キウイフルーツは、収穫が10月から11月に集中し、貯蔵と追熟で出荷の時期を選べる果樹です。棚を張って育てる点はぶどうやなしと似ていますが、雌の木と雄の木を分けて植え、人の手で受粉させる点が大きく違います。この記事では、キウイで10アール当たりどれだけ所得が残るのか、作業にどれだけ時間がかかるのか、産地が抱えるかいよう病と花粉の課題にどう備えるのかを、愛媛県と農林水産省の資料をもとに整理します。金額はいずれも目安で、産地・品種・販売先によって変わります。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる方 | キウイフルーツで新規就農する方、みかんなどに組み合わせる品目を探している果樹農家 |
| 所得の目安 | 10アール当たり46.5万円(所得率31%)。粗収益148.5万円、経営費101.9万円 |
| 収量・単価の目安 | 成園で10アール当たり2,500キロ、1キロ約594円(モデルからの逆算) |
| 労働時間 | 10アール当たり187.5時間。時間当たり所得は約2,480円 |
| 収穫の時期 | 秋に収穫し、貯蔵と追熟で出荷を長期化。みかんの端境期に充てられる |
| 主産地 | 愛媛21億円(389ヘクタール)、和歌山19億円(170ヘクタール)、福岡17億円(275ヘクタール) |
| 注意する点 | かいよう病Psa3型の防除、雄樹と花粉の確保、老木園の更新 |
| 詳しくは | 都道府県の農業改良普及センター、JA、産地の果樹協議会 |
キウイの所得は10アール当たり47万円
生産量が全国一位の愛媛県は、果樹農業振興計画で経営類型ごとに目標とすべき数値を示しています。そのうち、うんしゅうみかんと中晩柑にキウイフルーツを組み合わせた1.6ヘクタールのモデルでは、キウイフルーツの作付けは0.2ヘクタールで、粗収益297万円・総所得93万円です。
0.2ヘクタール=20アールで割ると、10アール当たりの姿がつかめます。
| 項目 | 作付け0.2ヘクタール | 10アール当たり |
|---|---|---|
| 粗収益 | 297万円 | 148.5万円 |
| 費用合計 | 203.8万円 | 101.9万円 |
| 所得 | 93万円 | 46.5万円 |
| 労働時間 | 375時間 | 187.5時間 |
単収は10アール当たり2,500キロで、粗収益148.5万円を割ると1キロ当たり約594円という計算になります。液体受粉による省力化を前提にした目標値です。所得率は31%で、果樹としては費用の比率が高い部類に入ります。棚の設置と維持、受粉作業の費用が乗るためです。
時間当たり所得はみかんとほぼ同じです
同じ経営モデルのなかで並べると、キウイフルーツの位置がはっきりします。いずれも愛媛県が示す目標値で、条件がそろっているため比較できます。
| 品目 | 作付面積と所得 | 時間当たり所得 |
|---|---|---|
| キウイフルーツ | 0.2ヘクタール・93万円 | 約2,480円 |
| 早生うんしゅうみかん | 0.3ヘクタール・137万円 | 約2,530円 |
| 甘平 | 0.2ヘクタール・127万円 | 約2,500円 |
| 優良中晩柑 | 0.4ヘクタール・259万円 | 約2,360円 |
| いよかん | 0.5ヘクタール・105万円 | 約1,280円 |
時間当たり所得はモデルの所得を家族と雇用の労働時間で割った値です。キウイフルーツの約2,480円は、早生うんしゅうみかんとほぼ並び、いよかんの倍近くになります。単価が高い品目ではないものの、投じた時間に対する戻りは柑橘の主力品目と変わりません。
みかんの端境期を埋める品目です
このモデルでキウイフルーツが0.2ヘクタールに留めてある点は見落とせません。愛媛県は落葉果樹を「果樹農家の経営品目として重要」と位置づけており、柑橘の専作に組み込む補完品目として扱っています。
理由は収穫と出荷の時期です。キウイフルーツは秋に収穫したあと、貯蔵と追熟の適正化によって長期間の出荷ができます。県も、食味が良い有望品種と貯蔵性に優れた既存品種を組み合わせ、出荷期間を延ばす方針を掲げています。収穫作業が柑橘とずれるうえ、貯蔵で売る時期を選べるため、みかんの経営に足しやすい品目です。
