農業委員会から封書が届き、持っている畑が遊休農地に当たると書かれている。どう答えればよいのか、放っておくと何が起きるのか。相続で農地を引き継いだ方や、離れた土地を持ち続けている兼業農家からよく出る不安です。結論から言えば、期限内に意向を返せば不利益は生じません。放置した場合にだけ、課税の強化と利用権の移転へ進みます。順に整理します。

概要

項目内容
対象となる方 1年以上作っていない農地を持つ所有者、相続で農地を引き継いだ方、兼業農家
誰が調べるか 市町村の農業委員会。毎年1回、管内の農地の利用状況を調査する
届く書類 利用意向調査。自ら耕作するか、農地バンクを利用するか、貸し付けるかを問われる
意向を返せば 勧告は行われない。農地バンク側の事情で貸付けが実現しない場合も同じ
放置すると 協議の勧告を受け、固定資産税の評価額が1.8倍になる
さらに進むと 都道府県知事の裁定で、農地バンクが利用権を取得できる
解除される場合 遊休農地の解消が確認された、農地バンクが借り入れた、裁定で権利を取得した
詳しくは 農地のある市町村の農業委員会事務局

農地パトロールは何を調べているか

農地パトロールは、農業委員会が農地法にもとづいて毎年1回行う利用状況調査の通称です。管内の農地を回り、実際に作られているか、荒れていないかを確認します。以前は農地法にもとづく遊休農地の利用状況調査と、荒廃農地の調査が別に行われていましたが、現在は1つに統合されています。

この調査で遊休農地とされた農地の所有者に対して、次の段階として利用意向調査が実施されます。つまり通知が届いたということは、調査の結果が出て、農業委員会があなたの意向を確認しようとしている段階です。まだ何かを取り上げられる話ではありません。

遊休農地と判断される基準

遊休農地に当たるのは次の2つです。

  • 1年以上耕作されておらず、かつ今後も耕作される見込みがない農地
  • 周辺地域の農地と比べて、利用の程度が著しく劣っている農地

1年作らなかっただけで自動的に該当するわけではなく、「今後も作られる見込みがない」という判断が加わります。周りが普通に作っているなかで著しく手が入っていない場合も対象です。あわせて、耕作していた方が亡くなったなどの事情で遊休農地になるおそれが高い農地も、調査の対象に含まれます。相続の直後に通知が届くのは、この枠に当たることが多いためです。

利用意向調査は3つから選ぶ

利用意向調査で問われるのは、その農地をこれからどうするかです。選ぶのは次の3つです。

  1. 自ら耕作する
  2. 農地中間管理事業(農地バンク)を利用する
  3. 誰かに貸し付ける

自分で作り直すつもりがあるなら1つ目、担い手を探してもらいたいなら2つ目、借り手の心当たりがあるなら3つ目です。判断がつかない場合でも、農業委員会事務局に相談して意向を示すことが大切です。返さないまま放置することが、次の段階に進む唯一の引き金になります。

遊休農地に関する農地法の措置の概要図。農業委員会の利用状況調査(毎年)から、遊休農地の判定基準、所有者への利用意向調査(自ら耕作するか・農地中間管理事業を利用するか・誰かに貸し付けるか)、意向表明どおり行わない場合の農地バンクとの協議勧告、都道府県知事の裁定までの流れが示されている。
毎年の利用状況調査から、利用意向調査、協議の勧告、都道府県知事の裁定へ至る流れ。所有者等を確知できない農地は公示・裁定の手続で処理される。出典:農林水産省「遊休農地対策について

意向を返せば勧告されない

ここがもっとも誤解されやすい点です。協議の勧告が行われるのは、農地バンクへの貸付けの意思を表明せず、自ら耕作の再開も行わないなど、遊休農地を放置している場合に限られます。利用意向調査で農地バンクへ貸す意思を表明していれば、農地バンク側の事情で貸付けが行われていなくても、勧告は行われません。借り手が見つからなかった責任を所有者が負う仕組みにはなっていません。

実際、課税強化の対象になっている遊休農地は全国で427件・67ヘクタールにとどまります。そのうち直近1年で新たに対象になったのは63件・12ヘクタールです。件数の多い県は岡山県185件、新潟県106件、青森県41件で、対象がまったくない県も多くあります。全国の遊休農地の面積に照らせば、勧告まで進む例はごく限られています。意向を返すという一手間で、ほぼ避けられる話だと分かります。

