農業で外国人材を受け入れる窓口は、いま在留資格の特定技能(農業)です。耕種農業全般と畜産農業全般が対象で、直接雇用に加えて派遣でも受け入れられます。これまで主力だった技能実習は、令和9年(2027年)4月1日から新制度の育成就労へ切り替わります。新規の技能実習を始める申請は令和9年3月末が事実上の締め切りで、いまいる実習生は認定された計画の期間まで実習を続けられます。誰を、どの雇用形態で、どんな要件のもとに受け入れられるか。そして2027年の制度変更で採用計画をどう組み直すかを、農家・産地の目線で整理します。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受け入れられる方 | 人手不足の野菜・果樹・畜産などの生産者・農業法人・産地。耕種・畜産のいずれも対象 |
| 使える在留資格 | いまは特定技能(農業)。令和9年4月から技能実習は育成就労に替わる |
| 対象業務 | 耕種農業全般(施設園芸・露地野菜・果樹・稲作など)と畜産農業全般。栽培管理または飼養管理を必ず含める |
| 雇用形態 | 直接雇用と派遣のどちらでも受け入れられる(派遣は農業・漁業などに限った例外) |
| 受入れ前の手続き | 農業特定技能協議会に加入してから、地方出入国在留管理局へ在留資格を申請する |
| 詳しくは | 農林水産省・出入国在留管理庁の公式情報と、地方出入国在留管理局・協議会の窓口で確認する |
いま受け入れられる在留資格は特定技能
令和8年6月の時点で、農家がすぐに受け入れられる在留資格は特定技能です。人手不足が深刻な分野で、一定の専門性や技能を持つ外国人を即戦力として受け入れる資格で、農業は対象16分野の一つに入っています。雇用契約を結んだ本人が自分の意思で働きに来る点が、監理団体のもとで「実習」として受け入れてきた技能実習との大きな違いです。
これから採用するなら、まず特定技能1号で受け入れ、実務を積ませて2号へ進めるのが基本の道筋です。育成就労が始まる令和9年4月以降も特定技能は残るため、長く戦力にしたい人材ほど特定技能を軸に計画を組めます。
対象業務は耕種・畜産の全般
特定技能(農業)の業務区分は、耕種農業全般と畜産農業全般の二つです。耕種農業全般には、栽培管理と農産物の集出荷・選別などが含まれ、施設園芸、露地野菜、果樹、花き、稲作まで幅広く対象になります。畜産農業全般には、飼養管理と畜産物の集出荷・選別などが含まれます。雇用にあたっては、栽培管理または飼養管理の作業を必ず任せる必要があります。
製造・加工、運搬、陳列・販売、冬場の除雪などは、農業に関連する付随業務として任せられます。ただしこれらだけを担わせることはできません。野菜農家なら、定植・かん水・収穫・調製・出荷までの一連の作業を任せられます。
技能実習では、耕種は施設園芸・畑作野菜・果樹など、畜産は養豚・養鶏・酪農などと、作目・畜種が細かく区切られていました。特定技能はこれを「全般」とまとめたため、稲作、肉用牛、ブロイラーなど技能実習で対象外だった分野も受け入れられます。複数品目を組み合わせる産地ほど使いやすい設計です。
受入れの要件と1号・2号の違い
特定技能1号で受け入れられる人
特定技能1号で受け入れられるのは、次のどちらかを満たす外国人です。技能試験「1号農業技能測定試験」に合格し、あわせて日本語の要件(国際交流基金日本語基礎テストA2以上、または日本語能力試験N4以上)を満たした人を受け入れられます。または、農業の技能実習2号を良好に修了した人を、技能試験・日本語試験の免除で受け入れられます。いま実習生を受け入れている経営なら、修了後そのまま特定技能で雇い続けられるため、移行先として現実的です。
在留期間と2号への進み方
特定技能1号の在留は、通算で最長5年です。家族の帯同は認められません。特定技能2号は、より熟練した技能を持つ人向けの区分です。農業は令和5年6月9日に2号の対象へ加わり、令和5年12月から2号の技能測定試験が始まりました。2号は在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば家族も帯同できます。長く働いてほしい人材は、1号で受け入れて実務経験を積ませ、2号への移行を見据えられます。
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 相当の知識・経験を持つ即戦力 | 熟練した技能を持つ人材 |
| 在留期間 | 通算5年が上限 | 更新の上限なし |
