食用油の多くを輸入に頼るなかで、国産の植物油を増やそうという動きが広がり、なたね(菜種)を作れるかを検討する農家が増えています。なたねを作る認定農業者・集落営農・認定新規就農者は、収穫したなたねを搾油業者へ売った代金とは別に、畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)を受け取れます。この記事では、なたねの令和8年産の交付単価と対象者の要件、水田での転作、そして国産なたねの需給や搾油業者との連携までを整理します。年産ごとの確定値は農林水産省の一次情報でご覧ください。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | なたねを作る認定農業者・集落営農・認定新規就農者です。規模の要件はありません。 |
| 何を | 畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)の数量払と面積払を受けられます。水田で作れば水田活用の直接支払交付金の対象にもなります。 |
| 交付単価 | 令和8年産は数量払が60キログラム当たり6,410円(課税事業者向け)、面積払が10アール当たり2万円です。 |
| 主な要件 | 搾油業者などの実需者と出荷・販売の契約を結び、地域の指導に沿って適切に生産することです。 |
| 詳しくは | 最寄りの地域農業再生協議会(市町村・JA等)・地方農政局に相談します。交付単価は令和8年産の内容です。 |
なたね栽培ではどんな補助金を受けられるか
なたねを作る生産者が直接受け取れる交付金の中心は、畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)です。ゲタ対策は、諸外国との生産条件の格差で不利になりやすい国産の畑作物について、標準的な生産費と標準的な販売価格の差額を交付する制度です。対象になるのは、なたねのほか麦・大豆・そば・てん菜・でん粉原料用ばれいしょで、なたねは畑でも水田でも対象になります。
交付は、生産量と品質に応じた数量払を基本とし、当年産の作付面積に応じた面積払をその先払いとして受け取る二本立てです。水田でなたねを作る場合は、これに加えて水田活用の直接支払交付金の対象にもなります。ゲタ対策やナラシ対策の仕組み、対象者の細かな要件はゲタ・ナラシの解説で整理しています。同じゲタ対策の対象作物である大豆・麦については大豆・麦づくりに使える補助金もあわせてご覧ください。
ゲタ対策で受けられる交付単価
ゲタ対策の交付は、数量払と面積払で構成されます。数量払は生産量と品質に応じて交付される部分で、なたねの令和8年産の平均交付単価は60キログラム当たり6,410円(課税事業者向け)、消費税の免税事業者向けは6,820円です。これに面積払が10アール当たり2万円加わります。面積払は当年産の作付面積に応じて交付され、数量払の一部を先に受け取る性格があります(数量払の内数として差し引かれます)。
| 交付の種類 | なたねの令和8年産の交付単価 | 交付の基準 |
|---|---|---|
| 数量払 | 60キログラム当たり6,410円(課税事業者向け)/6,820円(免税事業者向け) | 生産量と品質に応じて交付 |
| 面積払(先払い) | 10アール当たり2万円 | 当年産の作付面積に応じて交付(数量払の先払い) |
数量払の平均交付単価は、10アール当たりの生産費(直近3年平均)を平均単収で割った額から、販売価格(直近5中3平均)を差し引いて算定されます。つまり、生産費と販売価格の差を国が交付金で埋める仕組みです。品質区分ごとの単価や、麦・大豆など他の対象作物の単価とあわせた一覧はゲタ・ナラシの解説で確認できます。
対象となる方
なたねのゲタ対策を受けられるのは、認定農業者・集落営農・認定新規就農者のいずれかです。麦・大豆と同じ枠組みで、いずれも面積の大きさ(規模要件)は問われません。新規に就農して認定新規就農者になった方や、小さな面積から始める方も対象になります。