面積は減っても産出額は戻っています
全国の動きは、数量が減って単価が上がる形です。
| 項目 | 10年前 | 直近 |
|---|---|---|
| 収穫量 | 28千トン | 21千トン |
| 産出額 | 100億円 | 111億円 |
| 栽培面積 | 2.2千ヘクタール | 2.0千ヘクタール |
産出額は3年前の88億円が底で、そこから109億円、111億円と戻しました。収穫量は減り続けているので、1キロ当たりの手取りが上がったことになります。産出額を収穫量で割ると約529円で、輸入品と競合しながらも国産の値は崩れていません。
産地は次のように分かれます。愛媛県が産出額21億円(389ヘクタール)で一位、和歌山県19億円(170ヘクタール)、福岡県17億円(275ヘクタール)、神奈川県7億円(111ヘクタール)、群馬県5億円(77ヘクタール)と続きます。和歌山県は愛媛県の半分以下の面積で近い産出額を上げており、面積当たりの成績には産地差があります。
単収にも開きがあります。全国平均は10アール当たり約1,100キロで、愛媛県が目標に置く成園の2,500キロの半分以下です。産地全体には老木園や管理の行き届かない園地が含まれるためで、園地を選び、更新すれば伸びしろがあるという意味でもあります。
いちばんの弱点はかいよう病です
キウイフルーツ経営で最初に押さえるべきリスクは、かいよう病です。愛媛県は落葉果樹の振興方針の筆頭に、かいよう病Psa3型の防除の徹底と、抵抗性の高い品種への転換を挙げています。
この病気は幹や枝から樹液があふれ出し、枝が枯れ込みます。発病すると樹そのものを失うため、収量が減るという次元では済みません。園地を探す段階で発生歴を確かめ、抵抗性のある品種を選び、防除を欠かさないことが経営の前提になります。
植え替えが必要になった場合は、改植の支援を使えます。品目・品種は産地計画または地域計画で今後振興すべきと定められたものに限られるため、着手の前に産地協議会と普及センターへ相談しましょう。
花粉をどう確保するかが収量を決めます
キウイフルーツは雌の木と雄の木が分かれており、受粉させなければ実になりません。愛媛県は液体受粉による省力化を目標の栽培方式に据えています。花粉を水に溶いて散布する方法で、人の手で花に付けていく作業を減らせます。
花粉そのものの確保も課題です。国は花粉安定確保対策として、なし・キウイフルーツ・りんご等の花粉専用樹について次の支援を用意しています。
- 花粉専用樹の改植・新植:事業費の半額以内。深耕・整地費、土壌改良資材費、植栽費、苗木代などが対象
- 花粉専用樹の育成管理:10アール当たり11万円以内(5.5万円の2年分)
- 花粉採取機・開葯機・花粉精選機のリース導入:事業費の半額以内
自分の園地で花粉を採るか、産地の花粉供給体制に乗るかは、経営規模で判断が分かれます。愛媛県は花粉産地の育成も方針に掲げており、産地としてまとまって確保する動きが進んでいます。
植えてから収穫までと使える支援
キウイフルーツは、果樹農業生産力増強総合対策の「主要果樹」に含まれます。金額はいずれも10アール当たりで、産地計画または地域計画で振興すべきと定められた品目・品種・樹形が対象です。
- 改植・新植支援:改植で17万円、新植で15万円
- 果樹未収益期間支援:22万円(5.5万円の4年分)を初年度に一括。対象は改植・新植を実施した年を除く4年間
- 小規模園地整備、用水・かん水設備の整備:いずれも事業費の半額以内
- 高温障害の低減に向けた細霧冷房・遮光資材・土壌被覆資材の導入:事業費の半額以内
- 放任園地の発生防止のための伐採等:8万円
省力樹形として認められるには、10アール当たりの労働時間を慣行栽培より10%以上減らせるか、収量を10%以上増やせることが要件です。申請の窓口と手続きは果樹の改植・新植に使える補助金|品目別の支援単価と未収益期間の支援で確認できます。
収穫までの数年をしのぐ資金は、就農の形で変わります。独立して就農する場合は経営開始資金が月13.75万円・最長3年、機械や棚の整備には経営発展支援事業が事業費の半額・上限1,000万円です。要件と申請の時期は新規就農者育成総合対策【令和8年度】経営開始資金は月13.75万円・年165万円に増額で確認できます。
