畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)の数量払は、出荷した数量に単価を掛けて計算します。単価は1本ではありません。作物ごとに等級で分かれ、麦はさらにA〜Dのランクで分かれます。小麦のパン・中華麺用品種なら、1等Aの7,420円から2等Dの5,550円まで、60キログラム当たり1,870円の開きがあります。この記事では、令和8年産から適用される品質区分別の単価を作物ごとに一覧にし、等級が1つ落ちたときの下げ幅、免税事業者向け単価との差、交付金が振り込まれる時期までまとめます。

対象となる方認定農業者、集落営農、認定新規就農者。いずれも規模要件なし
対象作物麦、大豆、そば、なたね、てん菜、でん粉原料用ばれいしょ。てん菜とでん粉原料用ばれいしょは北海道産のみ
支払の方法生産量と品質に応じた数量払が基本。作付面積に応じた面積払は数量払の先払い
交付単価等級・ランクごとに設定。小麦(パン・中華麺用品種)は60キログラム当たり5,550〜7,420円、普通大豆は60キログラム当たり10,040〜11,410円(いずれも課税事業者向け)
交付の時期面積払は生産年の8月頃から、数量払は12月頃から翌年の春にかけて
詳しくは地域農業再生協議会、または地方農政局の県域拠点

数量払の単価は等級とランクで決まります

小麦・大麦・はだか麦・大豆・てん菜・でん粉原料用ばれいしょ・そば・なたねの品質区分別交付単価の一覧表
品質区分(等級)ごとに設定された数量払の交付単価。農林水産省「品質区分別交付単価(令和8年産〜)」

数量払は、出荷・販売した数量に品質区分ごとの単価を掛けて計算します。品質区分は等級で分かれ、小麦・大麦・はだか麦はさらにA〜Dのランクで分かれます。等級は被害粒の割合や粒揃いの違いで決まり、ランクは小麦がたんぱく質の含有率、大麦・はだか麦が白度やたんぱく質の含有率などで決まります。麦・大豆・そばの等級は農産物検査、または農産物検査によらない方法で確認します。麦のランクは、農産局長が登録した品質評価主体が行う品質分析で判定されます。

以下の単価はすべて課税事業者向けです。免税事業者向けの額は後の節にまとめます。

小麦

品質区分パン・中華麺用品種(円/60キログラム)上記以外(円/60キログラム)
1等A7,4205,120
1等B6,9204,620
1等C6,7704,470
1等D6,7104,410
2等A6,2603,960
2等B5,7603,460
2等C5,6103,310
2等D5,5503,250

パン・中華麺用品種かどうかで、どの区分でも2,300円の差がつきます。同じ1等Aでも、パン・中華麺用品種の7,420円に対して、それ以外の品種は5,120円です。品種の選択がそのまま手取りに響きます。麦づくりで使えるほかの補助金は大豆・麦づくりに使える補助金にまとめています。

大麦・はだか麦

品質区分二条大麦(円/50キログラム)六条大麦(円/50キログラム)はだか麦(円/60キログラム)
1等A5,0506,0609,300
1等B4,6305,6408,800
1等C4,5105,5108,650
1等D4,4605,4608,560
2等A4,1905,0307,730
2等B3,7704,6107,230
2等C3,6404,4907,080
2等D3,5904,4407,000

二条大麦と六条大麦は50キログラム当たり、はだか麦は60キログラム当たりの単価です。単位が違うため、金額をそのまま並べても大小は比べられません。

大豆・そば・なたね

作物品質区分交付単価
普通大豆1等11,410円/60キログラム
2等10,720円/60キログラム
3等10,040円/60キログラム
特定加工用大豆合格9,360円/60キログラム
そば1等16,450円/45キログラム
2等14,340円/45キログラム
なたねキザキノナタネ、キラリボシ、ナナシキブ、きらきら銀河、ペノカのしずく6,420円/60キログラム
その他の品種5,680円/60キログラム

なたねだけは等級ではなく品種で分かれます。指定された5品種とそれ以外で、60キログラム当たり740円の差です。そばの交付金の詳しい要件はそばの交付金にまとめています。