遊休農地の課税の強化を説明する図。対象は農業委員会が農地中間管理機構との協議を勧告した農業振興地域内の遊休農地に限られ、貸付けの意思を表明した場合や非農地と判断された場合は勧告が行われないこと、勧告撤回により課税強化が解除される3つの場合、通常の農地の評価額に限界収益率0.55を乗じないため結果的に1.8倍になることが記されている。
課税強化の対象は勧告を受けた遊休農地に限られる。意向を表明した場合と非農地と判断された場合は勧告が行われない。出典:農林水産省「遊休農地の課税の強化」(PDF)

放置すると何が起きるか

意向を表明しない場合、または表明した内容どおりの取組を行わない場合(権利の設定等をしない、利用の増進を図らない)には、農業委員会が農地バンクとの協議を勧告します。この勧告を受けると、次の2つが起こります。

1つ目は固定資産税の評価額が1.8倍になることです。通常の農地は売買価格に0.55という限界収益率を掛けて評価されますが、勧告を受けた遊休農地はこの0.55を掛けません。結果として評価額が1.8倍になります。対象は農業振興地域内の農地で、毎年1月1日が賦課期日のため、その時点で勧告を受けているかどうかで判定されます。農地バンクに貸した場合の税の軽減や、解消に使える補助については遊休農地解消対策事業と農地バンクの条件で詳しく整理しています。

2つ目は利用権が移ることです。協議が整わない場合、都道府県知事の裁定によって農地バンクが農地中間管理権を取得できます。所有権が移るわけではありませんが、一定期間、自分の判断で使えなくなります。所有者等を確知できない農地(共有地では過半の持分を持つ人が分からない場合)については、公示を経て同じく裁定の手続で処理されます。

勧告を受けた後でも、次のいずれかに当たれば勧告は撤回され、翌年度以降の課税強化は解除されます。

  • 利用状況調査などで、遊休農地が解消されたことが確認された場合
  • 農地バンクとの借入協議の結果、農地バンクがその農地を借り入れた場合
  • 裁定により農地バンクが農地中間管理権を取得した場合

農地に戻せない場合は非農地判断

すでに森林の様相を呈しているなど、農地として再生できない状態であれば、農業委員会が非農地と判断することがあります。非農地と判断された場合、勧告は行われません。長年放置して木が生えてしまった土地について、いまから耕作を約束するのは現実的ではありません。現況を農業委員会に見てもらい、どちらの扱いになるかを確認するのが先です。

再生できる見込みがあり、自ら耕作する意向を選ぶなら、再生にかかる費用を支援する補助があります。荒廃農地の再生に使える補助金で対象と補助率を確認できます。

通知が来てからの流れ

  1. 通知の内容と対象の地番を確認します。自分が把握している農地と一致しているか、相続した土地が含まれていないかを見ます。
  2. 現況を確認します。作り直せる状態か、木が生えて再生が難しい状態かで選ぶ道が変わります。
  3. 3つの選択肢のうちどれを選ぶかを決めます。判断がつかない場合は農業委員会事務局へ相談します。
  4. 期限内に利用意向調査に回答します。ここで意向を表明すれば、勧告には進みません。
  5. 農地バンクの利用を選んだ場合は、市町村や農地バンクとの手続きを進めます。貸付けが実現しなくても勧告はされません。
  6. 自ら耕作を選んだ場合は、実際に作付けまで進めます。表明どおりの取組を行わないと勧告の対象になります。

いま確認しておきたいこと

利用状況調査は毎年行われ、収穫期に合わせて夏から秋にかけて実施する市町村が多くあります。通知が届いてから慌てないために、離れた場所にある農地や相続で引き継いだ農地の現況を、いまのうちに把握しておきましょう。とくに相続直後は「遊休農地になるおそれが高い農地」として調査の対象に入りやすくなります。相続した農地の届出や名義の手続きが済んでいない場合は、農地を相続したときの手続きから先に片づけると、意向を返す判断もしやすくなります。

もし作り続ける意思があるのに人手や機械が足りないという理由で手が回っていないのなら、貸すという選択は損ではありません。農地バンクを通じて貸せば、地域の担い手に集積され、固定資産税の軽減や協力金の対象になる場合もあります。放置して1.8倍の課税を受けるより、条件のよい選択肢が残っている段階で動く方が有利です。

