相続や引き受けで農地が荒れてしまい、再生してもう一度使いたい、あるいは誰かに貸したいと考える方に向けて、荒廃農地の見分け方と、再生に使える国・都道府県・市町村の補助、相談先までを整理します。全国の荒廃農地は約26万ヘクタールにのぼり、そのうち再生利用が可能なものが約10万ヘクタールあります。補助率や単価、対象の最終判断は、必ず市町村・都道府県・地方農政局の最新の案内で確認してください。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる方 | 相続・引き受けなどで荒れた農地(耕作放棄地・荒廃農地)を持つ農家・農業法人・集落営農・受け手農家、地域・市町村 |
| 使える主な補助 | 国=農山漁村振興交付金(最適土地利用総合対策)/都道府県・市町村の再生事業/放牧・簡易整備の各事業 |
| 補助の目安 | 再生作業10アール当たり3万円前後、条件整備込みで5万〜7万5千円、粗放的利用1万円/10アール、放牧活用は上限5万円/10アール |
| まず相談する先 | 市町村の農政担当・農業委員会、都道府県、地方農政局。国の交付金は農林水産省 農村振興局 地域振興課 |
荒廃農地・耕作放棄地とは
荒廃農地とは、現に耕作に使われておらず、耕作の放棄によって荒れ、通常の農作業では作物の栽培が客観的にできなくなっている農地です。市町村と農業委員会が現地を毎年調べて把握します。全国の荒廃農地は約26万ヘクタールで、耕地面積(約424万ヘクタール)と比べても小さくない広さが使われないまま残っています。
荒廃農地は、再生できるかどうかで大きく二つに分かれます。ここが補助や手続きの分かれ道になります。
- 再生利用が可能な荒廃農地:抜根・整地・区画整理・客土などで再生すれば、通常の農作業ができるようになると見込まれる農地です。全国で約10万ヘクタールあります。
- 再生利用が困難と見込まれる荒廃農地:森林のような状態になっているなど、農地に戻すための物理的な条件整備が著しく難しい、または戻しても継続して使えないと見込まれる農地です。全国で約16万ヘクタールあります。
言葉が似ている遊休農地や耕作放棄地とは、調べ方も範囲も異なります。遊休農地は農地法にもとづく区分で、現に使われず今後も使われる見込みがない「1号遊休農地」と、周りの農地に比べて利用の程度が著しく劣る「2号遊休農地」に分かれます。このうち1号遊休農地は、再生利用が可能な荒廃農地と同じものを指します。一方、耕作放棄地は農林業センサスの用語で、以前耕作していた土地のうち、過去1年以上作付けせず、この数年に再び作付けする意思がないと農家が自己申告した土地です。荒廃農地・遊休農地が市町村・農業委員会の現地調査による把握であるのに対し、耕作放棄地は農家の申告にもとづく調査という違いがあります。
自分の農地はどちらかを確かめる
再生に補助を使えるかどうかは、まず自分の農地が「再生利用が可能」かどうかで決まります。抜根・整地・客土などで農地に戻せそうであれば、多くの再生事業の対象になります。森林のようになっていて戻すのが難しい場合は、農地としての再生は対象外でも、放牧や緩衝帯としての利用、別の土地利用が検討できることがあります。
判定は市町村と農業委員会の現地調査で行われます。荒れた農地を抱えたら、地目や名義とあわせて、その農地が再生利用が可能な区分かどうかを市町村の農政担当・農業委員会に確認しましょう。ここが再生に向けた最初の一歩です。
再生・解消の進め方には複数の入口があります
荒廃農地の再生・解消には、いくつかの入口があります。地域ぐるみの話合いで農地の使い方を描き直す、簡易な農地整備を行う、放牧で維持する、新規就農者や企業の参入で担い手を確保する、農地バンクに預けて再生してもらう、といった方法です。どの入口を選ぶかで使える補助と実施主体が変わります。以下では、荒れた農地を抱えた方が特に使いやすい支援を、国・都道府県・市町村の順に整理します。
国の補助で地域ぐるみで再生する
国の代表的な枠組みが、農山漁村振興交付金(最適土地利用総合対策)です。地域ぐるみの話合いで、営農を続けて守る農地、粗放的に使う農地などを区分し、将来の土地利用構想を作って、その実現に必要な活動費・整備費を支援します。中山間地域等の複数集落を対象とし、実施主体は市町村・農業委員会・JA・土地改良区・地域運営組織などです。
受けられる支援の目安は次のとおりです。
- ソフト定額:土地利用構想の策定や実証事業などに、交付額の上限は年当たり1,000万円です。
- 粗放的利用体制整備:放牧や蜜源作物の作付けなど粗放的な利用に、10アール当たり1万円(その他の土地利用は5,000円)を最大3年間受けられます。
- ハード定率:基盤整備などに、補助率55%等・交付額の上限は年当たり2,000万円です。
あわせて、荒廃農地の再生作業そのものを補助率2分の1以内で支援する荒廃農地再生支援事業もあります。地域として面的に荒廃農地に取り組みたい場合は、この交付金が中心になります。相談は市町村・都道府県・地方農政局のほか、国の窓口である農林水産省 農村振興局 地域振興課で受け付けています。
都道府県・市町村の再生事業を使う
多くの都道府県・市町村が、荒廃農地・耕作放棄地の再生に独自の補助を設けています。名称や単価は地域ごとに異なりますが、代表的な補助の目安は次のとおりです。
