とうもろこしや大豆油かすの値段が上がると、配合飼料の価格も上がります。畜産経営の費用の多くを飼料が占めるため、この上昇をそのまま受けると赤字に直結します。それを薄めるのが配合飼料価格安定制度です。どういうときに補てんが出て、自分はどれだけ積み立てるのか。そして、加入していないと何が使えなくなるのかを整理します。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる方 | 配合飼料を使う畜産経営者(酪農・肉用牛・養豚・養鶏など) |
| 通常補てん | 当該四半期の輸入原料価格が直前1年の平均を上回ったときに発動 |
| 異常補てん | 直前1年の平均の115%を超えたときに、通常補てんを補完して発動 |
| 生産者の積立て | 1トン当たり800円。配合飼料メーカーは1,600円を積み立てる |
| 直近の補てん単価 | 通常補てんが1トン当たり2,950円、異常補てんは0円 |
| 税の扱い | 積立金は税制上の特例で損金に算入できる |
| 加入していないと | 畜産関係の補助事業に参加できない(クロスコンプライアンス) |
| 詳しくは | 加入する基金、地域の農協・飼料メーカー、都道府県の畜産主務課 |
補てんは2段階で出る
配合飼料価格安定制度は、値上がりの度合いに応じて2段階で補てんする仕組みです。ふだんの値動きは民間の積立てでつくる通常補てん基金が受け止め、急激な高騰は国も入る異常補てん基金が補完します。基準になるのは配合飼料の販売価格ではなく輸入原料価格です。とうもろこし、こうりゃん、大豆油かす、大麦、小麦の5原料の平均価格で判定します。
通常補てんは直前1年の平均を上回れば発動
当該四半期の平均輸入原料価格が、直前1年(直前4四半期)の平均である基準輸入原料価格を上回った場合に発動します。上回った額が補てんの限度になります。財源は民間の積立てで、生産者が1トン当たり800円、配合飼料メーカーが1,600円を負担します。基金は全農系の全国配合飼料供給安定基金、専門農協系の全国畜産配合飼料価格安定基金、商系の全日本配合飼料価格畜産安定基金の3つに分かれ、生産者はいずれかを通じて加入します。
異常補てんは1.15倍を超えたとき
当該四半期の輸入原料価格が、直前1年の平均と比べて115%を超えた場合に発動します。財源は国と配合飼料メーカーが2分の1ずつ拠出し、公益社団法人配合飼料供給安定機構が管理します。異常補てんが発動する場合は、総補てん額から異常補てん額を差し引いた額が通常補てん額になります。急騰の局面では国費が入る分だけ手厚くなる設計です。
直近の補てん単価
直近の四半期(令和8年度第1四半期)は、平均輸入原料価格が1トン当たり45,920円、基準輸入原料価格が42,928円でした。差額は2,992円で、通常補てん単価は1トン当たり2,950円、異常補てん単価は0円です。基準の115%には届かなかったため、異常補てんは発動していません。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 平均輸入原料価格(当該四半期) | 45,920円/トン |
| 基準輸入原料価格(直前1年) | 42,928円/トン |
| 差額 | 2,992円/トン |
| 通常補てん単価 | 2,950円/トン |
| 異常補てん単価 | 0円/トン |
単価は四半期ごとに決まり、農林水産省の制度ページで公表されます。自分の経営でどれだけ戻るかは、この単価に購入した配合飼料の数量を掛けて把握できます。
積立ては1トン800円で損金に算入できる
生産者が負担するのは1トン当たり800円です。これに配合飼料メーカーの1,600円が加わって通常補てん基金がつくられます。生産者や配合飼料メーカーが負担する積立金は、税制上の特例により損金に算入できます。基金の財源を円滑に積み上げるための措置で、加入する側から見れば負担の実質額が抑えられます。経費として処理する際の考え方は農業の青色申告と節税もあわせてご覧ください。
ここで押さえておきたいのは、この制度が価格を下げるものではなく上昇の影響を薄めるものだという点です。基準になるのは直前1年の平均なので、高値が長く続くと基準そのものが上がっていき、同じ高値でも補てんが出にくくなります。実際に令和2年度末から長期間にわたって補てんが連続で発動した局面では、通常補てんの財源が不足し、金融機関からの借入れで補てんを続ける事態になりました。
未加入だと畜産の補助事業に参加できない
この制度には、加入を続けることを他の事業の参加条件にする仕組み(クロスコンプライアンス)があります。借入れによる補てんで恩恵を受けた生産者が、返済を担う積立てから抜けてしまうと制度が維持できないためです。畜産関係の事業に申請する際、前年度に加入していた生産者については、引き続き加入しているかが確認されます。
| 対象の事業 | 一般予算・補正予算の事業、畜産業振興事業 |
| 対象外の事業 | 法律にもとづく事業、受益者が特定できない技術開発・普及啓発、市場や食肉センター等の施設整備、災害や法定伝染病への対応の事業 |