よくある質問

農地パトロールの通知が来たら何をすればよいですか

同封されている利用意向調査に、期限内に回答してください。選ぶのは自ら耕作する、農地中間管理事業(農地バンク)を利用する、誰かに貸し付けるの3つです。この意向を表明すれば、協議の勧告には進みません。判断がつかない場合も放置せず、農地のある市町村の農業委員会事務局へ相談しましょう。放置することだけが次の段階に進む引き金になります。

1年作らなかっただけで遊休農地になりますか

それだけでは決まりません。遊休農地に当たるのは、1年以上耕作されておらず、かつ今後も耕作される見込みがない農地か、周辺の農地と比べて利用の程度が著しく劣っている農地です。今後作る見込みがあるかどうかの判断が加わります。ただし耕作していた方が亡くなった場合などは、遊休農地になるおそれが高い農地として調査の対象になります。

農地バンクに貸すと答えたのに借り手が見つかりませんでした。勧告されますか

されません。利用意向調査で農地バンクへの貸付けの意思を表明していれば、農地バンク側の事情で貸付けが行われていなくても勧告は行われない決まりです。借り手が見つからないことの責任を所有者が負う仕組みにはなっていません。表明した内容どおりに手続きを進めている限り、課税強化にも進みません。

固定資産税が1.8倍になるのはどういう場合ですか

農業委員会から農地バンクとの協議を勧告された、農業振興地域内の遊休農地が対象です。通常の農地は売買価格に限界収益率0.55を掛けて評価しますが、勧告を受けた遊休農地はこの0.55を掛けないため、結果として評価額が1.8倍になります。毎年1月1日が賦課期日で、その時点で勧告を受けているかで判定されます。勧告が撤回されれば翌年度以降は解除されます。

木が生えてしまって農地に戻せません。どうなりますか

すでに森林の様相を呈しているなど農地として再生できないと農業委員会が判断した場合は、非農地と判断され、勧告は行われません。まずは現況を農業委員会に確認してもらいましょう。再生できる見込みがある場合は、荒廃農地の再生に使える補助の対象になることがあります。

勧告を受けた後でも取り消せますか

取り消せます。利用状況調査などで遊休農地が解消されたことが確認された場合、農地バンクとの借入協議の結果として農地バンクがその農地を借り入れた場合、裁定によって農地バンクが農地中間管理権を取得した場合のいずれかに当たれば、勧告は撤回され、翌年度以降の課税強化は解除されます。

キーワード解説

利用状況調査(農地パトロール)

農業委員会が農地法にもとづき、毎年1回、管内の農地の利用状況を調べる調査です。農地パトロールという通称で呼ばれます。以前は別に行われていた荒廃農地の調査と統合されています。この調査で遊休農地とされた農地の所有者に対して、次の段階として利用意向調査が実施されます。

利用意向調査

遊休農地の所有者等に対して、その農地をこれからどうするかを確認する調査です。自ら耕作するか、農地中間管理事業を利用するか、誰かに貸し付けるかを問われます。ここで意向を表明することが、協議の勧告と課税強化を避ける分かれ目になります。

協議の勧告

意向を表明しない場合や、表明どおりの取組を行わない場合に、農業委員会が農地バンクとの協議を勧告する措置です。勧告を受けると固定資産税の評価額が1.8倍になり、協議が整わなければ都道府県知事の裁定で農地バンクが農地中間管理権を取得できます。遊休農地を放置している場合に限って行われます。

非農地判断

すでに森林の様相を呈しているなど、農地として再生することが不可能であると農業委員会が判断することです。非農地と判断された場合は協議の勧告が行われず、課税強化の対象にもなりません。

出典:農林水産省「遊休農地対策について」(利用状況調査と利用意向調査の実施、遊休農地の判定基準、協議の勧告と都道府県知事の裁定、所有者等を確知できない場合の公示・裁定手続、荒廃農地調査との統合)、農林水産省「遊休農地の課税の強化」(対象の限定、勧告が行われない場合、勧告撤回による解除、限界収益率0.55と1.8倍の関係、賦課期日)、農林水産省「遊休農地の課税強化の適用実績」(全国427件・67ヘクタール、うち新規63件・12ヘクタール、都道府県別の件数)。調査の実施時期、回答の期限、非農地判断の取扱いは市町村によって異なります。対象の地番や個別の判断は、農地のある市町村の農業委員会事務局へご確認ください。