集落営農として申請する場合は、次の条件を市町村が確認します。組織の規約を作成していること、対象作物の共同販売経理を行っていること、そして「農業経営の法人化」と「地域における農地利用の集積」について市町村が確実に行われると判断することです。交付を受けるには、搾油業者などの実需者と出荷・販売の契約を結んでおくことが前提になります。
水田でなたねを作るとき
なたねは畑作物ですが、水田で作ることもでき、その場合は水田活用の直接支払交付金の対象になります。主食用米が余るなかで、水田をなたねなどの作物に転換する動きが進んでおり、なたねは転作作物の一つとして位置づけられます。水田でなたねを作ると、水田活用の直接支払交付金とゲタ対策の両方が関わります。二つの交付金は別の仕組みで、水田活用の交付金は「水田で作ること」への助成、ゲタ対策は「生産費と販売価格の差」を補う交付金です。
どの水田がどの助成の対象になるか、単価や交付の条件は年産・地域で異なります。水田活用の直接支払交付金の単価一覧や対象の考え方は、水田活用の直接支払交付金の解説で整理しています。転作の候補を比べるときは、同じゲタ対策の対象で製粉・そば向けのそばづくりに使える補助金も参考になります。なたねが油糧(搾油)向け、そばが雑穀・製粉向けと販路の性格が異なります。
国産なたねの需給と搾油業者との連携
なたねを作るうえで欠かせないのが、売り先の確保です。油糧用なたねの国内供給量は年間200万トン程度ですが、そのほとんどを輸入が占め、国産は3〜4千トン程度(供給量の0.1〜0.2%)にとどまっています。主な輸入先はカナダと豪州です。世界の植物油生産に占めるなたね油の割合は15%程度で、主要な生産国はカナダ・EU・中国・インドです。
希少な国産なたねに需要があるのは、その油の質のためです。国産なたね油は、溶剤で油を取り出す抽出法ではなく圧搾式の搾油法で作られ、自然な色合いと風味が損なわれにくいことから、より自然な食品を求める消費者に支持されています。一方、搾油業者から見ると、原料の国産なたねは生産量が少なく供給が不安定で、圧搾式は歩留まりが低いという課題があります。だからこそ、生産者と搾油業者が契約で結びつき、安定した数量を計画的に供給することが、国産なたねを増やすうえで重要になります。
作付けの状況を見ると、令和7年産の全国の作付面積は1,590ヘクタール、10アール当たり収量は160キログラム、収穫量は2,540トンでした。近年は1,500〜2,000ヘクタールの範囲で推移しています。作付けの半分以上は北海道が占め、東北・九州でも作られています。国産なたねは、地域の搾油と結びついた特色ある産品として広がる余地があります。
なたね栽培のポイント
なたねは、収穫前年の秋にまく秋まき栽培が主流です。積雪期間が長い地域では、越冬前に十分な生育量を確保するため早めに播種します。収穫は汎用コンバインで行え、主産地では機械作業の体系が普及しているため、大きな追加投資なしに取り入れやすい作物です。作業で特に押さえたい点は次のとおりです。
- 毎年の種子更新:なたねは他の品種やアブラナ科の作物と交雑しやすいため、毎年種子を更新して品質を保ちます。
- 適期の収穫:刈り取りが遅れると脱粒しやすいので、適期に収穫します。
- 共同での乾燥調製:収穫後は共同乾燥調製施設で均質に乾燥・調製すると、品質がそろいます。
経営面での利点もあります。なたねの10アール当たりの生産費は、令和6年産で約6万円と、米(約13万円)・小麦(約7万4千円)・大豆(約7万2千円)に比べて低く、10アール当たりの労働時間も約2.4時間と短く済みます。手間とコストを抑えやすい作物といえます。
品種は、食用油に望ましいとされる無エルシン酸品種が主流です。近年は、エルシン酸に加えて油粕に残るグルコシノレートも少なく、搾油後の油粕を家畜の飼料に利用できるダブルロー品種(「きらきら銀河」「ペノカのしずく」など)が育成されています。地域に適した品種を選ぶことが、収量と品質の安定につながります。