| 対象になる人 | 事業の受益者のうち、畜産経営を営んでいる個人・法人・集団 |
| 確認の方法 | 当年度の数量契約書の写しを提出。配合飼料を使っていない場合や継続して未加入の場合は自己申告書 |
つまり、飼料の補てんを受け取らないつもりでも、機械や施設の補助事業を使いたいなら加入している必要があります。補助事業への申請を考えている場合は、書類を揃える前に数量契約書が手元にあるかを確認しましょう。
加入と受け取りの流れ
- ふだん配合飼料を買っている農協や飼料メーカーに、どの基金を通じて加入できるかを相談します。全農系・専門農協系・商系の3つがあります。
- その年度に購入する見込みの数量で数量契約を結び、1トン当たり800円の積立金を納めます。契約書の写しは補助事業の申請で使うため保管します。
- 四半期ごとに輸入原料価格が判定され、基準を上回れば通常補てんが、115%を超えれば異常補てんが発動します。
- 補てん単価に購入数量を掛けた額が、加入している基金を通じて交付されます。
- 納めた積立金は損金に算入して申告します。翌年度も継続して加入し、補助事業の申請に備えます。
いま確認しておきたいこと
補てんは値上がりの影響を薄める仕組みで、飼料代そのものを下げるものではありません。基準価格が上がれば発動しにくくなるため、補てんだけに頼る構えでは費用が下がりません。粗飼料の自給や飼料用米・エコフィードの活用で購入量そのものを減らす取組には別の補助金があります。詳しくは飼料の高騰対策に使える補助金で整理しています。買う側の補てんと作る側の補助金は受け皿が違うため、両方を組み合わせて考えましょう。
畜産経営のリスクは価格だけではありません。鳥インフルエンザなど家畜伝染病が発生したときの補償は別の制度が受け持ちます。鳥インフルエンザ発生時の補償と支援で手当金と互助金の仕組みを確認しておくと、備えの抜けが見えます。
よくある質問
通常補てんと異常補てんは何が違いますか
発動する水準と、お金を出す人が違います。通常補てんは当該四半期の輸入原料価格が直前1年の平均を上回れば発動し、財源は生産者(1トン800円)と配合飼料メーカー(1,600円)の積立てです。異常補てんは直前1年の平均の115%を超えたときに通常補てんを補完して発動し、財源は国と配合飼料メーカーが2分の1ずつ拠出します。異常補てんが発動する場合、総補てん額から異常補てん額を引いた額が通常補てん額になります。
補てん金はどうやって受け取りますか
加入している基金を通じて交付されます。四半期ごとに自分で申請する必要はなく、数量契約にもとづいて計算されます。額は公表される補てん単価に購入数量を掛けた額です。直近の四半期は通常補てん単価が1トン当たり2,950円でした。窓口はふだん配合飼料を買っている農協や飼料メーカーです。
加入していないと補助金が使えないのは本当ですか
畜産関係の事業については本当です。一般予算・補正予算の事業と畜産業振興事業では、畜産経営を営む受益者に対して、当年度の数量契約書の写しで継続加入が確認されます。ただし法律にもとづく事業、受益者が特定できない技術開発や普及啓発、市場・食肉センターなどの施設整備、災害や法定伝染病への対応の事業は対象外です。配合飼料を使っていない生産者は自己申告書で確認されます。
価格が高いままなのに補てんが減るのはなぜですか
基準が直前1年の平均だからです。高値が続くと、その高値が翌期以降の基準輸入原料価格に取り込まれていきます。すると当該四半期の価格が基準を上回りにくくなり、同じ高値の水準でも補てんは小さくなります。値上がりの局面を乗り切るための仕組みであって、高値が定着した後の水準そのものを下げる制度ではありません。購入量を減らす取組と組み合わせる必要があります。
積立金は経費になりますか
なります。生産者や配合飼料メーカーが負担する積立金は、税制上の特例により損金に算入できます。基金の財源を円滑に積み上げるための措置です。処理の仕方は加入している基金と税理士へご確認ください。
キーワード解説
輸入原料価格
補てんの発動を判定する基準になる価格で、とうもろこし、こうりゃん、大豆油かす、大麦、小麦の5原料の平均価格です。配合飼料の販売価格ではないため、飼料の値札が上がっていても発動しないことがあります。当該四半期の平均を平均輸入原料価格、直前4四半期の平均を基準輸入原料価格と呼び、この2つの差が補てんの限度になります。
クロスコンプライアンス
ある制度への加入や取組を、別の事業に参加するための条件にする仕組みです。配合飼料価格安定制度では、借入れによる補てんの返済財源を確保するため、畜産関係事業の参加条件として継続加入が求められています。過去にも同じ事情で導入され、借入れの返済が終わった時点で終了した経緯があります。
数量契約書
その年度に購入する配合飼料の数量を定めて基金と結ぶ契約の書面です。積立金の額はこの数量にもとづいて決まり、補てん金の計算にも使われます。畜産関係の補助事業に申請するときは、この写しが加入の証明になるため保管しておく必要があります。