キウイを始めるまでの流れ
- 産地を決めます。愛媛・和歌山・福岡に産地が集まり、選果や貯蔵の受け皿があるかで出口が変わります。
- 都道府県の農業改良普及センターとJAに相談し、産地計画でどの品種が振興対象になっているかを確かめます。かいよう病への抵抗性は品種選びの軸になります。
- 研修先を決めます。せん定と受粉は年に1回しか練習できないため、最低1年、できれば2年かけます。
- 園地を探します。棚が残っているか、かいよう病の発生歴がないか、雄樹が植わっているかを確認します。
- 花粉の確保方法を決めます。自分で雄樹を持つか、産地の供給体制に乗るかで初期の投資が変わります。
- 青年等就農計画をつくり、市町村の認定を受けます。経営開始資金と経営発展支援事業の前提になります。
- 改植・新植の支援と果樹未収益期間支援を、産地計画に基づく取組として都道府県の果樹関係法人へ申請します。
- 収入保険または果樹共済に加入します。かいよう病や台風で樹を失うリスクに備えます。
よくある質問
キウイフルーツ農家の収入はどれくらいですか
愛媛県が示す目標経営モデルでは、キウイフルーツ0.2ヘクタールで粗収益297万円・総所得93万円です。10アール当たりに直すと粗収益148.5万円、経営費101.9万円、所得46.5万円で、所得率は31%になります。単収2,500キロ、労働時間187.5時間を前提にした目標値で、実際の手取りは園地の状態と販売先によって上下します。
キウイは手間のかかる果樹ですか
10アール当たりの労働時間は187.5時間で、同じ愛媛県のモデルでは早生うんしゅうみかん180時間、いよかん163時間、優良中晩柑274時間、ぶどう(ピオーネ)299.5時間です。柑橘と同じくらいで、ぶどうより軽い水準です。ただし受粉作業が必須で、この時期に人手が要ります。液体受粉を導入すると負担を減らせます。
キウイフルーツの単価は下がっていませんか
下がっていません。全国の収穫量は10年で28千トンから21千トンへ減りましたが、産出額は100億円から111億円へ増えています。産出額を収穫量で割ると1キロ当たり約529円で、3年前の底からは持ち直しました。数量が減るなかで単価が支えている構図です。
かいよう病にはどう備えますか
抵抗性の高い品種を選び、防除を徹底することが基本です。愛媛県は落葉果樹の振興方針の筆頭に、かいよう病Psa3型の防除徹底と抵抗性品種への転換を挙げています。発病すると樹を失うため、園地を借りる・買う前に発生歴を確認しましょう。植え替えが必要になった場合は、改植支援10アール当たり17万円と、果樹未収益期間支援22万円を使えます。
受粉のための花粉はどう手に入れますか
自分の園地に雄樹を植えて採るか、産地の花粉供給体制から購入するかの2つです。国の花粉安定確保対策では、花粉専用樹の改植・新植に事業費の半額、花粉が採れるまでの育成管理に10アール当たり11万円(5.5万円の2年分)、花粉採取機や開葯機のリース導入に事業費の半額の支援があります。愛媛県は花粉産地の育成も進めています。
キーワード解説
かいよう病
細菌によって幹や枝が侵され、樹液があふれ出して枝が枯れ込む病気です。キウイフルーツでは病原性の強いPsa3型が問題になっており、発病すると樹そのものを失います。愛媛県は防除の徹底と、抵抗性の高い品種への転換を落葉果樹の振興方針の筆頭に挙げています。園地を選ぶ段階で発生歴を確認することが、経営の前提になります。
液体受粉
採取した花粉を水などに溶き、散布して受粉させる方法です。キウイフルーツは雌の木と雄の木が分かれており、人の手による受粉が欠かせません。花に一つずつ花粉を付ける方法に比べて作業時間を減らせるため、愛媛県は目標とすべき栽培方式に位置づけています。10アール当たり187.5時間という目標労働時間は、この方法を前提にした値です。
果樹未収益期間支援
改植・新植をしてから収穫が始まるまでの、収入がない期間の管理経費を補う支援です。金額は10アール当たり22万円で、5.5万円の4年分を初年度に一括して受け取れます。対象になる期間は、改植・新植を実施した年を除く4年間です。改植支援17万円・新植支援15万円と組み合わせて使えます。