すももは、ももとぶどうの陰に隠れがちな品目です。ところが県の経営指標で並べてみると、時間当たりの所得は巨峰や日本なしより上に来ます。手間の割に戻りが大きい品目で、ももとの組み合わせで作業の山をずらす使い方もできます。一方で、同じすももの仲間であるプルーンは、ほとんど同じ労働時間で所得が3分の2以下になります。この記事では、すももで10アール当たりどれだけ残るのか、プルーンとどちらを選ぶべきか、植えてから収穫までの数年をどの支援でつなぐのかを、長野県と山梨県、農林水産省の資料をもとに整理します。金額はいずれも目安で、産地・品種・販売先によって変わります。

概要

項目内容
対象となる方 すももで就農する方、ももやぶどうに組み合わせる品目を探している果樹農家
所得の目安 10アール当たり57.6万円(所得率42.6%)。時間当たり1,989円
収量・単価の目安 10アール当たり2,500キロ、1キロ541円
労働時間 10アール当たり296時間(うち家族289.6時間)
植えてから収穫まで 果樹未収益期間支援は改植・新植の翌年から4年分。この間の管理経費に22万円
使える支援 改植17万円・ジョイント栽培への改植33万円・一斉改植56万円(いずれも10アール当たり)
詳しくは 都道府県の農業改良普及センター、JA、産地の果樹協議会

すももの所得は10アール当たり57.6万円

長野県の経営指標では、すももの10アール当たりの生産量を2,500キロ、単価を1キロ541円と置いています。粗収益は135.3万円で、そこから経営費77.7万円を引いた57.6万円が農業所得です。所得率は42.6%になります。

労働時間は296時間で、うち289.6時間が家族労働です。1人でも回せる範囲に収まる水準です。

項目10アール当たり
生産量2,500キロ
単価1キロ541円
粗収益1,352,500円
経営費776,621円
農業所得575,879円(所得率42.6%)
労働時間296.0時間(うち家族289.6時間)
1時間当たり農業所得1,989円

時間当たりの戻りは果樹のなかで上位です

同じ指標には果樹31の作型が並んでいます。すももの1,989円という時間当たり所得は、その中で上から9番目です。産地の主力であるぶどうの巨峰やなしの二十世紀より上に来ます。

作目10アール当たり所得労働時間1時間当たり
シャインマスカット(露地)146.1万円307.0時間4,760円
ナガノパープル(露地)110.9万円307.0時間3,612円
あかつき(もも)69.0万円233.0時間2,960円
すもも57.6万円296.0時間1,989円
巨峰(露地)34.0万円311.0時間1,094円
プルーン(雨よけ)32.0万円305.0時間1,070円
二十世紀(なし)33.7万円325.0時間1,037円
幸水(なし)18.8万円277.0時間677円
おうとう(雨よけ)21.1万円469.5時間491円

同じ手間でも、プルーンとは1.8倍違います

すももとプルーンは同じスモモ属で、栽培の作業もよく似ています。労働時間も296時間と305時間でほとんど変わりません。それでも所得は57.6万円と32.0万円に分かれます。

差がつくのは収量です。プルーンは単価が1キロ649円ですももより高いのに、収量は1,600キロしかありません。すももは単価541円でも2,500キロ取れるため、粗収益で31万円の差がつきます。

経営費で取り返せるかというと、そうもいきません。プルーンの経営費は71.9万円で、すももの77.7万円より5.8万円低いだけです。粗収益の差がほぼそのまま所得の差になります。

プルーンは加工需要があり、生食用の市場に左右されにくい品目です。それでも10アールから残る額で比べるなら、すももを主軸に置いたほうが有利になります。

全国の作付は2,740ヘクタール、産地は山梨に集中

すももの全国の栽培面積は2,740ヘクタールで、果樹のなかで10番目です。生産量は17,100トン、生産額は100億円で12番目です。みかんやりんごが1,700億円台であることを考えると、ごく小さい品目です。

そのうち840ヘクタールが山梨県で、生産量は日本一です。ぶどう、もももあわせて生産量日本一という産地で、県の農業生産額1,240億円のうち果実が770億円、実に62%を占めます。

ただしその産地でも、すももは縮んでいます。10年前と比べると生産量が7,240トンから5,090トンへ30%減り、栽培面積も918ヘクタールから840ヘクタールへ8%減りました。面積の減り方より生産量の減り方が大きい点が特徴です。

ここから単収を逆算すると、10アール当たり約600キロになります。長野県の指標が置く2,500キロの4分の1です。栽培面積には植えたばかりの未成園や、手が入らなくなった園地も含まれるため、産地平均は指標よりかなり低く出ます。就農の計画をつくるときは、指標の2,500キロを「管理の行き届いた成園の目標」として読み、初年度から届く数字とは考えないほうが安全です。