| 家族の帯同 | 不可 | 要件を満たせば可 |
| 主な要件 | 1号技能測定試験+日本語、または技能実習2号の良好な修了 | 2号技能測定試験+実務経験 |
雇用形態は直接雇用と派遣から選べる
特定技能(農業)は、自社で外国人と直接雇用契約を結ぶほか、派遣でも受け入れられます。派遣が認められているのは農業や漁業など限られた分野だけです。季節による作業の繁閑が大きく、地域や品目をまたいで人材を動かす必要があるためで、夏は高原野菜、冬は別の産地といった形で繁忙期に合わせて人手を確保したい産地に向きます。
派遣で受け入れる場合は、派遣元が農業または農業関連の事業者であることや、派遣元・派遣先がともに農業特定技能協議会の構成員であることなどの条件があります。自社で通年の仕事量を確保できるなら直接雇用、繁忙期だけ厚く人手が要るなら派遣と、作付け計画に合わせて選べます。なお派遣元には、過去5年以内に同じ労働者を6か月以上継続して雇用した経験など、雇用管理の実績を求める基準があります。
受入れまでの手続き
受け入れる側(受入れ機関)には、報酬を日本人と同等以上にすることや、適切な支援体制を整えることといった基準が課されます。1号で受け入れる場合は、外国人の生活・職業上の支援計画を作り、自社または登録支援機関を通じて実施します。手続きの大まかな流れは次のとおりです。
- 受け入れたい人材を探し、業務区分と要件(試験合格、または技能実習2号の良好な修了)を確かめる
- 日本人と同等以上の報酬など雇用条件を決め、雇用契約と支援計画を整える
- 農業特定技能協議会に加入する(在留資格の申請前に加入し、構成員であることの証明書を用意する)
- 地方出入国在留管理局へ在留資格を申請し、許可を得て受入れを始める
外国人材の確保は、雇用そのものの設計とも結び付きます。労働力の確保策を幅広く検討するなら農の雇用・就農ルートの解説記事を、法人として人を雇う体制づくりは農業法人化の解説記事もあわせてご覧ください。
技能実習は2027年4月に育成就労へ替わる
受入れの土台が大きく変わります。令和6年6月に公布された改正入管法と育成就労法により、技能実習制度は発展的に解消され、新制度の育成就労が創設されました。施行日は政令で令和9年(2027年)4月1日に定められています。技能実習が「技能移転による国際貢献」を建前としていたのに対し、育成就労は人手不足分野での人材育成と人材確保を正面の目的に掲げ、特定技能1号の水準まで育てることを狙います。受入れ職種は特定技能と同じ分野にそろえられ、農業も対象に入ります。
在留は原則3年・特定技能への接続
育成就労の在留期間は原則3年で、この間に特定技能1号の水準まで技能と日本語を高めます。技能実習では試験免除で特定技能へ移れる場合がありましたが、育成就労から特定技能1号へ進むときは、技能の試験と日本語の試験に合格する必要があり、免除はなくなります。育てて、試験で力を確かめ、特定技能で長く働いてもらう連続した道筋になります。
本人の意向による転籍が可能になる
技能実習で原則認められなかった転籍(働く受入れ先の変更)が、育成就労では本人の意向でも認められます。同一の業務区分内であること、同じ受入れ先での就労が一定期間を超えていること、技能・日本語の要件を満たすことなどが条件です。この就労期間は分野ごとに1年以上2年以下の範囲で定められ、受入れ機関の判断で1年に短縮することもできます。育てた人材が他社へ移る可能性を前提に、受け入れる側は報酬や住環境を含めて定着してもらえる職場づくりがこれまで以上に問われます。
いまいる技能実習生はどうなるか
令和9年4月1日を迎えても、受入れ中の技能実習生がその日に一斉に育成就労へ切り替わるわけではありません。すでに来日している実習生は、認定された技能実習計画に基づいて実習を続けられます。技能実習1号の人は、計画の認定を受けて2号へ移行できます。技能実習2号の人が3号へ進むには、令和9年4月1日の時点で2号の活動を1年以上行っていることが必要です。3号への移行を見込むなら、令和8年4月までに2号を始めておく必要があります。
新規の受入れには事実上の締め切りがあります。令和9年3月31日までに技能実習計画の認定を申請し、施行日から3か月以内(令和9年6月30日まで)に実習を始める場合に限って、原則として続けられます。これ以降は技能実習として新たに入国させることはできません。技能実習と育成就労は数年かけて並行し、令和12年(2030年)ごろに技能実習はおおむね役目を終える見込みです。