てん菜・でん粉原料用ばれいしょ

この2作物は等級ではなく、糖度とでん粉含有率で単価が動きます。基準を上回れば加算され、下回れば減額されます。対象は北海道産に限られます。

作物基準となる品質基準での単価基準から動いたとき
てん菜糖度15.7度5,090円/トン0.1度ごとに62円を加算・減額
でん粉原料用ばれいしょでん粉含有率18.8%14,090円/トン0.1ポイントごとに64円を加算・減額

でん粉原料用ばれいしょの交付金はでん粉原料用いもの交付金でも扱っています。

等級が1つ落ちたときの下げ幅

等級が1つ落ちたときの差額を、単価表から作物ごとに計算しました。

作物比べる区分下げ幅
そば1等→2等2,110円/45キログラム
はだか麦1等A→2等A1,570円/60キログラム
小麦1等A→2等A1,160円/60キログラム
六条大麦1等A→2等A1,030円/50キログラム
二条大麦1等A→2等A860円/50キログラム
普通大豆1等→2等690円/60キログラム
普通大豆2等→3等680円/60キログラム

そばの下げ幅が最も大きく、45キログラム当たり2,110円です。1等の16,450円に対して13%近くが消えます。小麦の1,160円は、パン・中華麺用品種でもそれ以外でも同じ額です。

麦のランクが1つ落ちたときの下げ幅は、等級ほど大きくありません。小麦の場合は60キログラム当たり次の額です。

  • A→B:500円
  • B→C:150円
  • C→D:60円

たんぱく質の含有率で1ランク動くより、被害粒や粒揃いで1等から2等へ落ちるほうが手取りに響きます。

免税事業者向けの単価は作物ごとに一定額が上乗せされます

交付単価は令和5年産から、課税事業者向けと免税事業者向けに分かれました。免税事業者向けのほうが高く、その差は等級やランクにかかわらず作物ごとに同じ額です。

作物単位上乗せ額
小麦(両区分とも)60キログラム530円
二条大麦50キログラム280円
六条大麦50キログラム380円
はだか麦60キログラム560円
大豆(普通・特定加工用とも)60キログラム500円
そば45キログラム830円
なたね60キログラム430円
てん菜1トン290円
でん粉原料用ばれいしょ1トン940円

普通大豆の1等なら、課税事業者向けが11,410円、免税事業者向けは11,910円です。60キログラム当たり500円の差が、出荷量の分だけ積み上がります。

免税事業者向けの単価を受けられるのは消費税の免税事業者です。消費税の課税事業者と、組織として確定申告していない集落営農は課税事業者向けの単価になります。申請では収入・売上が1千万円以下であることを確認され、確定申告書の「営業等」と「農業」の合計額で判定されます。

提出は交付申請書と一緒に、生産年の6月30日までです。個人は2年前の確定申告書の写しを添えます。交付金が含まれて1千万円を超えている場合は、青色申告決算書(白色申告なら収支内訳書)の農業所得用なども添付します。営農開始2年以内なら個人事業の開業・廃業等届出書の写しなどで代えられます。法人は2期前の各事業年度の所得に係る確定申告書(別表1)の写しなどを添えます。課税事業者が虚偽の申請をした場合、交付金は全額不交付となり、返還を求められます。

令和8年産の改定で上がった作物と下がった作物

数量払の単価は令和8年産から改定されました。上がった作物と下がった作物があり、改定の幅は等級やランクによらず作物ごとに同じです。次の表は課税事業者向けの単価を、麦は1等A、大豆・そばは1等で比べたものです。単位は小麦・はだか麦・大豆・なたねが60キログラム、二条大麦・六条大麦が50キログラム、そばが45キログラム当たりです。

作物と品質区分令和5〜7年産令和8年産増減
普通大豆 1等10,360円11,410円+1,050円
特定加工用大豆 合格8,310円9,360円+1,050円
六条大麦 1等A5,210円6,060円+850円
はだか麦 1等A9,220円9,300円+80円
小麦 パン・中華麺用品種 1等A7,860円7,420円▲440円
小麦 上記以外 1等A5,560円5,120円▲440円
そば 1等17,180円16,450円▲730円
二条大麦 1等A5,870円5,050円▲820円
なたね キザキノナタネ等7,720円6,420円▲1,300円
なたね その他の品種6,980円5,680円▲1,300円