面積で組み立てるときの姿

山梨県は、目標とする経営の姿を面積と品種の組み合わせで示しています。すももを主軸にした形では、露地すももと露地ぶどうを合わせた125アールで粗収益2,598万円、農業所得1,538万円を置いています。

内訳は、ソルダム10アール、サマーエンジェル15アール、棚仕立ての貴陽20アール、太陽15アール、種なし巨峰25アール、シャインマスカット40アールです。すももを4品種に分けているのは、収穫の時期をずらして人手の山を平らにするためです。

ももと組む形もあります。もも早生50アール・中生60アール、すももの中生20アール・晩生15アール、未成園5アールの計150アールで、粗収益2,462万円・農業所得1,022万円です。すももが35アールしかない構成でも、ももの収穫が終わったあとの作業として組み込めます。

植えてから収穫までを、どの支援でつなぐか

すももは植えてすぐ収穫できる品目ではありません。その空白期間に使えるのが果樹未収益期間支援で、10アール当たり22万円を初年度に一括で受けられます。改植・新植の翌年から4年分(1年当たり5.5万円)をまとめた額です。

植え替えそのものにも支援があります。慣行の樹形なら10アール当たり17万円(新植は15万円)、なし・もも・すもも・かき等のジョイント栽培へ切り替える場合は33万円(新植32万円)です。園地をまとめて一斉に改植し、その間は別の園地で営農を続ける形なら56万円が出ます。

果樹経営支援対策事業と果樹未収益期間支援事業の支援単価一覧。ジョイント栽培(なし、もも、すもも、かき等)33万円、慣行樹形のりんご等の主要果樹17万円、未収益期間22万円、一斉改植56万円などが記載されている。
改植・新植の支援単価と、収穫のない期間の管理経費への支援。すももはジョイント栽培の対象品目に含まれる。出典:農林水産省「果樹農業生産力増強総合対策

このほか、園内道の整備や傾斜の緩和、防霜ファン、モノレールなどの小規模な園地整備は2分の1以内で支援されます。近年は高温障害への対策も対象で、遮光ネットや細霧冷房の導入が2分の1以内です。手が入らなくなった園地の伐採や植林も、産地内の合意にもとづく取組であれば10アール当たり8万円が出ます。品目別の単価と申請の順序は果樹の改植・新植に使える補助金にまとめてあります。

就農して最初の数年は、この支援だけでは生活費まで届きません。経営開始資金などの就農時の資金は新規就農者育成総合対策を先に確認して、収穫が始まるまでの資金計画に組み込みましょう。

山梨県は輸入解禁を受けた独自の支援を持っています

米国産のにほんすももの輸入が解禁されたことを受けて、山梨県はすももに絞った補助金を用意しました。輸入品に負けない品質を安定して出せる体制をつくるためのもので、国の事業では拾えない部分を埋める設計になっています。

わかりやすいのが改植の面積要件です。国の果樹経営支援対策事業は地続き2アール未満の小規模な改植を対象にしませんが、県の事業はそこを1アール当たり39,000円の定額で支援します。内訳は改植の経費が17,000円、収穫が始まるまでの管理費用が22,000円です。国の10アール当たり17万円・22万円と同じ単価を、小さな面積でも使える形にしたものです。

対象になるのは産地が振興する優良品種への改植で、貴陽・太陽・皇寿などが挙がっています。同一品種への植え替えも対象です。ただし改植後8年間は栽培を続けることが条件になります。

もうひとつが裂果を防ぐ雨よけ施設です。補助率は2分の1以内、上限は1平方メートル当たり3,500円で、申請には複数の見積が必要になります。園芸施設共済などへの加入が必須で、14年間の栽培継続も求められます。窓口は果樹産地協議会(事務局はJA)から市町村を経て県へ上がる流れなので、まずJAか農務事務所に相談するのが早い道です。

すももを始めるまでの流れ

  1. すもも単独で組むのか、ももやぶどうと組み合わせるのかを決めます。収穫期をずらせる品目構成にすると人手の山が平らになります。
  2. 品種を選びます。産地が振興する品種は改植支援の対象になりやすいため、JAや産地協議会で振興品種を確認します。
  3. 園地を探します。既存園地を引き継ぐ場合は、改植が必要な樹齢か、面積が地続きで2アール以上あるかを見ます。
  4. 収穫が始まるまでの資金計画を立てます。果樹未収益期間支援と就農時の資金を、いつ入金されるかまで書き出します。
  5. 改植・新植の支援を申請します。ジョイント栽培に切り替えるなら単価が上がるので、樹形の選択と同時に決めます。
  6. 裂果対策の雨よけを入れるなら、県の事業と共済加入の条件を先に確認します。施設は導入後の継続年数が条件になります。