| 取組 | 補助の目安(10アール当たり) | 例 |
|---|---|---|
| 再生作業(抜根・整地・深耕など) | 3万円前後 | 栃木・熊本など3万円/10アール |
| 条件整備込み(暗渠排水・客土など) | 5万〜7万5千円 | 秋田は条件整備で上限5万円、高知は障害物撤去込みで上限7万5千円 |
| 放牧・景観作物での活用 | 定額(数万円規模) | 香川6万円、富山は景観改善型で上限5万円 |
| 樹園地の再生 | 20万円 | 和歌山・山梨など樹園地20万円/10アール |
放牧・簡易整備など状況に合わせた手段
再生の方法は、農地の状態や目的に合わせて選べます。
- 放牧で解消する:傾斜地などを放牧地として使う整備に、強い農業づくり総合支援交付金の耕作放棄地活用整備で10アール当たり上限5万円(傾斜地等の活用整備は上限7万円)を使えます。
- 簡易な農地整備とあわせて解消する:農地耕作条件改善事業では、畦畔除去や暗渠排水などの整備に補助率2分の1等で取り組めます。総事業費200万円以上・農業者2者以上などの要件があります。
- 農地バンクに預けて整備する:農地中間管理機構(農地バンク)に預けた農地は、農地中間管理機構関連農地整備事業により、農業者の費用負担によらず都道府県が基盤整備を行える仕組みがあります。
再生した農地を自分で使い続けるのではなく、担い手に貸したい場合は、農地バンク(農地中間管理機構)の使い方もあわせて確認しましょう。貸借・集約の手続きはそちらにまとめています。
再生・活用の進め方
荒れた農地を再生して使うまでの流れは、おおむね次のとおりです。
- 市町村の農政担当・農業委員会に相談し、自分の農地が再生利用が可能な区分かどうかを確認します。
- 地域の話合い(地域計画や最適土地利用構想)に、自分の農地の使い方を位置づけます。
- 国の交付金か、都道府県・市町村の単独事業かなど、使える事業を市町村・都道府県・地方農政局と選びます。
- 交付申請と計画づくりを行い、抜根・整地・客土などの再生作業と、作付け・放牧などを実行します。
- 自ら営農・放牧して使い続けるか、農地バンクを通じて担い手へ貸し付けて継続利用につなげます。
荒れさせないための予防
荒廃農地は周辺の農地にも悪影響を及ぼし、いったん荒れると解消に多額の費用がかかります。荒れさせないための予防にも支援があります。地域・集落の共同活動には多面的機能支払交付金、中山間地域では中山間地域等直接支払交付金(第6期対策は令和7〜11年度)を使えます。鳥獣被害で耕作が難しくなっている場合は、鳥獣被害防止総合対策交付金による侵入防止柵の整備などとあわせて、荒廃を防げます。やむを得ない事情で営農が続けられなくなる場合に備えて、早めに地域ぐるみの取組を進めておくことが有効です。
よくある質問
再生利用が可能な荒廃農地と、農地法の遊休農地は同じですか
再生利用が可能な荒廃農地は、農地法第32条第1項第1号の遊休農地(1号遊休農地)と同じものを指します。抜根・整地・客土などで通常の農作業ができるようになると見込まれる農地です。判定は市町村・農業委員会の現地調査で行われます。
森林のようになった農地(再生が困難な農地)は活用できませんか
農地としての再生は難しくても、放牧地や緩衝帯としての利用、あるいは営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)のような別の活用を検討できる場合があります。まずは農地の区分と使える選択肢を市町村に確認しましょう。
相続で引き受けた荒れた農地から、まず何をすればよいですか
相続した農地は、名義の変更や農業委員会への届出などの手続きが必要です。農地を相続したときの手続きを確認したうえで、その農地が再生利用が可能かどうかと、使える再生事業を市町村・農業委員会に相談してください。
補助はどのくらい受けられますか
都道府県・市町村の単独事業では、再生作業に10アール当たり3万円前後、暗渠排水や客土などの条件整備まで含めると5万〜7万5千円程度を補助する例が多く見られます。国の農山漁村振興交付金や放牧活用の事業は別枠です。単価や補助率は事業ごとに異なるため、農地のある市町村・都道府県で確認してください。
キーワード解説
荒廃農地
現に耕作に使われておらず、耕作の放棄によって荒れ、通常の農作業では作物の栽培が客観的にできなくなっている農地です。市町村・農業委員会の現地調査で毎年把握され、再生利用が可能な農地と、再生が困難と見込まれる農地に区分されます。
遊休農地
農地法にもとづく区分で、現に使われず今後も使われる見込みのない1号遊休農地と、周りに比べて利用の程度が著しく劣る2号遊休農地に分かれます。1号遊休農地は、再生利用が可能な荒廃農地と同じものです。
最適土地利用総合対策
農山漁村振興交付金の一つで、中山間地域等において地域ぐるみの話合いで最適な土地利用構想を作り、農用地の保全や荒廃農地の解消を総合的に支援する枠組みです。粗放的利用への10アール当たりの支援や、ソフト・ハードの費用支援があります。
農地中間管理機構(農地バンク)
農地の所有者から農地を借り受け、担い手へ貸し付ける公的な仲介役です。再生した農地を担い手に貸したい場合や、機構が借り入れた農地を都道府県が整備する仕組みを使いたい場合の窓口になります。