大きく動いたのは大豆となたねです。大豆は普通大豆・特定加工用大豆とも1,050円上がり、なたねは品種を問わず1,300円下がりました。

二条大麦と六条大麦は高低が入れ替わりました。令和5〜7年産は二条大麦(1等A・5,870円)が六条大麦(同5,210円)を上回っていましたが、令和8年産は六条大麦が二条大麦を50キログラム当たり1,010円上回ります。

てん菜とでん粉原料用ばれいしょは、単価より基準が動きました。てん菜の基準糖度は16.6度から15.7度へ、でん粉原料用ばれいしょの基準でん粉含有率は19.6%から18.8%へ下がっています。基準が下がると、同じ品質でも加算が付きやすくなります。

基準での単価は、てん菜が1トン当たり5,070円から5,090円へ、でん粉原料用ばれいしょが14,280円から14,090円へ変わりました。

面積払は数量払の先払いとして先に振り込まれます

ゲタ対策の交付対象者・対象農産物・平均交付単価と、数量払と面積払の関係を示した図
ゲタ対策の仕組みと平均交付単価。面積払は数量払の先払いにあたる。農林水産省「畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)」

面積払(営農継続支払)は、当年産の作付面積に応じて10アール当たり2万円が交付されます。そばだけは1万3千円です。この額は令和8年産でも変わっていません。

面積払は数量払の内数で、先払いにあたります。収穫・出荷が終わって数量と品質が確定したあと、数量払の総額から面積払で受け取った分を差し引いた額が追加で交付されます。面積払と数量払を両方まるごと受け取れるわけではありません。

単価の水準は「標準的な生産費」と「標準的な販売価格」の差額として算出されます。10アール当たり生産費(直近3年平均)を単収で割った額から、販売価格(直近5年のうち最高・最低を除く3年の平均)を引いた額が平均交付単価です。諸外国との生産条件の格差から生じる不利を埋める設計になっています。収入の減少そのものを補てんするナラシ対策との違いは、ゲタ・ナラシとはで整理しています。

単収が基準の半分を下回ると面積払が止まることがあります

面積払は、地域の標準的な栽培方法に沿って十分な収量が得られるように生産することが前提です。対象作物を作付ければ自動的に受け取れる交付金ではありません。

単収が地域の基準単収の2分の1を下回った場合、合理的な理由があると認められたときに限って面積払の対象になります。このとき理由書と、その根拠になる証拠書類の提出を求められます。用意しておく書類は次のとおりです。

  • 被害状況が分かるほ場ごとの写真と、気象庁の公表データや記事などの書類
  • 作業日誌
  • 種子の購入伝票、肥料または薬剤の購入伝票
  • 改善指導を受けている場合は、対策を施したことが分かるほ場の写真や書類

写真は生育期間中の被害状況を、被害を受けたエリアごとに撮っておきます。生育期間中に確認できない被害なら、収穫物の写真を添えます。自己判断ですき込みなどをすると被害状況を確認できなくなるため、先に地域農業再生協議会へ申し出てください。

自然災害によるものを除き、低単収の理由が2年以上続いた場合は翌年産の改善指導の対象になります。指導で示された対応が十分でなければ面積払は交付されず、翌年の面積払は収穫後の交付に切り替わります。

申請から交付までの流れ

  1. は種前に、JAなどとの出荷契約または実需者との販売契約を結びます。
  2. 生産年の6月30日までに、交付申請書と営農計画書を地域農業再生協議会または地方農政局の県域拠点へ提出します。免税事業者向けの単価を申請する場合は、このときに確定申告書の写しなどを添えます。
  3. 対象作物の作付確認を受けます。
  4. 生産年の8月頃から、面積払(営農継続支払)が交付されます。
  5. 出荷後に数量と品質の確認を受け、数量払の交付申請を出します。麦・なたねは生産年の翌年3月5日まで、大豆・そばは翌年4月30日までが期限です。
  6. 生産年の12月頃から翌年の春にかけて、数量払から面積払の分を差し引いた額が交付されます。