| 時期 | 技能実習の扱い |
|---|---|
| 令和8年4月まで | 技能実習2号を開始しておけば、施行日に1年以上となり3号へ移行できる |
| 令和9年3月31日まで | 新規の技能実習計画の認定申請ができる事実上の期限 |
| 令和9年4月1日(施行) | 育成就労が始まる。いる実習生は認定計画の期間まで継続できる |
| 令和9年6月30日まで | 3月末までに申請した計画で実習を開始できる最終時期 |
| 令和12年ごろ | 経過措置が進み、技能実習はおおむね役目を終える見込み |
監理団体は「監理支援機関」へ衣替えし、育成就労の運用は今後の政省令やガイドラインで具体化されます。実習生を受け入れている経営は、いまいる人を計画満了まで育てつつ、修了後に特定技能へ移す段取りと、令和9年以降に新たに採る人を育成就労で受け入れる段取りの、両方を見ておくと混乱を避けられます。
よくある質問
露地野菜や施設園芸でも特定技能で受け入れられますか
受け入れられます。特定技能(農業)の耕種農業全般には、施設園芸・露地野菜・果樹・花き・稲作などが幅広く含まれます。栽培管理を必ず業務に含めることが条件で、選別・出荷や運搬・販売などは付随業務として任せられます。
繁忙期だけ人手がほしいのですが派遣でも頼めますか
頼めます。農業は派遣による受入れが認められている例外的な分野です。季節による作業の繁閑が大きい産地向けに、派遣元が農業関連の事業者であることや協議会への加入などの条件のもとで派遣を使えます。通年で仕事量を確保できる場合は直接雇用が向きます。
技能実習はいつ廃止されますか。いまの実習生は2027年4月にどうなりますか
技能実習は令和9年(2027年)4月1日に育成就労へ切り替わります。施行日に一斉に切り替わるのではなく、すでに来日している実習生は認定された計画の期間まで実習を続けられます。新規の受入れは、令和9年3月31日までに計画の認定を申請し、6月30日までに実習を始める場合が事実上の最後です。
育成就労から特定技能へは試験なしで移れますか
移れません。育成就労から特定技能1号へ進むには、技能の試験と日本語の試験に合格する必要があります。技能実習2号の良好な修了で試験が免除される従来の扱いとは異なる点に注意してください。
育成就労になると人材が他社へ移ってしまいませんか
育成就労では本人の意向による転籍が認められます。ただし同一の業務区分内であること、同じ受入れ先での一定の就労期間(分野ごとに1年以上2年以下で設定)、技能・日本語の要件などの条件があり、無制限ではありません。報酬や住環境を含めて働きやすい環境を整え、定着につなげることが大切です。
次の一歩
はじめに、自分の経営で通年と繁忙期それぞれにどれだけ人手が必要かを書き出し、直接雇用と派遣のどちらで受け入れるかを決めましょう。次に、任せたい業務が耕種・畜産のどちらの区分に当たるかと、候補者が試験合格・技能実習2号修了のどちらに当たるかを確かめます。技能実習生を受け入れている場合は、令和8年4月までの2号開始や、令和9年3月末までの新規申請といった期限を踏まえ、特定技能への移行と育成就労への切り替えを見据えた計画を立てましょう。制度の最新の運用は出入国在留管理庁と農林水産省の公式情報で確かめ、具体的な手続きは地方出入国在留管理局や農業特定技能協議会の窓口に相談するのが確実です。あわせて、女性や多様な人材が働きやすい職場づくりは農業の女性活躍推進の解説記事も参考になります。
キーワード解説
特定技能
深刻な人手不足の分野で、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れる在留資格です。農業は対象分野の一つで、1号は通算5年が上限、2号は熟練人材向けで在留更新の上限がありません。雇用契約に基づき本人が就労する点が、団体監理型の技能実習と異なります。
技能実習
技能の移転による国際貢献を目的に、監理団体のもとで外国人を「実習」として受け入れてきた制度です。人材確保の実態との隔たりや権利保護の課題が指摘され、発展的に解消されて育成就労へ移ります。施行後も、認定された計画に基づく実習は期間満了まで続けられます。
育成就労
技能実習に代わって創設された新制度で、令和9年(2027年)4月1日に施行されます。人手不足分野での人材育成と人材確保を目的とし、在留は原則3年です。1〜2年の就労後は本人の意向による転籍が認められ、特定技能1号への移行には技能・日本語の試験合格が必要です。