きのこ栽培は、施設のなかで種菌を植えた菌床から通年で収穫でき、農業の経験が浅い方でも始めやすい品目です。生しいたけの94.7%は菌床栽培に切り替わり、天候に左右される原木栽培より計画的に生産できます。この記事では、きのこ農家として独立するときの費用の考え方、経営開始資金や初期投資の補助といった使える支援、無利子の融資、相談先を整理します。

概要

項目 内容
誰が しいたけ・菌床きのこで新たに独立就農したい方、きのこの栽培を広げたい農家
何を 通年生産できる菌床栽培の特徴、初期費用の考え方、経営開始資金・初期投資補助・無利子融資といった使える支援
いつまでに 研修中は最長2年、独立就農後は最長3年。申請は市町村・都道府県の受付期間に合わせて
補助額 交付金は月13.75万円(年間最大165万円)、初期投資は国費上限500万円、無利子融資は限度額3,700万円
詳細はどこで 市町村・都道府県の就農相談窓口、全国新規就農相談センター、林野庁「特用林産物の生産動向」

きのこ栽培は通年で収穫できて始めやすい

しいたけ・えのきたけ・ぶなしめじなどのきのこ類は、林野庁が「特用林産物」として毎年生産量を調べている品目です。なかでも生しいたけは、かつて森林内で原木を使う露地栽培が主流でしたが、いまはおが粉などをブロック状に固めた菌床に種菌を接種して育てる菌床栽培へと切り替わっています。

菌床栽培なら空調を効かせた施設のなかで年間を通して収穫でき、気温や降雨に生産量が左右されにくくなります。まとまった設備は必要になりますが、収穫の計画が立てやすく、初めて農業に取り組む方でも参入しやすい点が特長です。生しいたけの市場は輸入割合が4.2%にとどまり、国産中心で安定した需要があります。主な生産地は徳島県、岩手県、群馬県です。

国産の乾しいたけは減り、輸入が7割を超えている

一方で、コナラやクヌギの原木を使う乾しいたけは、担い手の減少とともに生産量が落ち込んでいます。原木栽培は露地が中心で、気象条件によって収量が大きく動くためです。国内消費に占める輸入の割合は年々上がり、いまは7割を超えました。国産の乾しいたけは希少になりつつあり、品質で差をつけられる新規参入の余地が残っています。

区分 直近の生産・市場
生しいたけ 生産量61,959トン、菌床栽培が94.7%、輸入割合4.2%で国産中心
乾しいたけ 生産量1,574トン、5年間で減少傾向、輸入割合73.7%

菌床栽培と原木栽培の違い

きのこ栽培の始め方は、菌床栽培と原木栽培で大きく変わります。設備の中心も、収穫までの期間も異なるため、どちらで始めるかを先に決めると必要な資金の見通しが立ちます。

項目 菌床栽培 原木栽培
育て方 おが粉等の菌床に種菌を接種 コナラ・クヌギ等の原木に植菌
栽培する場所 空調のきいた施設内 林内・ほだ場など露地が中心
天候の影響 小さく計画的に生産 気温・降雨で収量が変動
収穫の時期 年間を通して収穫 季節性があり収穫まで長い
主に要る設備 培養・空調施設と菌床の購入費 原木の確保とほだ場

初期費用の考え方

きのこ栽培の初期費用は、栽培方法と規模によって幅があります。菌床栽培では培養や空調のための施設と菌床の購入費が中心になり、原木栽培では原木の確保とほだ場づくりが中心になります。公的に一律の目安額は示されていないため、栽培方法と規模を決めてから見積もるのが確実です。

初期投資が重くなりやすい品目だからこそ、次に挙げる交付金・補助・無利子融資を組み合わせて負担を抑えられます。まず栽培計画を固め、その計画に沿って使える支援を選びましょう。

