南九州(鹿児島・宮崎)でかんしょを、北海道でばれいしょをでん粉原料用に作る生産者は、でん粉工場へ売った原料の代金とは別に、国から交付金を受け取れます。ただし受け取れる制度は作物ごとに分かれ、でん粉原料用かんしょは糖価調整制度のでん粉原料用いも交付金、でん粉原料用ばれいしょは畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)です。この記事では、それぞれの令和8年産の交付単価と対象になる生産者の要件を整理します。年産ごとの確定値は農林水産省の一次情報でご覧ください。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | でん粉原料用のかんしょを作る南九州(鹿児島・宮崎)の生産者、でん粉原料用のばれいしょを作る北海道の生産者 |
| 交付金の種類 | かんしょ=でん粉原料用いも交付金(糖価調整制度)。ばれいしょ=畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策) |
| 令和8年産の金額 | かんしょ=1,000キログラム当たり32,150〜36,010円(品種区分・課税区分で変動)。ばれいしょ=数量払1トン当たり15,030円ほか+面積払10アール当たり2万円 |
| 対象要件 | かんしょ=認定農業者等ほかB-1〜B-4のいずれか。ばれいしょ=認定農業者・集落営農・認定新規就農者(規模要件なし) |
| 詳しくは | 農林水産省「砂糖・でん粉」、「令和8年産さとうきび・でん粉原料用かんしょに係る生産者交付金の単価の決定について」をご覧ください |
かんしょとばれいしょで受け取れる交付金の違い
でん粉原料用のいもを作る生産者が直接受け取れる交付金は、次のとおり作物ごとに制度が分かれています。同じ「でん粉原料用いも」でも、かんしょ(南九州)とばれいしょ(北海道)で仕組みが違う点に注意しましょう。
| 項目 | でん粉原料用かんしょ | でん粉原料用ばれいしょ |
|---|---|---|
| 制度 | でん粉原料用いも交付金(生産者交付金)。糖価調整制度に基づく | 畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)。経営所得安定対策の一つ |
| 主な産地 | 南九州(鹿児島県・宮崎県) | 北海道 |
| 令和8年産の交付単価 | 特定品種は1,000キログラム当たり36,010円(免税事業者)・34,870円(課税事業者)。その他品種は32,150円(免税事業者)・31,130円(課税事業者) | 数量払は1トン当たり15,030円(免税事業者)・14,090円(課税事業者)。面積払(営農継続支払)が10アール当たり2万円 |
| 主な対象者 | 認定農業者等・一定の作業規模を持つ者・共同利用組織の構成員・基幹作業の委託者(B-1〜B-4) | 認定農業者・集落営農・認定新規就農者(規模要件なし) |
でん粉原料用かんしょの交付金
南九州でかんしょを作る生産者は、収穫した原料をでん粉工場に売った代金(品代)に加えて、国からでん粉原料用いも交付金(生産者交付金)を受け取れます。輸入されるでん粉やその原料に比べて割高になりやすい国産のかんしょでん粉でも、生産者の手取りが「品代+交付金」で確保され、所得と経営を支える仕組みです。でん粉原料用かんしょはゲタ対策の対象作物ではないため、この交付金が生産者への支援の中心になります。
令和8年産の交付単価
令和8年産の生産者交付金の単価は、品種区分によって二つに分かれます。コガネセンガンなどの特定品種は1,000キログラム当たり36,010円(免税事業者)・34,870円(消費税の課税事業者)、その他品種は32,150円(免税事業者)・31,130円(課税事業者)です。特定品種には、アリアケイモ・コガネセンガン・こなみずき・シロユタカ・ダイチノユメ・みちしずくなど、でん粉原料用として指定された品種が含まれます。
単価が品種区分と消費税の扱いで分かれる点が特徴です。でん粉原料用いも交付金には、さとうきびのような面積払はなく、出荷した原料の重量に応じた交付になります。
交付金の対象となる生産者の要件
でん粉原料用かんしょの交付金を受け取れるのは、次の4区分のいずれかに当てはまる生産者です。品目別経営安定対策の交付対象者要件として定められています。
- 認定農業者等(B-1):市町村から認定を受けた農業経営改善計画に基づいて経営する生産者などです。
- 一定の作業規模を有する者(B-2):一定規模以上の作業を行う生産者です。
- 共同利用組織への参加者(B-3):機械の共同利用組織などの構成員として、基幹作業の原則2分の1以上を共同作業で実施する生産者です。