大豆・そばの数量払の交付申請は期限が4月末ですが、特段の理由がなければ3月5日までに出すよう求められています。てん菜とでん粉原料用ばれいしょは北海道産のみが対象で、期限は地域農業再生協議会の案内をご覧ください。

区分内容時期
申請交付申請書・営農計画書等の提出生産年の6月30日まで
交付面積払(営農継続支払)生産年の8月頃から
申請数量払の交付申請(麦・なたね)生産年の翌年3月5日まで
申請数量払の交付申請(大豆・そば)生産年の翌年4月30日まで
交付数量払生産年の12月頃から翌年5月頃

時期はいずれも予定で、地域によって前後します。ナラシ対策にも加入する場合は、積立の申出を6月30日までに行い、積立金を8月31日までに納めます。

対象となる方と対象作物

交付対象者は認定農業者、集落営農、認定新規就農者の3つで、規模要件はありません。集落営農は、組織の規約を作ること、対象作物の共同販売経理を実施すること、農業経営の法人化と地域における農地利用の集積が確実に行われると市町村が判断すること、この3つを満たす必要があります。

対象作物は麦、大豆、そば、なたね、てん菜、でん粉原料用ばれいしょです。てん菜とでん粉原料用ばれいしょは北海道産に限られます。は種前にJAなどとの出荷契約、または実需者との販売契約を結ぶことが基本です。

同じ作物でも対象から外れるものがあります。麦芽の原料として使われる麦(ビール用など)、黒大豆、種子用として生産されるものは交付の対象になりません。

キーワード解説

ゲタ対策

畑作物の直接支払交付金の通称です。諸外国との生産条件の格差により不利がある国産農産物を生産・販売する農業者に対し、「標準的な生産費」と「標準的な販売価格」の差額分に相当する交付金を国が直接交付します。根拠は担い手経営安定法(農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律)です。

数量払

出荷・販売した数量と品質に応じて交付される、ゲタ対策の基本の支払方法です。品質区分ごとに単価が定められ、等級やランクが上がるほど単価も高くなります。

面積払(営農継続支払)

当年産の作付面積に応じて10アール当たり2万円(そばは1万3千円)が交付される支払です。数量払の内数で、先払いとして生産年の夏に交付され、数量払の交付時に差し引かれます。

特定加工用大豆

豆腐・油揚、しょうゆ、きなこなど、製品の段階で大豆の原形をとどめない用途に使われる大豆です。普通大豆とは別の品質区分が設けられ、単価も分かれています。

地域農業再生協議会

市町村、農協、共済組合、農業委員会、担い手農家などで構成される地域の組織です。全国に約1,570あり、営農計画書・交付申請書の取りまとめ、対象作物の作付面積の確認、対策の普及・推進を担います。ゲタ対策の窓口はここになります。

よくある質問

等級は誰が決めますか

麦・大豆・そばの等級は、農産物検査、または農産物検査によらない方法で品質区分を確認して決まります。等級の中身や検査の仕組みは農産物検査で解説しています。麦のA〜Dランクは、農産局長が登録した品質評価主体が行う品質分析で判定されます。

面積払を受け取ったあとに数量払も満額もらえますか

受け取れません。面積払は数量払の先払いで、数量払の内数です。数量払を交付するときに、すでに受け取った面積払の分が差し引かれます。

免税事業者向けの単価はどう申請しますか

生産年の6月30日までに、交付申請書に収入・売上が1千万円以下であることを示す書類を添えて提出します。個人は2年前の確定申告書の写し、法人は2期前の各事業年度の所得に係る確定申告書(別表1)の写しなどが必要です。

てん菜やでん粉原料用ばれいしょは本州でも対象になりますか

なりません。てん菜とでん粉原料用ばれいしょは、北海道で生産され交付対象要件を満たすものだけが対象です。麦・大豆・そば・なたねに地域の限定はありません。