トラクターやコンバインに入れる軽油は、手続きをすれば1リットル当たり15円の軽油引取税がかからずに買えます。この農業用の免税軽油は、都道府県税事務所で「免税軽油使用者証」と「免税証」の交付を受け、免税証をガソリンスタンドなどの販売店に出して給油する仕組みです。年間の使用量から削減額を計算する表、対象になる機械とならない車両、申請から報告までの流れ、令和9年3月31日の期限と延長の見通しを、農林水産省と都道府県の公式案内をもとに整理します。

対象となる方農業を営む方。基幹的な農作業のすべてを機械で受託する作業受託者も対象
対象の軽油耕うん整地用・栽培管理用・収穫調整用・植物繊維用・畜産用の機械の動力源に使う軽油
安くなる額1リットル15円。年間1,000リットルで15,000円
対象外道路運送車両法の登録を受けた車両(白ナンバーの軽トラック等)、公道走行・道路上の作業
申込先機械を使う事業所を所管する都道府県税事務所
有効期間使用者証は3年以内、免税証は1年以内。いずれも令和9年3月31日が上限
期限令和9年3月31日まで。3年延長を農林水産省が要望中

年間の使用量で決まる削減額

免税軽油の効果は「使った量×15円」で計算できます。給油の時点で税額分が引かれた価格で買えるため、後から還付を申請する仕組みではありません。

年間の軽油使用量いまの削減額(15円)2026年3月までの削減額(32.1円)
500リットル7,500円16,050円
1,000リットル15,000円32,100円
3,000リットル45,000円96,300円
5,000リットル75,000円160,500円
10,000リットル150,000円321,000円

軽油引取税は2026年3月31日まで1キロリットル当たり32,100円でした。上乗せされていた当分の間税率(旧暫定税率)17.1円が廃止され、4月1日以降は本来の税率の15,000円になっています。免税軽油で浮く額もこれに合わせて15円に縮みました。ネット上に残る「1リットル32.1円安くなる」という説明は、税率が変わる前の数字です。

自分の使用量の目安は、県が定める交付基準からもつかめます。福井県の基準では、水稲は春耕・秋耕・刈取りを合わせて1アール当たり1.2リットルです。水稲10ヘクタールなら年1,200リットルで、削減額は18,000円になります。基準は都道府県ごとに違うため、自分の県の数字は税事務所の案内で確かめてください。

対象になる機械とならない車両

農業に使用する軽油引取税の免税の案内。対象は耕うん整地用機械、栽培管理用機械、収穫調整用機械、植物繊維用機械、畜産用機械の動力源に使う軽油。手続きは免税軽油使用者証の交付、免税証の交付、販売店で免税証を提示して購入、購入数量の報告の4段階。税率は1リットル15円で、1,000リットル使うと15,000円の効果
対象となる軽油と免税の手続き(出典:農林水産省「農業に使用する軽油引取税の免税」)

免税になるのは、農業の用に供する次の5種類の機械の動力源に使う軽油です。

  • 動力耕うん機その他の耕うん整地用機械(トラクターなど)
  • 栽培管理用機械(田植機、防除用の機械など)
  • 収穫調整用機械(コンバインなど)
  • 植物繊維用機械
  • 畜産用機械

秋田県は主な機械として、耕起・代かきに使うトラクター、稲刈りに使うコンバイン、田植機を挙げています。機械ごとに型式と軸馬力を申請書に書き、カタログや写真を添えて登録します。登録していない機械に入れた軽油は免税になりません。

対象外は、道路運送車両法第4条の登録を受けた車両と、道路を走る・道路上で作業する使い方です。白ナンバーの軽トラックで出荷に行く軽油は、農業に使っていても課税されます。福井県の記入例も、白ナンバーの付いた機械は対象外と明記しています。乾燥機など個別の機械が対象に入るかどうかは、管轄の都道府県税事務所が判断します。

作業を請け負う側も対象です。基幹的な農作業(専ら機械で行うもの)のすべてを受託する方は、自分の機械で使う軽油に免税を受けられます。機械を地域で持ち合う方法は農機の共同利用と農業支援サービスで扱っています。

免税軽油を使うまでの手続きの流れ

申請先は、免税機械を使う事業所を所管する都道府県税事務所です。JAや農業委員会は書類の一部(耕作面積の証明)を出す役割で、免税証そのものは県が交付します。

  1. 免税軽油使用者証交付申請書に、誓約書、機械の売買契約書・納品書・写真のいずれか、型式と軸馬力の分かるカタログを添えて県税事務所へ出します。福井県は使用開始の1か月以上前の申請を求めています。
  2. 免税軽油使用者証の交付を受けます。東京都の場合、交付は申請からおおむね6開庁日後です。
  3. 免税証交付申請書に、使用者証と所要数量計算書を添えて出します。所要数量計算書には、JAか農業委員会による耕作面積の証明が要ります。給油する販売店名と、希望する券種(1リットル券から1万リットル券まで)も書きます。
  4. 免税証の交付を受けたら、免税証に書かれた販売店で、免税証と引き換えに軽油を買います。店頭で税額分が引かれた価格になります。
  5. 買った数量と使った機械を「免税軽油の引取り等に係る報告書」で報告し、納品書か請求書の写しを添えます。余った免税証は返納します。