- 基幹作業の委託者(B-4):基幹作業の原則2分の1以上を他者に委託する生産者です。
基幹作業とは、かんしょの植付け・収穫など、生産の中心となる作業を指します。B-3・B-4では、この基幹作業の一定割合以上を共同利用組織の共同作業または委託でまかなうことが求められます。さとうきびの交付金がA-1〜A-4で区分されるのに対し、でん粉原料用かんしょはB-1〜B-4で区分されます。
交付対象者要件の見直し
共同利用組織の構成員(B-3)と基幹作業の委託者(B-4)には、多くの生産者が対象になれるよう、過去に経過的な特例が設けられていました。この特例は次の二つで、いずれも平成30年産で終了しました。令和元年産以降は、原則どおりの要件を満たす必要があります。
- 割合の特例:ほ場の3分の1以上(原則は2分の1以上)で基幹作業を共同作業または委託すれば対象とする特例です。終了により、原則の2分の1以上が要件になりました。
- カウント方法の特例:複数のほ場ごとに、共同作業または委託する面積が最も大きい基幹作業の面積を合計できる特例です。終了により、原則の数え方に戻りました。
今からでん粉原料用かんしょの交付金を申請する生産者は、この見直し後の原則要件を前提に、自分がどの区分に当てはまるかを確認しましょう。
でん粉原料用ばれいしょの交付金
北海道でばれいしょをでん粉原料用に作る生産者が受け取れるのは、でん粉原料用いも交付金ではなく、畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)です。経営所得安定対策の一つで、諸外国との生産条件の格差で不利になりやすい畑作物の生産を支えます。ゲタ対策のでん粉原料用ばれいしょは北海道産のみが対象です。てん菜・麦・大豆などと同じ枠組みで、交付は「数量払」と「面積払」の二本立てになります。ゲタ対策・ナラシ対策の仕組みは畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)とナラシ対策の記事で詳しく整理しています。
数量払と面積払
令和8年産の数量払の平均交付単価は、でん粉原料用ばれいしょについて1トン当たり15,030円(免税事業者)・14,090円(消費税の課税事業者)です。数量払は生産量と品質(でん粉価などの区分)に応じて交付される部分です。
これに加えて、面積払(営農継続支払)が10アール当たり2万円交付されます。面積払は当年産の作付面積に応じて交付され、数量払の一部を先払いする性格があります(数量払の内数として差し引かれます)。生産者は数量払と面積払を合わせて受け取れます。
交付金の対象となる生産者の要件
ゲタ対策の対象になるのは、認定農業者・集落営農・認定新規就農者です。でん粉原料用かんしょと異なり、規模の要件はありません。でん粉原料用ばれいしょは、北海道の畑作で連作障害を避けるための輪作に欠かせない作物で、北海道産が対象です。交付を受けるには、でん粉工場や実需者との出荷・販売の契約を結んでおくことが基本になります。詳しい要件や契約の様式は、農林水産省「経営所得安定対策」でご覧ください。
なぜ交付金が出るのか
でん粉原料用いも交付金の背景にあるのが糖価調整制度です。砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律に基づき、砂糖とでん粉を対象に、輸入品と国産品の価格差を調整しています。安価な輸入品から徴収した調整金を主な財源に、国産のでん粉づくりと安定供給を成り立たせています。
- 安価な輸入品(でん粉やその原料)から農畜産業振興機構(ALIC)が調整金を徴収します。
- ALICは、集めた調整金と国費を財源に交付金を交付します。でん粉原料用いもの生産者へはでん粉原料用いも交付金が、いもからでん粉を作る製造事業者へは国内産いもでん粉交付金が交付されます。
つまり、輸入品を使う人が負担した調整金が、国産のでん粉原料用いもを支える財源になっています。国内産いもでん粉交付金は原料からでん粉を作る製造事業者に交付されるもので、生産者へ直接支払われるでん粉原料用いも交付金(かんしょ)やゲタ対策(ばれいしょ)とは別の交付金です。この構図は、さとうきびの甘味資源作物交付金とてん菜のゲタ対策と同じ考え方です。
でん粉原料用かんしょ・ばれいしょの生産の現状
かんしょは、台風常襲地帯でシラス(火山灰)土壌の多い南九州(鹿児島県・宮崎県)で、他に代替の効かない基幹作物です。鹿児島県では生産量約21万8千トン(令和6年産推計)のうち約2割がでん粉用に仕向けられます。南九州のでん粉原料用かんしょは、農家戸数の減少と高齢化で作付面積が減少傾向にあり、令和7年産は1,390ヘクタール・生産量33千トンとなりました。サツマイモ基腐病の影響で近年は単収が低水準で推移し、機械化の遅れから生産費も10アール当たり16万円台で高止まりしています。