きのこ農家として使える就農支援と補助金

新規就農者向けの支援は、経営開始の前後を支える交付金、機械・施設への補助、無利子の融資という三つを組み合わせて使えます。

経営開始の前後に受けられる交付金

研修中と独立就農後に、生活と経営を支える交付金を受けられます。研修中に受けられる就農準備資金は、都道府県が認めた研修機関などで概ね1年以上学ぶ方が対象で、最長2年間です。独立して経営を始めた後に受けられる経営開始資金は最長3年間で、いずれも金額は同じです。就農準備資金・経営開始資金の要件や金額は経営開始資金・就農準備資金の解説記事で詳しく整理しています。

  • 金額:月13.75万円(年間最大165万円)
  • 期間:就農準備資金は最長2年、経営開始資金は最長3年
  • 年齢:独立・自営就農時に原則49歳以下

機械・施設への初期投資を支える補助

栽培施設や機械の導入には、経営発展支援事業の補助を受けられます。国費の上限は500万円で、経営開始資金とあわせて使うときは250万円になります。国の補助率は原則2分の1で、都道府県が支援する分の2倍を国が上乗せする仕組みです。取組主体は市町村です。地域計画の早期実現を後押しする特別枠では、国費上限が600万円まで広がります。

無利子で借りられる青年等就農資金

設備投資の資金が足りないときは、日本政策金融公庫の青年等就農資金を無利子で借りられます。借入限度額は3,700万円(特認限度額は1億円)で、実質的に無担保・無保証人で利用できます。償還期限は17年以内(うち据置期間は5年以内)です。認定新規就農者が対象で、補助と組み合わせて初期投資をまかなえます。

支援を受けるまでの流れ

きのこ栽培で就農支援を使うときは、次の順で進めると迷いません。

  1. 都道府県・市町村の就農相談窓口や全国新規就農相談センターに相談し、自分のきのこ栽培が農業経営として支援の対象になるかを確認します。
  2. 研修先と栽培方法(菌床か原木か)・規模を決め、青年等就農計画を作成して市町村の認定を受け、認定新規就農者になります。
  3. 就農準備資金・経営開始資金、経営発展支援事業、青年等就農資金のうち必要な支援を選び、市町村・都道府県の受付期間に合わせて申請します。

始める前に確認しておきたいこと

きのこ栽培は林野庁が所管する特用林産物ですが、菌床きのこのように施設で通年生産する経営は「農業経営」として新規就農支援の対象になり得ます。ただし対象になるかどうかや細かい要件は市町村・都道府県が判断するため、必ず就農相談窓口で確認しましょう。

交付金は年齢や所得の状況などの要件があり、経営開始資金は認定新規就農者で、地域計画(人・農地プラン)に地域の中心となる経営体として位置づけられることが求められます。補助の上限額や補助率、枠の内容は年度によって変わるため、実施要綱と自治体の募集で最新の条件を確認してください。収穫量や価格の変動に備えるなら、乾しいたけなども対象になる農業収入保険もあわせて検討できます。収穫したきのこを消費者へ直接届けたい方は、農産物のネット販売の始め方もご覧ください。

よくある質問

きのこ栽培でも新規就農の給付金は使えますか

菌床きのこのように施設で通年生産する経営は、農業経営として支援の対象になり得ます。対象になるかどうかは市町村・都道府県が判断するため、就農相談窓口で確認しましょう。経営開始資金は、認定新規就農者で、地域計画(人・農地プラン)に地域の中心となる経営体として位置づけられることが要件です。

菌床栽培と原木栽培のどちらが始めやすいですか

年間を通して計画的に収穫でき、天候に左右されにくいのは菌床栽培です。生しいたけの94.7%はすでに菌床栽培に切り替わっています。原木栽培は露地が中心で収穫まで時間がかかり、気象条件の影響を受けやすい方法です。

初期投資の補助はどのくらい受けられますか

経営発展支援事業で国費上限500万円(経営開始資金と併用する場合は250万円)の補助を受けられます。国の補助率は原則2分の1です。あわせて、無利子の青年等就農資金を限度額3,700万円まで借りられます。

何歳まで就農支援を受けられますか

就農準備資金・経営開始資金は、独立・自営就農時の年齢が原則49歳以下の方が対象です。年齢のほかにも要件があるため、申請前に市町村・都道府県へ相談しましょう。