報告の期日は都道府県で違います。東京都と宮崎県は毎月、前月分を月末までに出す方式です。福井県は毎月か、免税証の有効期間が終わった翌月末までの提出としています。報告を出していないと次の免税証が交付されないことがあります。

福井県は、春の農作業前の2月から3月に申請が集中して混雑すると案内しています。シーズン途中で免税証が足りなくなったら、追加分を使い始める20日以上前に追加申請ができます。東京都では、2024年10月からeLTAXによる電子申請も使えるようになっています。

免税軽油の扱いで守ること

  • 免税証を他人に譲る・譲り受ける行為は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
  • 免税軽油を承認なく他人に譲る行為は、有償・無償を問わず2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
  • 報告書の未提出・虚偽記載は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
  • 機械を売却・廃車するときは、タンクに残った免税軽油を事前に移すか、その分を申告納付

機械を買い替えたり増やしたりしたときは、使用者証の書換えを先に済ませます。手続き前に新しい機械へ免税軽油を入れると、さかのぼって課税されます。機械作業の日報や納品書は、税事務所の調査に備えて保管しておきましょう。東京都はおおむね7年間の保管を求めています。

令和9年3月31日の期限と延長の見通し

農業用の免税は地方税法附則に置かれた期限付きの特例で、令和6年4月1日から3年間延長された結果、いまの期限は令和9年3月31日です。使用者証と免税証の有効期間も、この日が上限になっています。

農林水産省は令和8年8月31日に公表した令和9年度税制改正要望で、軽油引取税の課税免除の特例措置の3年延長を主要事項の1番目に掲げました。延長されるかどうかは、例年12月中旬にまとまる与党の税制改正大綱で方向が決まります。現時点で延長は確定していません。

時期起きること
令和8年8月31日農林水産省が3年延長を要望
例年12月中旬税制改正大綱で延長の可否の方向が決まる
2月から3月春作業に向けた免税証の申請が集中
令和9年3月31日いまの措置と、交付済みの使用者証・免税証の期限

延長が決まった場合も、4月以降も免税軽油を使い続けるには使用者証の更新手続きが要ります。東京都は、有効期間が終わる前に新規と同じ手続きをするよう案内しています。12月の大綱が出たら、県税事務所の受付日程の案内を確かめてください。

燃料費の負担を減らす制度は軽油のほかにもあります。ハウスの暖房に使う重油や灯油は、施設園芸の燃料価格セーフティネットで価格が上がった月の差額が補填されます。機械の買い替えを検討しているなら、トラクター購入に使える補助金も合わせて見ておくと判断しやすくなります。

よくある質問

軽トラックに入れる軽油も免税になりますか

なりません。道路運送車両法の登録を受けた車両と、公道を走る使い方は対象外です。出荷や移動に使う白ナンバーの車両は、農業のための走行でも課税されます。

免税軽油はどこで申請しますか

機械を使う事業所を所管する都道府県税事務所です。所要数量計算書に付ける耕作面積の証明は、JAか農業委員会で受けます。秋田県のように農業委員会の耕作証明を求める県もあります。

小規模な農家でも申請する意味はありますか

年間500リットルの使用で7,500円です。使用者証の申請、免税証の申請、毎月などの報告という手間と比べて判断してください。農林水産省は、軽油を多く使う農業者に活用を呼びかけています。

令和9年4月以降も免税軽油は使えますか

現時点では決まっていません。農林水産省が3年延長を要望しており、例年12月中旬の税制改正大綱で方向が示されます。延長されても、使用者証は期限の令和9年3月31日で切れるため更新の手続きが要ります。

作業を請け負っている場合も対象になりますか

基幹的な農作業(専ら機械で行うもの)のすべてを受託している方は対象です。一部の作業だけを請け負う場合は、管轄の都道府県税事務所で該当するか確かめてください。

キーワード解説

軽油引取税

軽油を販売店などから引き取るときにかかる都道府県の税金。2026年4月1日から1キロリットル当たり15,000円(1リットル15円)です。販売店が特別徴収義務者として県に納めるため、利用者は軽油の価格に含まれた形で負担しています。

当分の間税率

軽油引取税の本来の税率15円に上乗せされていた17.1円分。旧暫定税率とも呼ばれ、2026年3月31日で廃止されました。

免税軽油使用者証

免税軽油を使える人と機械を県が認めた証明書。有効期間は3年以内で、現在は令和9年3月31日が上限です。機械を追加・入替えたときは書換えの申請が要ります。

免税証

免税軽油を買うときに販売店へ出す券。1リットル券から1万リットル券まであり、数量・販売店・有効期間(1年以内)が記載されます。番号順に使い、余ったら返納します。