ばれいしょは、北海道の畑作で連作障害を避けるための輪作に欠かせない作物です。北海道の生産量約187万トン(令和6年産推計)のうち、でん粉用の約72万トン(38.6%)が最大の仕向け先です。でん粉原料用ばれいしょの生産は、地域の農業と、でん粉製造業を通じた地域経済にとっても重要な役割を担っています。価格下落など収入減少のリスクに備えたい場合は、ゲタ対策とあわせて収入保険と農業共済・ナラシ対策の違いも確認しておきましょう。
キーワード解説
でん粉原料用いも交付金
でん粉原料用のいも(主にかんしょ)の生産者に交付される生産者交付金です。糖価調整制度に基づき、農畜産業振興機構(ALIC)から交付されます。北海道のでん粉原料用ばれいしょの生産者は、この交付金ではなくゲタ対策の対象になります。
畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)
生産条件が不利な畑作物の生産を支える、経営所得安定対策の交付金です。麦・大豆・そば・なたねと、北海道産のてん菜・でん粉原料用ばれいしょが対象で、数量払と面積払(営農継続支払)を受け取れます。
国内産いもでん粉交付金
糖価調整制度に基づき、かんしょやばれいしょからでん粉を作る製造事業者に交付される交付金です。生産者へ直接支払われるものではありません。
糖価調整制度
輸入品と国産品の大きな価格差を調整し、国産の砂糖・でん粉づくりと安定供給を成り立たせる仕組みです。砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律に基づき、輸入品から調整金を徴収し、国産の生産者・製造事業者へ交付金として交付します。
農畜産業振興機構(ALIC)
糖価調整制度を運営する独立行政法人です。輸入品から調整金を徴収し、でん粉原料用いもの生産者や国内産いもでん粉の製造事業者へ交付金を交付します。
品目別経営安定対策
さとうきび・でん粉原料用かんしょなどの品目ごとに、生産者の経営を安定させるための交付金の枠組みです。交付金を受け取れる生産者の区分(交付対象者要件)が定められています。
交付金を受け取るまでの流れ
作物や地域で窓口・様式が異なるため、次の順に確認して進めましょう。
- 自分が作るいもがどの交付金の対象かを確認します(でん粉原料用かんしょ=でん粉原料用いも交付金、でん粉原料用ばれいしょ=ゲタ対策)。
- 交付対象者の要件を満たすかを確認します(かんしょはB-1〜B-4のいずれか、ばれいしょは認定農業者・集落営農・認定新規就農者)。
- でん粉工場や実需者との出荷・販売の契約を結びます。
- 地域農業再生協議会・都道府県・地方農政局・農畜産業振興機構(ALIC)など所定の窓口で交付申請の手続きを行います。
- 生産・出荷した数量(かんしょは重量、ばれいしょは数量と作付面積)が確定した後、交付金を受け取ります。
よくある質問
でん粉原料用かんしょの交付金はどれだけ受け取れますか
令和8年産のでん粉原料用いも交付金(生産者交付金)の単価は、コガネセンガンなどの特定品種が1,000キログラム当たり36,010円(免税事業者)・34,870円(課税事業者)、その他品種が32,150円(免税事業者)・31,130円(課税事業者)です。この交付金は、でん粉工場へ売った原料の販売代金に上乗せして受け取れます。面積払はありません。
でん粉原料用ばれいしょの交付金はどれだけ受け取れますか
でん粉原料用ばれいしょはでん粉原料用いも交付金ではなく、畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)の対象です。令和8年産の数量払は1トン当たり15,030円(免税事業者)・14,090円(課税事業者)で、これに面積払(営農継続支払)が10アール当たり2万円加わります。北海道産が対象です。
交付金の対象になる生産者の要件は何ですか
でん粉原料用かんしょは、認定農業者等(B-1)、一定の作業規模を有する者(B-2)、共同利用組織への参加者(B-3)、基幹作業の委託者(B-4)の4区分のいずれかが対象です。B-3・B-4は基幹作業の原則2分の1以上を共同作業または委託で実施します。でん粉原料用ばれいしょのゲタ対策は、認定農業者・集落営農・認定新規就農者(規模要件なし)が対象です。
かんしょとばれいしょで交付金の制度が違うのはなぜですか
でん粉原料用ばれいしょは、麦・大豆・てん菜と同じ北海道の畑作物としてゲタ対策の対象になっています。一方、でん粉原料用かんしょはゲタ対策の対象作物ではないため、糖価調整制度のでん粉原料用いも交付金で生産者の手取りを支えています。さとうきびが甘味資源作物交付金、てん菜がゲタ対策で支えられているのと同じ整理です。