よくある質問

すもも農家の収入はどれくらいですか

長野県の経営指標では、10アール当たりの農業所得が57.6万円です。生産量2,500キロ・単価541円の粗収益135.3万円から経営費77.7万円を引いた額で、所得率は42.6%になります。労働時間は296時間で、時間当たりの所得は1,989円です。山梨県が示す経営の姿では、すももとぶどうを合わせた125アールで農業所得1,538万円を置いています。

すももとプルーンはどちらが手取りがよいですか

10アール当たりで比べるとすももです。労働時間は296時間と305時間でほぼ同じですが、所得は57.6万円と32.0万円になります。プルーンは単価が1キロ649円と高いものの収量が1,600キロで、すももの2,500キロに届きません。加工需要があり市場価格に振られにくい利点はあるため、収入の柱をすももに置き、プルーンを補助的に組む形が現実的です。

すももは植えてから何年で収穫できますか

数年かかります。国の果樹未収益期間支援は、改植・新植を実施した年の翌年から4年分の管理経費を支援する設計になっており、10アール当たり22万円を初年度に一括で受けられます。この4年という期間が、収穫が本格化するまでのおおよその目安になります。園地をまとめて一斉に改植する場合は、成園になるまでの5年分として56万円が支援されます。

小さい面積の植え替えは補助の対象外ですか

国の果樹経営支援対策事業では、地続きで2アール未満の改植は対象になりません。ただし山梨県は、そこを埋める県独自の補助を持っています。1アール当たり39,000円の定額で、改植の経費17,000円と未収益期間の管理費用22,000円の合計です。ほかの県でも同様の上乗せがある場合があるため、産地の果樹協議会かJAで確認しましょう。

裂果を防ぐ雨よけに補助はありますか

山梨県では、すももの裂果防止を目的とした雨よけ施設の整備が補助対象です。補助率は2分の1以内、上限は1平方メートル当たり3,500円です。申請には複数の見積が必要で、園芸施設共済などへの加入と14年間の栽培継続が条件になります。施設を入れる前に、共済の加入手続きと合わせて計画を立ててください。

キーワード解説

ジョイント栽培

隣り合う樹の枝を接いでつなぎ、1本の主枝のように仕立てる方法です。なし、もも、すもも、かきなどで使われ、樹が早く成園の姿になるため未収益の期間を短くできます。作業も直線的な樹列で進められるため省力になります。改植の支援単価も慣行樹形の10アール当たり17万円に対して33万円と高く設定されています。

裂果

果実の表面が割れる障害です。すももでは収穫前の降雨で果実が急に水を吸ったときに起こりやすく、割れた果実は商品にならないため、その年の収入が直接減ります。雨よけ施設で果実に雨を当てないことが対策になり、山梨県はこの目的の施設整備を補助の対象にしています。

果樹未収益期間支援

改植・新植をしたあと、収穫が始まるまでの幼木の管理経費(農薬代・肥料代など)を支援する制度です。単価は10アール当たり22万円で、改植・新植を実施した年の翌年から4年分(1年5.5万円)をまとめて初年度に一括で交付されます。改植の支援とは別に受けられます。

出典:長野県「作目別経営指標一覧表」(すもも・プルーンほか果樹31作型の生産量・単価・粗収益・経営費・農業所得・所得率・労働時間・1時間当たり農業所得)、山梨県「山梨県果樹農業振興計画」(すももの生産量・栽培面積の推移、県の果実生産額、目標とする経営類型の面積・品種・粗収益・農業所得)、山梨県「すもも産地競争力強化支援事業」(小規模改植の補助額、優良品種、雨よけ施設の補助率と上限、申請の流れと条件)、農林水産省「果樹をめぐる情勢」(すももの栽培面積・生産量・生産額と品目別順位)、農林水産省「果樹農業生産力増強総合対策」(改植・新植の支援単価、ジョイント栽培、果樹未収益期間支援、一斉改植、小規模園地整備、高温障害対策、放任園地の発生防止)。所得・単価・単収・労働時間は県が示す指標の値で、産地・品種・栽培技術の習熟度・販売先によって異なります。補助の単価・要件は年度と県によって変わるため、就農計画づくりの段階で都道府県の農業改良普及センター・JA・産地の果樹協議会と最新の情報をご確認ください。