交付金を受け取るまでの流れ
作付けの前から順に確認して進めましょう。
- 自分が認定農業者・集落営農・認定新規就農者のいずれかに当てはまるかを確認します。
- 搾油業者などの実需者と、なたねの出荷・販売の契約を結びます。
- 最寄りの地域農業再生協議会(市町村・JA等)・地方農政局に相談し、ゲタ対策の対象と交付単価、水田で作る場合の水田活用の直接支払交付金の扱いを確認します。
- 交付申請書と営農計画書を提出します(提出期限は年産・地域で定められます)。
- 作付け・生産に取り組み、作付面積と生産量・品質が確定した後、面積払と数量払を受け取ります。
よくある質問
なたねを作れば必ず補助金を受けられますか
認定農業者・集落営農・認定新規就農者であれば、ゲタ対策の数量払と面積払(10アール当たり2万円)を受けられます。ただし、搾油業者などの実需者と出荷・販売の契約を結び、地域の指導に沿って適切に生産することが前提です。極端に単収が低い場合などは、数量払が想定より少なくなることがあります。
なたねの交付単価はどれくらいですか
令和8年産の数量払の平均交付単価は、60キログラム当たり6,410円(課税事業者向け)・6,820円(免税事業者向け)です。これに面積払として10アール当たり2万円が加わります。数量払は生産量と品質に応じて交付され、面積払はその先払いにあたります。
水田でなたねを作っても対象になりますか
対象になります。なたねは畑でも水田でも作れて、いずれもゲタ対策の対象です。水田で作る場合は、これに加えて水田活用の直接支払交付金の対象にもなり、主食用米からの転作作物として取り組めます。単価や条件は年産・地域で異なるため、地域農業再生協議会でご確認ください。
売り先はどう確保すればよいですか
国産なたねは搾油業者などの実需者へ販売するのが基本で、交付を受けるにも実需者との出荷・販売の契約が前提になります。国産なたね油は圧搾式で作られ自然な風味が支持されている一方、原料の供給は不安定なため、地域の搾油業者と契約を結び、計画的に供給する体制づくりが販路の安定につながります。
キーワード解説
畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)
諸外国との生産条件の格差で不利になりやすい国産の畑作物について、標準的な生産費と標準的な販売価格の差額を交付する、経営所得安定対策の交付金です。麦・大豆・そば・なたねと、北海道産のてん菜・でん粉原料用ばれいしょが対象で、数量払と面積払で構成されます。
数量払と面積払
数量払は、生産量と品質に応じて交付されるゲタ対策の中心部分です。面積払は当年産の作付面積に応じて交付され、数量払を先払いする性格があります(数量払の内数として差し引かれます)。なたねの面積払は10アール当たり2万円です。
実需者
加工・製造などのために農産物を買い取る事業者のことです。なたねの場合は、なたねを搾って油を作る搾油業者が主な実需者にあたります。ゲタ対策の交付を受けるには、実需者との出荷・販売の契約が前提になります。
ダブルロー品種
種子に含まれるエルシン酸(食用に適さない脂肪酸)と、油粕に残るグルコシノレート(家畜に甲状腺の障害をもたらすとされる成分)がいずれも少ないなたねの品種です。搾油後の油粕を家畜の飼料にも利用でき、「きらきら銀河」「ペノカのしずく」などが育成されています。
まとめ
なたねを作る認定農業者・集落営農・認定新規就農者は、ゲタ対策として60キログラム当たり6,410円の数量払と10アール当たり2万円の面積払を受けられます。水田で作れば水田活用の直接支払交付金の対象にもなり、転作作物として取り組めます。国産なたねは希少で、圧搾式の国産なたね油に根強い需要があるため、搾油業者との契約による安定供給が販路のカギになります。生産費と労働時間を抑えやすい作物でもあるので、まずは地域農業再生協議会(市町村・JA等)に相談し、実需者との契約と作付けの計画から始めましょう。