ヘクタール規模の試算では想定初期投資が14,000千円、4.7ヘクタール規模では11,000千円になります。露地の品目なので、イチゴの養液栽培(35,186千円)やキュウリの施設(17,366千円)に比べると入口は軽くなります。

指定野菜になると誰でも補給金を受けられますか

受けられるのは指定産地で生産し、卸売市場へ出荷する生産者です。指定産地は作付面積20ヘクタール以上、出荷割合3分の2以上が要件で、産地単位で農林水産大臣が指定します。加えて、共同出荷組織を通じた出荷か、一定規模以上の生産者としての登録が必要です。

キーワード解説

指定野菜

全国的に流通し、特に消費量が多い野菜として国が定めるもの。2026年4月にブロッコリーが加わり15品目になりました。価格が著しく下がったときに生産者補給金が交付されます。

保証基準額

補給金が発動する基準になる価格。指定野菜では過去6年間の卸売市場価格を基礎に算出した平均価格の90%です。平均販売価額がこれを下回ると、下回った分の一部が補てんされます。

指定産地

出荷の安定を図るため集団産地として形成する必要があるとして農林水産大臣が指定する生産地域。葉茎菜・根菜類は作付面積20ヘクタール以上、出荷割合3分の2以上が要件です。